第24話 良否
「えっと……あなたは誰ですか?」
そんな疑問を口にするれのちゃんに対して、西園寺は笑みを浮かべながら答える。
「私は西園寺
そんなことを言いながら堂々と宣言する彼女に、俺は呆れてしまっていたのだがーーそんな俺のことを無視して彼女は更に言葉を続けた。
「だから、悪いけど帰ってもらってもいい?」
その言葉を聞くと、れのちゃんは少しイラッとしたような表情を浮かべた後に言った。
「それはこっちのセリフですよ! 坂柳さんは私の恋人です! というか、坂柳さん!」
「はい!?」
「この人とはどのような関係なんですか!? 本当に彼女ですか? それとも……セ、セフレとかですか?」
「えっと……それは……」
そんな質問に対して俺が答えられずにいると、彼女は更に言葉を続ける。
「もしそうだとしたら許せません! 」
そう言って強引に家の中に上がり込もうとするれのちゃんだったがーーそれを西園寺が阻止しようとする。そしてそのまま激しい口論が始まったわけだが、俺はそんな二人を止めることができずにいた。しかしこのままでは近所迷惑になってしまうと思ったため、仕方なく仲裁に入ることにしたのだった。
それからしばらく経って、ようやく落ち着きを取り戻したところで、俺は改めてれのちゃんに事情を説明した。西園寺は同じ大学に通っていて、彼女が一方的に俺のことが好きだということ。それから、西園寺は彼女でもセフレでもなんでもないということ。それを全て説明した上で、れのちゃんに謝罪をしたわけだが……彼女は意外とあっさりと許してくれた。
「まぁ、今回は許してあげますけど……次からは気をつけてくださいね!」
そう言いつつ立ち去るれのちゃんを見送ると、西園寺が言った。
「ねぇ、坂柳くんってあの人のことが本当に好きなの?」
そんな問いに対して俺は素直に答えた。
「ああ、大好きだよ。マジ天使だからさ……れのちゃんは」
そう答えると、西園寺はなぜか不機嫌そうな表情を浮かべていた。そんな彼女に俺は疑問をぶつけることにする。
「どうしたんだよ?」
すると彼女は少し間を置いてから答えた。
「別に……なんでもない」
そんな素っ気ない態度を見せる彼女に困惑していると、西園寺が突然抱きついてきた。
「ちょ……何すんだよ!?」
そんな抗議の声を上げる俺に構うことなく、彼女は再びキスをしてきた。しかも今度は舌を入れてくる濃厚なディープキスだったため、俺は頭がクラクラしてしまうほどだった。しばらくしてからようやく解放された俺は、息を整えてから言った。
「あのさ……なんでこんなことするんだよ?」
そう尋ねると、彼女は答えた。
「坂柳くんが悪いんだよ! だって……あの人と話してる時の坂柳くんの顔……すっごく幸せそうだったんだもん! だから……嫉妬しちゃって……」
そんなことを言いながら頬を膨らませる彼女に俺は思わずドキッとしてしまった。しかし、すぐに冷静さを取り戻すと、彼女に言い聞かせるように言った。
「あのな……れのちゃんはマジで俺の好みでタイプなんだよ。だから悪いけど、西園寺とは付き合えない」
すると、彼女は涙目になりながら訴えかけてきた。
「なんで? 私、坂柳くんのことこんなに好きなのに! どうしてダメなの!?」
そんな問いに対して俺は答えた。
「俺が好きなのは……れのちゃんだけだからだよ……」
そう言うと、彼女は泣き出してしまった。そんな彼女のことを俺は見ていることしか出来なかったのだったーー。
れのちゃんと西園寺の一件から数日が経過したある日のことーー西園寺からのアプローチはなくなって、彼女は俺に話しかけるどころか近づいてもこなくなった。そのおかげで俺は平穏な日々を過ごすことができていたわけだが、それでもやはり少し寂しさを感じてしまう自分がいたことは否定できなかったーー。
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