第5話 えむ視点
「まっずいなー」
中間テストが終わって1週間が経った。今日でテストの結果が全部帰ってきてんだけど、結果は非常によろしくない
「赤点3つはちょっとやばいな」
こんなことなら、私も小林さんと一緒にテスト勉強をすればよかった。中学の時のテストはほぼ全部一夜漬けで乗り切っていたから、そのノリでやっていたら、全然ダメだった
クラス順位はまさかの最下位だし、こんな結果だとそもそも卒業できるかどうか怪しい
私の結果を見た美玖と志歩には爆笑されたし、本当に最悪だ
2人は結構彼氏と一緒に遊んでいたはずなのに、どうしてあんなに点数高いんだろう。授業中だってスマホ弄ってたよね?それなのに赤点なんて1つも取ってなかった
親に怒られる心配はない。あの人たちは私には甘いから。お互いに喧嘩をすることに夢中で、私のことなんて全然興味がないんだと思う。でも卒業できないのはさすがにまずい
「はあ...」
「あ」
「ん?」
ため息を吐きながら駐輪場を出ると、小林さんと鉢合わせた
下を向いて歩いていたから、反応が少し遅れる
「あ、小林さんじゃん」
「うん。どうしたの?ため息なんてついて」
「いや、ちょっとテストの点数が低くて落ち込んでた」
「ああ、全然勉強してなさそうだったもんね」
「うっ。そっちはどうだったの?」
「私は悪くなかったよ?」
まあそうだろうなと思う。図書館でも結構勉強していたし
「結果見せてよ」
私がそう言うと、「いいけど」といいながら小林さんが鞄の中に手を入れた
私もカバンから自分の結果が書かれた紙を取り出す
交換して小林さんの結果を見る
おお、やるじゃん
全部平均点より高い
80点以上の高得点は一つもないけど、私の結果と比べたらめっちゃ高い
何せ私のテストは平均点を取れたものが一つもないし
クラス順位はちょうど真ん中くらい
何となく、小林さんらしい結果だと思う
「うわぁ」
私の結果が書かれた紙を見て、小林さんがそんな声を上げた
「何?」
「いや、想像以上にやばいね。卒業できるの?これ」
「うっ」
やっぱりやばいよね
「さすがに高校留年はしたくないから、期末は頑張る」
「うん、そうしなよ」
「ちょっと待ってて」そう言いながら、上井さんが駐輪場の奥に進んで行く
自転車を押して戻って来た小林さんと並んで自転車を漕ぎだす
「上井さんって中学でもそんな感じだったの?」
「まあ、ここまで悪くはなかったけど、そこまでよくもなかったかな」
中学では赤点なんて概念はなかったけど、平均点の少し下くらいだったから、お世辞にも良かったとは言いにくい
「ふーん。まあそこまで意外でもないか」
「どういうこと?バカっぽいってこと?」
「ふふっ、そんなことないけど、遊んでそうなイメージがあったし」
遊んでそうなイメージ?
「そんなイメージあったんだ」
「うん。上井さんおしゃれだし、綺麗だから彼氏くらいいると思ってた」
「ふーん」
おしゃれだし、綺麗か...
まあ確かに、可愛い服を着るのは好きだ。ファッション雑誌でそういう情報は良く集めてるし、おしゃれな方ではあると思う。でも綺麗かと言われると、そんなこともないと思う
「小林さんは?小林さん可愛いし、彼氏いたこととかないの?」
「いたことないよ。私地味だし、可愛くもないと思うけど」
そうかな。確かに服装は結構地味だと思う。もっとおしゃれすればいいのにっていつも思うけど、顔はクラスで一番かわいいと思うんだけどな
「そうなんだ」
だけど、そんな思いは言葉にしないでおく。クラスで一番可愛いと思う。なんて言っても、きっと戸惑わせちゃうだけだろうから
「そう言えば、小林さんっていつも同じような服着てるよね」
「うん。土日しか私服着ないからあまり服持ってないし、誰に会う訳でもないから」
「いや、私と会うじゃん」
「まあ確かに。でも上井さんは良いかなって」
「なんでだよ」
言われて悪い気はしなかったけど、何となく私がそう言うと、小林さんが楽しそうに笑った。こういうやり取りをしていると、私と小林さんも随分仲良くなったなと実感する
それにしても、上井さんがおしゃれしたらヤバそうだなー。可愛い感じの服着せたら絶対似合うのに
その翌日。この日は土曜日で、いつもの様に図書館に行くと、まだ小林さんは来ていなかった。最近の定位置に座って、小林さんが来るのを待つ
いつもの様に雑誌を読みながら待っていると、10分くらいで小林さんがやって来た
「おはよう」
「うん、おはよう」
いつもと変わらない服装。ジーパンにTシャツ。これだけ会っているのに、これ以外の服装をしている小林さんを見たことがない。いつも同じジーパンで、Tシャツだってたぶん3着くらいしか見たことがないと思う
昨日小林さんと会話をしてから、そのことがずっと気になっていた。小林さんにもっと可愛い恰好をさせてみたい
中間テストは終わったばっかりで、期末テストまではまだ時間がある。だから今日くらいはいつもと違った時間の過ごし方をしても良いんじゃないかと思う。うん。私はそんなことしてる場合じゃないかもしれないけど、そう思うことにする
「小林さんさ」
「うん」
「後で一緒にアウトレット行かない?」
「え?」
いつもみたいにカバンから本を出そうとしていた小林さんが、驚きながら勢いよくこっちを向いた
「どうしたの?急に」
「服見たいなって思ってさ。アウトレットすぐそこにあるし、ちょっと一緒に行こうよ」
「ええー、別に私は服見たくないんだけど」
「まあまあ、そう言わずに。ちょっと付き合ってよ」
「まあいいけど」
渋々、小林さんが了承してくれる
「やった!」
「ちょっと。声大きい」
小林さんに囁き声で注意されてはっとする
そっと辺りを見回すけど、こっちを見ている人はいなかった
テンションが上がって思わず大きい声を出してしまった
「ご、ごめん」
「もう...それで、何時に行くの?」
「まだお店開いてないし、10時になったら行こうよ」
「わかった」
小林さんはそう言うと、持ってきた本に視線を移した
私もさっきまで読んでいた雑誌を読み始める
いつもは、私が着ることをイメージしながら雑誌の服を見ているけど、今日は小林さんのことを考えながら読んでしまう
このフリルが付いたスカート可愛いな。私にはちょっと可愛すぎて似合わないと思うけど、小林さんには似合いそう
あ、このトップスも可愛い
そんな風に雑誌を読んでイメージを膨らませていると、あっという間に10時になった
「機嫌いいね」
鼻歌を歌いながらアウトレットまでの道を歩いていた私に、小林さんがそう言う
何だか、微笑ましそうに見られている気がする
「うん。だって服を買うのって楽しくない?」
「そう?あんまりそう思ったことはないかも」
「ええー。でも今日はきっと楽しいよ。可愛い服選んであげるから」
「あ、これやっぱり私の服選びに行くんだ」
「もっちろん」
私が明るく言い切ると、「まあいいけど」と言って小林さんが苦笑した
10分くらい歩けば、すぐにアウトレットに着く。たくさんの洋服屋さんがあって、どこに入ろうか迷ってしまう
土曜日だけど、まだ開店したばかりだからか、そこまで混んではいない。でもすぐに人でいっぱいになるんだと思う
とりあえず入り口のエスカレーターで2階に上がってすぐのところにあるお店は、私のお気に入りのお店だったから、そこに入ってみる
「うーん」
「どうしたの?」
そのお店には私好みの服がたくさん置かれている。私が着る服を選ぶんだったらここ以上のお店はなかなかないと思うけど、小林さんの服を選ぶとなると少し違う気がした
不思議そうに私を見る小林さんに、私が好きな服を合わせてみるけど、やっぱりしっくりこない
「何か、普段上井さんが着てる服に雰囲気が似てるね」
「うん。私の行きつけのお店だから」
「やっぱりそうなんだ。ここ、私にはちょっと違くない?」
「うん、そんな気がしてた。違うお店行こう?」
「はいはい」
次は私が普段あまり入らない、可愛らしい服がたくさん置いてあるお店に入ってみる
初めて入るけど、悪くない
ミニスカートを1つ取ってみて、小林さんに合わせてみる
「短くない?」
「ミニスカートだもん」
「そうだけどそうじゃない」
意味が分かっていてわざと素っ頓狂な返事をしてみた私に、小林さんが恥ずかしそうにそう言う
「似合うと思うんだけどな。学校のスカートももうちょっと短くしてみたら?」
「恥ずかしいから嫌」
「ええー」
残念。ミニスカートは履いてくれなさそうだから、元に戻して別の服を見てみる
「これ、上井さんに似合いそうだね」
「え?」
ボーっとしている様に見えた小林さんが、服を2つ手に取ってこっちに見せて来た
「この白いバルーンスカートに、この黒のブラウスを合わせたらいい感じじゃない?」
小林さんが勧めてくれたのは、いわゆるモノトーンコーデと言われるもので、私はあまりやったことがなかった
でもその2つを組み合わせてみると、結構悪くない気がした
「良いかも。意外とセンスあるね」
「意外って何?」
「いつも同じ服着てるのに」
「私だって偶にはおしゃれしたりするよ」
「へえ、どんな時?」
「友達と遊ぶ時とか」
「私は?」
「上井さんは何だろうね。まあ今更かなって」
「なんだそりゃ」
そう言いつつもやっぱり悪い気はしない
2つとも受け取って試着室に入ってみる
うん。結構いい感じだ
カーテンを開けて小林さんに見てもらう
「いいじゃん。可愛い」
「あ、ありがとう」
小林さんがそんなにストレートに褒めてくれるとは思っていなかったから、ちょっと照れてしまう
「じゃあ、これ買おうかな」
せっかくだからこれを着て、着て来た服を袋に入れて貰う
「じゃあ私もこの服着てみようかな。上はどれがいいとかある?」
「え?」
小林さんが私が勧めた服を手に取っている。着てくれないと思っていたから驚く
「まあ恥ずかしいけど、着てみるだけ着てみようかなって」
私の反応を見て、恥ずかしそうに小林さんがそう言う
その気持ちが嬉しくて、私は急いで選ぶ
うーん、この色のスカートだったら、この白いブラウスが良いかな
「じゃあこれ着てみて」
「わかった」
私が服を渡すと、小林さんは試着室の中に消えていった
どんな感じになるのかな
何となく想像は出来るけど、実際にどうなるかは着てみないとわからない。小林さんが中から出てくるのを楽しみに待つ
長いなー。なんて思いながら待っていると、カーテンがゆっくりと開かれた
「......」
「え、ど、どう?」
可愛い。想像の数倍。そのせいで上手くリアクションが出来ない。言葉が上手く出てこない。私のせいで、小林さんが恥ずかしそうにしながら不安そうにしている
凄く似合ってる。予想通り、こういう可愛い系の服が小林さんには良く似合う。それに普段見えない足が良く見えることもポイント高い。細くて綺麗で、思わず見とれてしまう
「可愛い」
でもそのすべてを言葉にすることは恥ずかしくてできなくて、こんなありきたりな感想を呟くように言うことが精一杯だった
でも、私がそう言ったことで、小林さんは安心したようだった。ほっと息を吐いたのが見えた
「じゃあ私も、今日はこれを着ようかな」
「え?」
またも予想外のことを言ってくれる小林さん
予想外過ぎて、私の頭がついていかない
そんな私を尻目に、小林さんは会計を済ませて、着てきた服を袋に入れていた
「お待たせ。行こ?」
「うん」
小林さんと並んで外に出る
もう目的の服は買ってしまって、これからの予定は何もなかったけど、適当にどこかに向かって歩き出す
私は何も考えずに歩いていて、そんな私に小林さんが付いてきてる感じだった
歩きながら、小林さんのほうをちらちら見てしまう
うん。やっぱり似合ってる。ミニスカート似合うなー。足が見えるのが良い。学校でもスカート短くしてってもう一回言ったらやってくれたりしないかな
「あんまりこっち見ないでよ」
気が付いたら小林さんのことをじっと見ていた私に、小林さんはそう言って私の脇腹を肘で突いた。顔を上げると、その頬は少し赤く染まっていた
「あはは、ごめんごめん」
小林さんから目を逸らして前を向く
気が付いたら、アウトレットの随分奥まで来ていた。確かここら辺には...
「ねえ、クレープ食べようよ」
「うん、いいよ。クレープなんて久しぶりかも」
「そうなんだ。クレープあんまり好きじゃなかったりする?」
「ううん。大好きだよ」
「そっか。それならよかった」
気が付いたらもうすぐお昼といった時間になっていた。クレープを食べるのにはちょうどいい時間だと思う
私もここのクレープを食べるのは久しぶりで、古い記憶を頼りに足を進める
気が付いたら、このアウトレットの中にはたくさんの人がいた
そこら中から子どもの笑い声が聞こえてくる
暫く歩くと、記憶の中と同じ場所にちゃんとクレープ屋さんがあった
お店の前に3組並んでいたから、私達も列に並ぶ
「何食べる?」
「うーん、この生クリームとバナナが乗ったやつにしようかな」
「王道だねー」
「上井さんは?」
私は何にしようかな
私も結構王道のメニューが好きだったりするけど、せっかくだし小林さんが頼んだものとは違う感じのを頼みたいと思う
「このチーズとハムのクレープにしてみようかな」
「へえー、そういうしょっぱい系のクレープって食べたことないな」
「私もない」
「あ、そうなんだ。どうして急に?」
「ちょっと挑戦してみようかと思ってさ」
「ふーん」
注文が決まって少し話していると、すぐに私たちの番がやって来た
クレープを受け取ってから、近くのベンチに座る
「「いたただきます」」
並んでクレープを頬張る
うん。おいしい
初めて食べたけど、こういうしょっぱい系のも悪くないと思う
「一口食べる?」
小林さんの方にクレープを向けてそう言ってみる
「あ、うん。ありがとう」
小林さんが一口私のクレープを食べる。ちょっと小さめの一口だった
「どう?」
「美味しい。こういう系の初めて食べたけど、悪くないね。でもあんまりクレープって感じはしないかも」
「あー、確かに、これはちょっとピザっぽいよね」
「うん。イタリア料理感あるね。私のも食べる?」
「うん、ありがとう」
小林さんのクレープを一口食べる。生クリームとバナナの甘さが口いっぱいに広がった。これぞクレープって感じの味だった
「やっぱり王道が一番かも」
「ふふ。まあそれはそう」
クレープが食べ終わってから、またアウトレットの中をぶらぶら散歩する。洋服を見たり、アクセサリーを見ながら過ごした
何となく一周したなって思って時計を見ると、まだ午後4時で、ちょっと帰るのには早い時間だった
「これからどうする?」
「本屋行ってもいい?」
「うん。いいよ」
小林さんの提案で本屋さんに行くことになる
アウトレットの中には本屋さんはないから、アウトレットから出て駅の方に歩く
並んで歩いていると、改めて小林さんの服装に目がいってしまう
自分が選んだ服でこんなに可愛くなるなんて、その優越感と言うか、喜びは凄く大きかった
そんな風に小林さんのことを眺めながら歩いていると、不意に小林さんの足が止まった
「どうしたの?」
そう言いながら小林さんの視線の先に目を向けると、おじさんが1人近づいて来るのが見えた
「おう、何してるんだ?」
そのおじさんが話しかけてくる
「友達と買い物」
それに小林さんが答えた。その声はさっきまでよりも明らかに硬かった
小林さんの言葉を受けて、おじさんの視線が私の方に向く
会釈をされたから、私も会釈を返した
「あんまり遅くなるなよ」
「うん」
おじさんはそう言うと、私たちの横を通り過ぎて行った
「今のお父さん?」
暫くしてからそう聞いてみた
「...そう」
そう答えた小林さんの声と表情は明らかにいつもよりも硬かった
いつも土日は図書館にいる理由。私は聞かれたくないから、小林さんにも聞いたことはなかったけど、もしかしたらあのお父さんが原因なのかもしれない
私と同じで、きっと家に居にくい事情があるのだろう
「行こっか」
暗い雰囲気を壊したくて、明るい声を意識的に出す
小林さんの手を取って、引っ張るように歩き出した
「え、あ、上井さん!?」
後ろで小林さんが戸惑っているのがわかるけど、気にしない
小林さんの手を引いてずんずん進んで行く
「もう。もうちょっとゆっくり歩こうよ」
走って私の隣に来た小林さんがそう言う。隣を見ると、小林さんの顔には少し笑顔が戻っていた。それを見て安心して、少し歩調を緩める
「本屋で何買うの?」
「ラノベと漫画。今日何個か新刊出てるはずだから」
「相変わらずだね」
「この前貸したやつの続きもあるよ?」
「え、マジ?それは楽しみかも。今度貸してね」
「ふふ、うん」
本屋に着くころには、小林さんの様子はすっかりいつも通りに戻っていた。そのことにホッとする
きっと私と同じように、家に居にくい事情がある小林さん。だけど、私と一緒にすごすこの時間だけは、彼女にとって居心地のいい時間であって欲しい。楽しいと思っていて欲しい。今日初めてそんなことを思った。何でか知らないけど、小林さんが苦しそうにしているのをさっき見て、私の胸も苦しくなってしまったから
小林さんは本屋でラノベと漫画を買って、私はファッション雑誌を一冊買った。まだ時間はあったから、図書館に行ってみたけどいつもの席は空いていなくて、広場のベンチに並んで座った
「偶にはここもいいね」
「まあそうだね。日が沈んできてるし丁度良い。真昼間は日に焼けそうだから嫌だけど」
「それは確かにそうかも」
盲点だった。明日はここで一日過ごそう。なんて言おうとしていたから危なかった
それから6時になるまで本を読んで、それから一緒に帰る
「じゃあまた明日ね」
「あ、そうだ。ごめん、明日は図書館行けない」
「え、そうなの?」
突然のことに驚く。私の知る限り、土日に小林さんが図書館に来なかったことは、高校生になってから一度もなかった
「ちょっと用事があって、ごめんね」
「別に謝らなくていいよ。じゃあまた明後日、学校でね」
「うん、また学校で」
小林さんが小さく手を振ってから、私に背を向けて歩き出す
その様子を少し見送った後、私も自分の家に向かって歩き始めた
そっか。明日小林さん来れないんだ
そのことが凄く残念で、つまらない
これまで土日は、私は1人で過ごすことが当たり前だった。そのことをつまらないともあまり思わなかった
私も変わったな
いつの間にか、小林さんと一緒にすごすのが当たり前になって、変わってしまったことを自覚して、少しくすぐったい気持ちになる
何となく、小林さんのことが見たくなって、足を止めて振り返ってみる
「え...」
何故か小林さんと目が合った。結構驚いたし、小林さんも驚いている様に見える
たまたまかな。それともいつも、振り返って私の背中を見ていたのだろうか
そんなことを考えていると、小林さんが少し微笑みながら小さく手を振って、また背中を向けて歩き出した。手を振り返してからその後ろ姿を見送ると、今度こそ、小林さんが曲がり角を曲がったせいでその背中は見えなくなってしまった
「はあ...」
ため息を吐いてから、私も振り返ってまた歩き出す
最後に小林さんと手を振りあえたのはよかったけど、やっぱり明日会えないつまらなさを埋められるほどのものではなかった
明日は勉強でもしようかな
そんな私らしくないことを考えながら、家までの道をゆっくりと歩くのだった
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