第9話 えむ視点

「本当に寝ちゃった...」


私の隣で、小林さんが私の腕に抱き着きながら規則正しい寝息を立てている

普段から幼く見える彼女だけど、初めて見る寝顔はいつもよりも更に幼く見える


可愛らしいその寝顔を触りたくなる。でも起こしたくもない。頬を突っつきたくなるのを我慢して、私はただその寝顔を眺める


相変わらず、私の心臓は今までにないくらい激しく脈打っている

どうしてこんな風になってしまうのか、自分でも不思議だった


今日私の家で小林さんに抱き着いたときも、こんな風にドキドキしていた

私は普段写真を撮るときに、あんな風に抱き着いたりしない

でもあの時は、小林さんに抱き着きたかったから、写真を撮ることを口実に抱き着いた


私がそんなことをしたいと思ったのは、きっとあの試験勉強のせいだろう

期末テストの前は、小林さんに勉強を教えて貰う時に、それなりに密着することがあって、そのたびに心臓の鼓動が早くなっていた。そしてそのたびに、私はそんな風になってしまう自分に困惑した

そして試験が終わると、パタッとそういう機会はなくなってしまった


今までと何も変わらない日常に戻る。だけど、私はその日常を物足りないと思うようになってしまった


毎日小林さんと一緒に帰るし、一緒に話すし、一緒に図書館で過ごす

だけどそれだけじゃ足りない。もっと小林さんと一緒にいたい。もっと近くにいたい。そしてできれば、触れたい


こんなことを思うのは初めてだった

今まで誰にも、そんなこと思ったことなかった


今だって、右腕を小林さんに抱き着かれている状況に満足しきれていない

左手を小林さんの体に回して、私からも抱きしめたい

その頬に、唇に触れてみたい


「はあ...」


体の内に溜まった熱を吐き出すように、大きなため息を吐く


まいったな

どうやら私は、小林さんのことが好きらしい

それも友達に向けるような好きじゃなくて、恋愛的な意味で


今、私はそれをはっきりと自覚した

今までも薄っすらそうじゃないかと思っていたけど、気のせいだと思っていた。だって小林さんは女の子だから。同性のことを好きになるなんて、そんなの普通じゃないから


でもどうやら私は普通じゃないらしい


自覚すると同時に、私の鼓動はさらに早くなって、苦しくなってくる

小林さんと触れ合っているところが熱くて柔らかくて、汗をかいているはずなのにいい匂いがして頭がくらくらして、どうにかなっちゃいそうだった


今すぐにどうにかなっちゃって、小林さんをどうにかしたいけど、そんなことできない。思いっきり抱きしめて、キスして...そんなことが出来たらいいと思うけど


好きなことを自覚したからといって、私は今までと違うことをすることはできない

何も思っていないかのように、いつも通りに振舞うことしかできない


だって、小林さんが私の想いを受け止めてくれるとは思えないから

小林さんがどんなことを思って私に抱き着いて来たのかよくわからないけど、私と同じような思いを持っているのかもって思えるほど、私は楽観的になれない

勉強を教えてくれた時もそうだったけど、小林さんは親しくなると距離感が近くなりがちなところがあるみたいだから、これくらいのこと斎藤さんとかにもしているのかもしれない


そう考えるともやもやしてきた


さっきから感情が、浮かれたりもやもやしたりと忙しい

つい最近まで感情をほとんど動かさずに生きて来たのに、何だか変な感じだ


家では、お父さんとお母さんの喧嘩を聞いていると泣きそうになるから、感情を消すようになっていた。学校でも、あの親のせいかあまり深く人と関わらずにいた。結婚するほど愛し合っていた人たちでもああなるんだから、友達なんていう関係を作っても意味ないと思っていた

でも小林さんだけは違った。たぶん初めて、私から積極的に関わりに行った人

そしていつの間にか仲良くなっていた。私のすぐそばに小林さんが居ることが当たり前になっていた


やっぱり私は、小林さんに一目ぼれをしていたんだろう

話すようになる前から、クラスで一番可愛いなって思っていたから。まさか一目ぼれと言っても、恋愛感情を持っているとは今の今まで思ってなかったけど

私は恋愛をしないだろうとずっと思っていたのに、気が付いたら好きになっていて、しかもその理由が一目ぼれとは

わかんないものだなと思う


「もうそろそろだね」


そんな風に考え事をしていると、不意にそんな声が耳に入った

スマホを開くと、花火が上がるまであと5分くらいだった


少し迷ってから、小林さんの肩に手を置いて、そっと揺らす。この手の平も熱い

私の腕に抱き着いている小林さんの顔は相変わらず近くて、色々な誘惑に駆られるけど、何とか理性で押しとどめる

ただ、小林さんが寝ているところなんてしばらく見られないだろうから、そのあどけない寝顔だけは、しっかり私の目に焼き付けておく


「...んん」


小林さんがそんな声を発しながら身をよじって、それから私の腕に抱き着く力を少し強めた


「っっ!」


変な声が出そうになったのを、何とか堪える。色々我慢してるのに、私の理性を壊しにくるのは止めて欲しい


「小林さん、起きて。そろそろ花火上がるよ」

「んん...もうそんな時間?」


小林さんが目を開いた。開いたけど、いつもの半分くらいしか開いてない。空を見上げながらボーっとしている。私の右腕はまだ小林さんに抱き着かれたままだ。学校に来るのもいつも割とぎりぎりだし、寝覚めはあまり良くない方なのかもしれない


《まもなく花火の打ち上げが始まります》


公園の中にそんなアナウンスが鳴り響く。いよいよみたいだ


「...まだお腹いっぱい」


寝ぼけてるのか、小林さんがそうぽつりとつぶやいた


「そりゃそうでしょ。食べ終わってから30分くらいしか経ってないよ」


いつもみたいに話せてるかな。そんな心配をしながら、何気ない話を小林さんと続ける


「そっか...たこ焼き美味しかったな」

「美味しかったね。今度駅前のたこ焼き屋行く?」

「そんなのあったっけ?」

「あるよ。駅から左に出てすぐのコンビニの近く」

「...全然記憶にない」

「えー。ファミレス行くときにいつも通ってるじゃん」

「そうだっけ?わかんないけど、でも行ってみたいな」

「うん、行こうよ。夏休みのどこかで」


小林さんと新しい約束が出来る。そんな大したことない約束だけど、小林さんとする約束なら、どんな約束でも嬉しいと思う


「あ...」


ふと、小林さんがそんな声を上げた

何だろうと思っていると、空から大きな音がなって少し明るくなった


花火だ...


一度打ちあがると、次々と打ちあがって行く

寝っ転がったままだと見にくくて体を起こすと、小林さんも一緒に体を起こした。でも私の腕はまだ解放されない

そしてしばらくすると、私の肩が少し重くなった


首だけ動かして横を向くと、小林さんの頭が私の肩に乗っていた。その目は真っすぐに花火を見つめていて、その真っ黒な瞳越しに花火が見える


その瞳が凄く綺麗だったのと、急な小林さんの甘えるような行動に頭が真っ白になっていたこともあって、私は小林さんから目を離せなくなっていた


「どうしたの?」


しばらくそうしていると、小林さんが花火から目を離して、私の肩から頭を浮かせて私の方を向いた。さっきまで花火が映っていた小林さんの瞳に私の姿が映る

寝ているときにはなかった反応だ。こんなに至近距離で小林さんと目を合わせるのは初めての事だった


「なんでもないよ」


本当はもっとずっと見て居たかったけど、後ろ髪を引かれながら顔を空の方に向けた


「ふーん」


小林さんはそう言うと、私の肩にまた頭を乗せた


本当に、どうしたんだろう

こういうことをしてくれるのは嬉しいけど、期待したくなってしまう私の心を押さえつけるのが大変だった


久しぶりに花火を見る。たくさんの花火が暗闇の中で咲く光景は綺麗だと思うけど、今は花火よりも見たいものがあって、花火に意識がほとんど行かないくらいに、肩や腕に感じる熱を意識してしまう


「花火綺麗だね」


小林さんがそう囁く


「うん。そうだね」


もう花火なんてほとんど見ていなかったけど、私はそう答えた



花火が全部打ち終わるのは結構あっという間だった

いや、実際には30分くらいあったはずだから、そう考えると結構長いんだけど、あっという間に終わったように感じた


それが花火というもののような気がするし、小林さんのせいなような気もする


「終わっちゃったね」


小林さんが空を見上げながらそう言った


「そうだね」


私は、私の肩の上に乗った小林さんの顔を見ながら答えた


周りの人たちは次々と腰を上げて、公園から出るために歩き出す

私たちも、花火が終わればもうこの場所に用はなくて、そろそろ立ち上がった方がいいんだろうとは思う


でもきっと、ここを離れたら私と小林さんの距離感はいつもの距離感に戻る

何故か私にはそういう確信があった


できるだけ小林さんとこうして過ごしていたい。そう思うと、帰ろうとなかなか言い出せない


1人、また1人と立ち上がって公園を出ていく。段々と、広場にいる人たちの姿がまばらになっていく。騒がしかった公園が、段々と静かになっていく


私たちは無言でそんな人たちをただ見ていた


「そろそろ帰ろっか」


先にそう言いだしたのは小林さんだった


「うん」


もう少しだけ。そう言いたい気持ちを抑えて、なんとか私がそう返事をすると、小林さんは私から離れて行った

私から離れた小林さんを見ると、いつも通りの小林さんに見えた。どんなことを思って私に抱き着いて来たのか、その表情からは何も読み取れなかった


さっと片づけをして、さっきまで見ていた人たちと同じ様に、私達も公園を出て行く


電車に乗って、見慣れた駅に戻って家に向かって歩き出す

いつも歩いている道だけど、いつもよりも遅い時間で、2人とも浴衣を着ていて、何よりいつも別れる場所で別れることなく、私の家に向かって2人で歩いて行くのは何だか不思議な感覚になる


「花火なんて久しぶりに見に行ったけど、楽しかった」

「本当?それはよかった」


最初は行くのを渋っていた小林さんが、楽しかったと言ってくれたのは嬉しいことだった

私も楽しかった。そう思う。花火のことはあまり覚えていないけど、小林さんとああして過ごせたのは、凄く幸せなことだったと思う


ぽつぽつと会話をしながら歩いていると、段々私の家が近づいて来る。ここまで楽しい気持ちで歩いて来たけど、段々私の気分は暗くなっていく


家に明かりがついているのがわかる

お父さんとお母さんは家にいるらしい


まあそりゃそうか。もう夜の9時だし

喧嘩してないと良いな


そう思うけど、可能性としては、喧嘩している可能性の方が高いと思う

だって今朝、あの2人は物凄い喧嘩をしていたから。お皿が何枚か割れていた。小林さんが家に来る少し前まで喧嘩していて、私は久しぶりに2人の喧嘩に割り込んで、外に追い出した。家から追い出すなんて、そんなことしたのは初めてだったから、2人ともそれなりに驚いていたと思う


私がああしたことによって、2人が何か考えてくれればいいんだけど、きっとそういうことはないだろう。そんなことが出来る2人だったら、こんなことにはなっていない


「はあ...」

「どうしたの?」


思わずため息を吐いてしまった私を見て、小林さんが驚いている


「ううん。何でもない。ただの深呼吸だよ」


苦しい言い訳をしてから、小林さんから目を逸らす

小林さんは納得いってないだろうけど、何も言わない


家が近づいて来るにつれて、今日着物を着て行くことを決めたことを後悔し始めた

着物を貸すとなれば、家で着替えることになることはわかっていた

そしてそうなれば、親の喧嘩を小林さんに見られることになるかもしれないことも、ちゃんとわかっていた


それでも私は、こうすることを選んだ

だって小林さんの着物姿を見たかったから。一緒に着物を着れば、一緒に写真を撮るために抱き着けると思ったから


改めて小林さんを見る

やっぱりすごく似合っている。まるで雛人形みたいだった

抱き着くことだって出来たし、目的は全部達成出来ていた

後悔が少し薄れる


やってよかった。問題はこれからどうするかだ


家の前に着く


「ちょっとここで待ってて」

「...?うん」


玄関から少し離れたインターホンの前で小林さんを待たせて、私は玄関に向かう

あの人たちの様子を確認するために

鍵穴に鍵をさしてゆっくり捻って、そっとドアを開ける


どうか喧嘩してませんように


いつも以上に切実にそう思いながらドアを開けた

だけど、それは叶わなかった


ドアを開くと同時に、お皿が割れる音と共にお母さんの金切り声が聞こえて来た


「あ...」


咄嗟に振り返ると、小林さんが目を丸くして私のことを見ていた


やっぱり聞こえてるよね


聞かれたくなかった

小林さんの目は、私のことを心配してくれているみたいだった


大丈夫だって伝えるために、小林さんに笑いかけると、私は家に入ってドアを閉めた。実際私は大丈夫だ。いつもの事だから


あまり小林さんを待たせるわけにもいかないから、急いでリビングに向かう

わざと大きな音を立ててドアを開ける。2人が気づいてくれればいいなと思って

だけど、そんな音じゃヒートアップした2人の耳には届かない。何のことかわからないくだらないことで言い争っている


「ただいま!!」


大きく息を吸い込んでから、私は2人にそう言った

2人の言い争いが止んで、私に視線が向けられる

大きな音が急に止んで、一瞬ではあるけど、部屋から一切の音がなくなったような気がした


「ああ、えむ。帰ってたのね」

「おかえり、えむ。浴衣に合ってるぞ。お祭りは楽しかったか?」


白々しい笑顔が2人の顔に浮かんで、それぞれが私に話しかける

心がすっと冷えていくのを感じる


「ただいま。今から友達が来るから、静かにしてて」

「まあ、そうだったのね。ごめんね。お菓子部屋に持って行くわね」

「いらない。着替えたらすぐに帰ると思うし、私の部屋に来ないでね」


私はそう言い残すと、返事を待たずに、2人に背を向けて玄関に向かって歩き出した


「はあ...」


玄関に着いて、ドアを開ける前にそっとため息を吐く

普段はあの人たちの喧嘩に介入することなんてないから、凄く疲れた

こういうことをすると、部屋でただ2人の喧嘩の声を聞いているよりも、私の中の何かが削れていくような気がする


小林さんを家に入れたくない。お父さんとお母さんに会わせたくない。さすがに小林さんがいる間に喧嘩はしないと思いたいけど、あまり信用できない。部屋にこないでとは言ったけど、それを守ってくれるとも限らない

入れたくないけど、あまり外で待たせるわけにもいかない。夜になって涼しくなってきたとはいえ、まだ外は暑いから


一度深呼吸して、心を落ち着かせて、ドアをそっと開けた


「あ...」


私がドアを開けると、小林さんは私が家に入ったときにいた位置からほとんど動かずに私のことを待っていた。変わらずに私に心配そうな顔を向けている


「お待たせ。入って」


何事もなかったかのように、できるだけいつも通りに小林さんを中に招き入れる


小林さんと一緒に廊下を歩く。リビングに続くドアの前を通るけど、さすがにまだ喧嘩の声は聞こえてこなかった。テレビの音だけが、小さく廊下にもれている


そのことにホッとしながら通り過ぎて、階段を昇って私の部屋に入る


「さ、着替えようか」

「うん、そうだね」


いつまで2人が喧嘩を我慢できるのかわからない。怒声が聞こえてくる前に着替えて、本当はここで少しくらいお話でも出来たらいいんだけど、すぐに帰ってもらおう


浴衣は着るのは大変だったけど、脱ぐのはあっという間だ、5分も経たずに2人とも着替え終わった。それからすぐに、小林さんを連れて外に出る


その時はリビングから、小さな声ではあったけど、喧嘩している声が聞こえて来た

結構ぎりぎりだったみたいだった。すぐにヒートアップして、2人の声は大きくなることだろう


「じゃあね、小林さん。今日は楽しかったよ」


今はとても楽しいなんて気分じゃないけど、それでも今日が楽しかったというのは本当だ

小林さんと花火を見に行けてよかった

そのことが少しでも伝わるように、無理矢理にでも笑顔を作る


「上井さん...」


じゃあね。いつもみたいにそう言って歩き出すと思っていた小林さんは、私の方を向いて足を止めた。何だか深刻そうな表情をして、視線をキョロキョロ動かして、どうすればいいか迷っているみたいに見えた


どうやら私は、いつも通りに笑えてないらしい。そのことを小林さんの言動から察する

でもきっと、お互いに出来ることなんてない

私はこれ以上の笑顔を今は作ることができないし、お父さんとお母さんをどうにか出来るのが一番良いけど、それこそ私たちにはどうしようもない


何もできない。台風が通り過ぎるのを待つみたいに、ただ2人の喧嘩が止むのを待つこと以外は


「...えっ?」


私がそう思っていると、急に小林さんに抱き着かれた

さっきまでとは違って正面から

急に小林さんの温もりに包まれて、頭が真っ白になる


どうして?


動揺している頭でそんなことを考えるけど、全然わからない。うまく頭が回らない。小林さんのことを感じること以外の全ての機能が停止したみたいだった


どうして今、私に抱き着いてきたんだろう


いくら考えてもわからないけど、私を元気づけるためにしてくれたんだとしたら、効果は絶大だと思う。さっきまでの暗い感情なんて全部吹き飛んだ。今の私の中にはお父さんもお母さんもいなくて、小林さんの事しか考えられない

全神経が、小林さんの方に向かっている


困惑していると、小林さんが私の胸から顔を上げて、私のことを見上げた

黒くて大きな瞳に真っすぐに見つめられる。いつもよりもその瞳は力強くて、なんだか飲み込まれてしまいそうだった

言葉が何も出てこなくて、しばらくの間見つめ合う

すると、小林さんの口がゆっくりと開いた


「また明日ね」


小林さんはそれだけ言って、また口を閉じた


え、それだけ?


もっと何か大変なことを言われると思っていたから、ちょっと拍子抜けする。こんな風に抱き着かれるのは普通のことじゃないのに、口から出てくる言葉はいつも通り過ぎて、そのギャップに頭がついていかない


「うん、また明日」


私が何とかそう答えると、小林さんは満足したのか、微笑んでから私から離れた


「じゃあね」


小林さんは改めてそう言うと、私に背を向けて歩き出した

呆然としながら、その背中を見送る


小林さんが曲がり角を曲がってその背中が見えなくなるまでずっと、私は小林さんの背中をじっと見ていた。小林さんは一度も振り返ることはなかった

小林さんが見えなくなっても、私はしばらく家に戻らなかった

暗闇を見つめて、ぼーっと過ごす

私の体にはまだ小林さんの熱が残っていたから、ぼーっとしているとその熱を強く感じられた。鼓動が早くなって、心が温かくなる


でもしばらくじっとしていると、汗が滲んできた

顔を流れる汗が不快で、やっと私は家に入ることにした


家に入ると、案の定、2人が喧嘩をしていた

だけど不思議と、いつもみたいな心が冷たくなっていく感覚を感じなかった。小林さんがくれた熱が、私のことを守ってくてたような気がした


部屋に戻って、ベットに寝転がる

今日あった楽しかったことを思い出す。そうすると、下から聞こえてくる声がだんだん遠くなっていく。今日はいつもみたいに、この声を消すためにイヤホンをつける必要はなさそうだった

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