【SF小説】 ぷるぷるパンク 第18話 羽田空港襲撃事件【3】

●2036 /06 /04 /23:10 /羽田空港国際線ターミナル屋上


ふた2さん3ひと1まる0。夜に浮かび上がる青や緑の点線が、クリスマスのイルミネーションのよう。SF映画で見た未来みたいで綺麗だなと思う。夜空を渡る地球そらが、天の川みたいにきらきらしている。 駐機場に・・・・。』


 背中を突然どんと強く押されるような感覚にふらついて、目が霞む。脳がぐらぐらと揺れ、目を閉じる。


 ああ。そうか。ループしているんだ。あたしたちは三度、空港の屋上に舞い戻った。 目を開くと、さっき観音ゲート付近の緩衝地帯で撃たれた頭を手で押さえたさっちゃんが、顔を歪めていた。


「さっちゃん・・・。無事?」「痛ったあああああ。頭撃たれた。」 撃たれた部分から手を離さずに、さっちゃんは真剣な表情で言った「ノース。3回目だね。」あたしたちは黙って目を見つめ合う。


「クズリュウを」「アラシカを」 二人の声が重なり、あたしたちは思わず笑い出してしまった。そうだ。あたしたちは、再び、ここで生きている。「捉まえよう。」


「さっちゃん、今回の空港は、一回目を繰り返す。何も考えない、いいね。」 あたしの強い口調に、さっちゃんが笑顔で答える。「ノース、マホロみたいだよ。」「ふふ。」


 東京湾に突き出した滑走路の端で、燃える飛行機群や空港の建物、輝く地球の環、なんとも壮大な東京湾の夜景に仲間たちが感傷に浸っている間、あたしたちはひと足先に東京湾に潜る。 アジト外の安全な場所、アジト近くの地下通路で幻覚マーヤー状態に備えるためだ。


「ナルカにどうやって説明しよっかノース。」さっちゃんの眠たそうな声が真っ暗な下水道管に響く。


 2回目のループ、待っていたのにクズリュウはヒュッテに来なかった。 今回も来ないだろう。あいつのことだから「失敗するぐらいならやらない方がいい。」とか思ってるに決まっている。 だから、今度はあたしたちからあいつに会いに行く。「鳴鹿はきっと大丈夫。」


●2036 /06 /05 /14:12 /大船・九頭竜家


 下水のトンネル。不安定な場所での幻覚マーヤー状態が比較的短く切り上がると、それでも昼間になっていた。あたしたちはアジトには戻らずにまっすぐに大船へ向かった。


 クズリュウのマンションはオートロックだから、電柱を伝って隣のマンションに入り、そこからクズリュウのマンションの非常階段に飛び移るしか他に侵入の方法がなかった。


 九頭竜家の玄関の前でインターフォンを鳴らして荷物の配達を装う。眠たそうな鳴鹿が目をこすりながらドアを開けた。


「ごめん、ナルカ。」さっちゃんは鳴鹿にグロックを向けた。目を見開いた鳴鹿をドアの隙間から部屋に押し込み、続けて部屋に入るとあたしは扉を閉めて、鍵をかけた。 さっちゃんはすぐにTシャツの背中の裾を捲り、レギンスのゴムのウエストの後ろにグロックを挟んで。両手をあげた。


「鳴鹿、わからないと思うけど、あたしたちはクズリュウ・・・、アラシカくんの、」そこまで言って、あたしは言葉に詰まってしまった。あいつはあたしたちのことをどう思ってるんだろう。友達と言っていいのかな。


「さっちゃんとノースはアラシカの友達で、アワラに会わないといけないんだ。前の前の時は、アラシカがここにうちらを連れてきたんだけど。前の時はさっちゃんたちホクリクに行ったから、会えなくて。今回は、勝手に来ちゃったの、ごめんねナルカ。」


 武器を持って下水の匂いを漂わせた謎の双子の突然の訪問に、鳴鹿は少し怪訝な顔をしているけど、アワラやクズリュウの名前が出たことで、なんとなく察して落ち着きはしてくれた。


「さっちゃんは、ナルカが大好きだから、また友達になれたらいいなって、思ってるの」


 突然鳴鹿のスマートフォンの着信音が鳴った。さっちゃんがその方向にさっと振り向き腰のグロックに手を当てる。 鳴鹿がソファに投げ出されていたスマートフォンを指差し、黙ってノースを見る。ノースが二度素早くうなずくと、鳴鹿は恐る恐るそれを拾い上げて、もう一度ノースを見た。「芦原さんから。」さっちゃんとあたしは、黙ったまま何度も猛烈に頷いた。鳴鹿がスピーカーをオンにして回線を繋ぐ。


『鳴鹿? 実はね。あ、弟くんはいるかな? あ、ら、しか? うん。荒鹿くん。』電話口のアワラは確かめるようにクズリュウの名前を口にした。『ご両親は鹿に助けられたとか、なんかなのかな? 実はね、今朝突然古い友達が尋ねてきてね・・・。』  なんとも懐かしいアワラのちょっと掠れたような優しい声。


「あ、荒鹿は、今出掛けてるんだけど、」そう言って鳴鹿は、眉を八の字にして、困ったようにあたしたちを交互に見やった。「マホロ? さっちゃんだよ! ノースもいる!」古い友達。アワラの古い友達といえばマホロしかいない。アワラにマホロ以外の古い友達はいない! グッジョブさっちゃん。


『さっちゃん? 嶺姉妹!』マホロの声を聞いて、さっちゃんは泣き出してしまった。『話がはやいね。鳴鹿、二人を連れてきてくれるかな。弟くんは後回しでいいかな平泉寺。』鳴鹿はとりあえず、安堵のため息をついていた。さっちゃんは嬉し泣きが止められない。


 あたしたちは2回死んだ。一度目は宇宙そのものみたいなやつに手も足も出なかった。二度目は出だしを間違えて人生を棒に振ってしまった。あたしはさっちゃんを抱きしめた。


『さっちゃん、泣かんでぇ!』泣き声を聞きつけたすこやか少年が、電話口でさっちゃんを励ました。さっちゃんはもう号泣。涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。あたしももらい泣きしてしまいそう。あたしたちは声を揃えた。「すこやか〜。」


 鳴鹿に勧められるまま、あたしたちは熱いシャワーを浴び、懐かしい匂いのする鳴鹿の服に着替えた。いい匂い。


●2036 /06 /05 /17:55 /藤沢・芦原邸


 鳴鹿が運転する車が藤沢駅方面からガソリンスタンドの角を曲がると、遊行寺周辺の大通りの坂の下にアワラのショップが見えてきた。店の前にはマホロの黒いピックアップトラックが乱雑に停められていた。


「マホロっぽいよね、停め方が」さっちゃんが体をうずうずさせて、車から飛び降りると、郵便受けの脇にあるドアロックに暗証番号を入れて自動ドアを開け、ずかずかと店に入っていった。


 白檀の香りがする2階の部屋の懐かしいコの字型ソファには、すでにマホロとすこやか君が腰掛けていて、アワラは立ってその辺を行ったり来たりしていた。さっちゃんがアワラに飛びついて抱きしめる。「はじめまして、アワラ! 大好き!」硬直したアワラは、だけど力を抜いてさっちゃんを抱き返した。さっちゃん越しにアワラと目があう。「はじめまして、アワラ。あたしも大好きだよ。」


「マホロ。」 あたしは立ち上がったマホロとハグをした。彼女はあたしを強く抱きしめて、髪の毛をやさしく梳いてくれた。「ノース。よかった。」


「前はね、結構長くゲートの周辺にいたんだ。」あたしはマホロに少しだけ2回目の話をした。「それは大変だったね二人とも。」あたしの話が済むと、マホロはあたしたちを、さっきよりも強く抱きしめてくれた。


「で、このループ。あの日ドームにいた私たちだけがループしている。すこやかもあの日、小舟ちゃんと、あそこに来ていたらしいの。」マホロが言った。 あの日AG-0にコフネがいた? コフネがブラフマンになったのはそれが理由?


 すこやかは、さっちゃんとスマートフォンの画面に見入っている。さっちゃんのビットコイン自慢。まるであの日の続きみたい。子供はスマートフォンが好きなのだ。


「でも、よかった・・・。コフネも繰り返してる。」 ループ中ずっと、もやもやしていた胸のつっかえが取れたような気がした。もしここから抜け出せるとして、夏至の日のコフネの告白、クズリュウへの告白が、無かったことになっていたら、あたしはなんだか前に進みづらい。


「それが、小舟ちゃんはどうやらループしていない。彼女にも話を聞こうって鳴鹿に頼んだんだけどね。」そう言ったアワラの掠れ声は、いつも通りにそっけない。でもなんだか、今は冷たく感じる。


「どうして? どうして。あの場にいたのなら・・・。」あたしは言葉を失った。「実は、すこやかはプラークリットを持ってるの。それが関係しているんだと思う。」マホロはそう言ってあたしの肩を抱いた。


「大丈夫だよノース。」言葉だけでなく、生気も失いそうだったあたしの身体にマホロの優しさが沁みる。でもね、マホロ・・・。「違うの、あたし・・・。」それを遮ってマホロが言った事の意味は、『今は』、分からないけれど、そういう事なら、そう信じるしかない。


「未来も過去も、基本的には変わらない。」


 1回目のあの夜の後、寝ずにアワラの映像を繰り返し見たというマホロが、これまでの経緯をアワラに丁寧に説明してくれていた。あたしが二人に2回目の詳細を話し終える頃にはすっかり日が暮れていた。


「九頭竜弟。彼もループしているはずだね。」アワラはそう言って、腕を組んで考え込んでいる。「RTAのプロトタイプか。面白かったんだろうな〜、その1回目っていうのは。」


「芦原さん、お話ししたいことが。」マホロがアワラを連れ出して部屋を出た。少し不穏な空気を感じたのも本当のこと。だけど、何があろうとも、あたしはアワラの部屋にさっちゃんと二人で帰って来れたことが、まずは嬉しかった。とても特別なことだった。


 ここに辿り着くまで、本当に、長かった・・・。


 その安堵から、あたしは若干うとうとし始めていた。うたた寝の夢の中で、早くクズリュウに会いたいと思った。 隣ではすっかり打ち解けたさっちゃんと鳴鹿が、すこやかときゃっきゃ、きゃっきゃと遊んでいて、余計に嬉しくて、あたしはまた眠りに落ちてしまった。



●2036 /06 /05 /17:55 /藤沢・芦原邸地下研究室


「二人で並んでユニットなんて、ほんとに久しぶりだね平泉寺。」 ユニットに横になったアワラさんが、暗く冷たい天井を見上げている。脳裏に不安に駆られたノースの顔がよぎる。『未来も過去も、基本的には変わらない』のだ・・・。 私はどうするべきか迷ったものの、単刀直入に切り出した。


「アワラさんは死にます。彼らを送り出した次の日に。」


 アワラさんは視線を動かさずに、黙っていたが、やがて口を開いた。「話を聞いてると、それも不自然じゃないね、ぜんぜんあり得る。そんなことより、話の本題を聞かせてよ。」そう言うと彼女は黙って、私の話の続きを待った。「私の考えでは、大野琴は並行世界からきている。AG-0のPFCカプセル、いや、ZENが二つの世界を繋いでいる。」 突拍子もないことだけど、アワラさんは別段驚きもしなかった。「ループ中の平泉寺が言うんだから、そういうことが無いとは言えないよ。」


 私はスリランカでの研究中に幻覚マーヤー状態から曼荼羅の『場』のヴィジョンに到達したこと、そしてそのヴィジョンを並行世界の概念に当てはめたてみた時にAG-0が中心の特異点であろうことが分かったという話をした。 それから、ずっと考えていた仮説を矢継ぎ早に話した。


 世界、あるいは宇宙の裏返りを、誰かが・・・。実際にはRTAが観測したことで並行宇宙が現れた。おそらくRTAは大統一理論の実証実験を成功させ、ぷるぷるパンクの調和状態をどのような形かで実現した。 しかし、周知の通り私たちの世界ではエネルギーが観測されていない。その理由は、おそらくエネルギーの並行世界側への流出。


 時を同じくして、宇宙が特異点である『無』に向けて加速を始めた。 PUNKの台頭以前の宇宙は、放っておいても永遠みたいな長い長い時間をかけて徐々に『無』イコール『宇宙の寿命』に向けて収束してくのだけれど、PUNKの登場でそれが変わった、そしてそれを加速させたのはぷるぷるパンクの調和。


 調和によって生まれたエネルギーが、物理法則を破ってこの宇宙の外に移動したことで、私たちの宇宙は真空状態に陥った。そしてぷるぷるパンクが酸素を求めるように暴れ出した。それが特異点の到達を加速させている原因だろう。


 ぷるぷるパンクは当たり前だけど、鏡面である並行世界にも存在する。 おそらく世界中、さらに二つの宇宙を跨いで同期しているぷるぷるパンクの本体は、一体のブラフマン。そう考えればブラフマンの存在に説明がつく。ブラフマンの存在がぷるぷるパンクを介して二つの宇宙を繋いでいるのだ。ようするに並行世界の入り口である。


 トゥルクの神話であり、宇宙を司る者。そして宇宙そのものであある、それがブラフマン。 しかし、その暴走を防ぎ、宇宙のバランスをとっているのがおそらくAG-0の曼荼羅。ブラフマンを封印する神器である。


 そして、ぷるぷるパンクで観測されたはずの宇宙間のエネルギーの移動の考え方を利用して、曼荼羅を守るために造られた存在こそが、アートマンなのではないだろうか。


「どうでしょう。こんなことを考えています。」私は、隣のユニットでいまだに視線を動かさずに横になっているアワラさんに反応を求めた。「さすがだね、平泉寺。難しいけどすごい面白い感じはする。結構、理にかなってると思う。それに、アートマン性善説、好きだな。」アワラさんは私に向き直りながら言った。「でもさ、観測した人たちがいるってことは、その人たちはどうやって並行宇宙を見たんだい? ブラフマンをどうやって通り抜けた? 曼荼羅?」


 私は目を閉じる。まさに、そこが、いまだに自分の中でも矛盾しているポイント。さすがアワラさん。「実は、AG-0地下6階のカプセル群。あのカプセルに入っている人たちが二つの世界を行き来していると思うんだけど・・・。」「その動力源が曼荼羅およびブラフマン、と。」 私は黙って頷いた。


「私、工場でプローブを生産しているんです。AG-0にはATMA-NEURAの研究室もあって。だから、BMI(ブレインマシンインターフェイス)を使って電気信号にした人の意識をプローブにコピーすれば、曼荼羅を通して並行世界と繋がれるとは思っています。でも・・・。」私は言葉を止めて考え込む。


「大野ちゃん、というわけだ。」「そうなんです。そう、彼女は幻覚マーヤー時空を通して現れる。」アワラさんが深く頷いてくれている。「そして、彼女はこの現実世界において行方不明。」私は冷たい金属の天井のふちに微かに光る照明を目でたどる。「彼女の実体がカプセル群に存在しなかったと言うことは、すなわち、並行世界の意識と現実世界の肉体を持っているということ。彼女の幻覚マーヤーは実体ということになる・・・。」


「大野ちゃんは並行世界からブラフマンや曼荼羅を介さずに、しかしなんらかの方法で、目的を持ってこちら側の世界に意識を送り込み、こちら側の体を使っている。そして、彼女の目的は九頭竜君。」話を纏めながら、芦原さんが漸く私の方を見た。芦原さん、さすがに理解が早い。


「そう、彼女はなんらかのミッションを持ってこちら側現実世界に来ている・・・。しかし、そうなると大野琴は鏡面世界から意図せず紛れ込んだ幻覚マーヤーであるという私の仮説とは辻褄が合わない・・・。」「なるほどね、面白いよ、平泉寺。」 アワラさんは、それからしばらくの間、私の話を時間をかけて反芻していた。


「平泉寺。話は変わるけど、あの子たちは大丈夫なのか?」 アワラさんがユニットから上体を起こして、呟く。「あの子たちの精神は・・・。」 私はアワラさんを振り返った。ユニットからアワラさんの姿を見るのは何年振りになるのだろう。


「最初の回のアワラさんは、あの子たちにアートマンの副作用を伝えていませんでした。」 彼女は返事をしなかった、動きもしない。じっと考え込んだままだ。


 アートマンが精神に及ぼす影響。アートマンは纏うものの精神を削る・・・。 アートマンを纏うたびに、精神を削られていた私たちは、中央アジアでの作戦の頃には、ほとんど抜け殻の状態、感情の出涸らしのようになり、何も喋らず、温度や湿度も気にならず、何を食べても味を感じず、ただ眠り、ただアートマンを纏い、街を破壊し、人を殺す。ただの殺戮マシーンに成り果てていた。 私たちは、心の中に残っていた最後の一滴の感情を頼りに、それを失う前に、ATMAから逃げ出した。


 荒鹿君は『躊躇』が力を増幅させると言って、近いしいことを感じ取っていたけれど、実際のアートマンは「自我」と呼ばれる個の存在意義が、危機に晒された時に質量を増大させる『負の感情』をエネルギーに変換している。精神を削る、とはこのことだ。 双子の場合は、お互いへの気持ちが複雑に絡み合って力になっているのだろう。


「存在意義の危機・・・。」私は呟いた。 それは、ATMAでアートマンの副作用の原因を調べているうちに分かり始めたことだった。


 自分たち自身を実験台にしたその研究で、精神を蝕まれ始めていた私たちは、日に日にその研究を疑うようになっていった。それがただの殺戮行為にしか思えないようになっていた。 そして、自分たちが置かれた現状、そして社会や組織を疑い、自分たちの行為を疑い、全てを疑い尽くした後、最後に自分たち自身である『自我』を疑い、憎んだ。 私たちがこの世界に生きている理由、そんなものがあれば、それはとっくに失われてしまっていた。私たちの存在は、誰からも、そして自分自身からも必要とされなくなってしまっていた。 存在意義の喪失。


 しかし、それがアートマンに莫大なパワーをもたらしていた。


 自我の喪失により『精神のコア』が、おそらく『心』から消え失せる。すると、本来あるべきだった場所に、がらんとした空洞が生まれる。それが、あるエネルギーの通り道となったのだ。 反宇宙の力、ダークマターなどと呼ばれる、未観測の反粒子である。物理的には光子やZボソンから素粒子が作られる時に粒子と対で作られるはずの反粒子のことだ。それが次元や世界線を超えてエネルギーに変換されるようになるのだ。 殺戮行為はエスカレートし、私たちは感情のない、ただの殺戮マシーンに成り果てていた。


「そうだね、」アワラさんは私を振り返って、私と目が合うと口を開いた。私は、突然揺り戻された遠い昔の記憶に動揺していた。「あの子たち、平泉寺の話を聞く限りでは、自己肯定感が低そうだよね。特にノースちゃんと九頭竜弟。今時の若者って感じ。だから私は言わなかったんだろうな。副作用のこと。」


 過去に揺らぐ不安定な思考は、彼らと過ごした短い時間を思い出させた。サウスは、アワラさんに吹き込まれた言葉「世界を救う」を無意識に連呼していた。


 ハッとして、視界がクリアになるような感覚が私を襲う。 サウスは、ノースと九頭竜君が、自己の存在意義を肯定できるように仕向けていたんだ。そうだ、彼らの自我を守るために、サウスがわざと、二人に世界を救う自分たちの姿を想像させ続けたのだ。 自己の存在意義をうまく受け入れることができれば、自我が危機に晒される確率は低くなり、エネルギー変換率は減少してしまう。ただし精神のコアは守られる。


 サウスはそれを分かっていた? いや、そうじゃない、裏からアワラさんが導いていたのだ・・・。さすがです・・・。


「スリランカで、ひとつ分かったことがあります。」私はユニットに横になり、天井に目を向けて続けた。「アートマンの覚醒・・・。」芦原さんも横になって天井を見ながら私の話に耳を傾けていた。「サウスと大野琴は覚醒しています。覚醒すると、網膜が金色に発光するから分かるんです。覚醒したアートマンは自我を保ったまま、自我喪失と同じ状態を再現できるようになる。感情を失わずに、宇宙の力をエネルギーに変換できるようになる。」


 アワラさんが天井から目を離して私を見たのが分かったが、私は天井から目を離さずに続けた。「宇宙の力を取り入れる時に、精神の外殻は削られ多少なりとも消耗はします。でも、精神のコア、人の本質には届かずダメージを受けません、だから実質的に精神は削られない。そして何と言っても、無限にエネルギーを変換できるようになります。」


 脳に浮かぶ曼荼羅のヴィジョン、アートマンの覚醒。あの二人の脳には、曼荼羅が見えている。例えそれが無意識だったとしても、精神のコアを曼荼羅で守っているのだ。


 それは数年に及ぶスリランカでの瞑想中に、私がたどり着いたアートマンのひとつの答えだった。


「ノースと九頭竜君。」二人の名前を呟いた。ノースは近いところにいる。私の補助でヴァジュラを実体化することができた。しかし、まだ覚醒には至っていない。 ノースと九頭竜君が覚醒するには、彼らが精神を削る負の感情を打ち破り、覚醒した自我とともに、精神のコアを宇宙に向けて解放する必要がある。 自我は大気に溶け、己が宇宙と一体化する。トゥルクで言う解脱や涅槃と呼ばれる輪廻から解放された状態だ。 そうすれば彼らは曼荼羅を通して宇宙そのものになり、無限のエネルギーを変換できるようになる。


 そうだ、私は二人の覚醒の方法をアワラさんに相談しようと思っていたのだ。私は彼女に向き直った。


「その必要はないよ、平泉寺。」 彼女は天井を見つめて言った。「平泉寺にすこやか。双子ちゃんに九頭竜弟。私、大野ちゃん。あとは鳴鹿だね。」 九頭竜君のお姉さん? 芦原さんは何を思いついたのだろう。芦原さんが天井を見上げる横顔を見ても、それは分からなかった。


「ふふふ。」芦原さんは、私の目を見つめたまま、わざとらしく笑って見せた。「世界を救いに行こうか。」


●2036 /06 /19 /12:13 /腰越・小動こゆるぎの民泊


 3回目・・・。


 2回目も結局小舟は守れなかった。それが正しいかどうかは別にして、身の丈にあった方法で真っ当に生き、小舟を救おうとした。 でも、ぼくなんかにはどうすることもできない。小舟の唇の感触、そのしっとりとした温度を、柔らかさを、思い出す。小舟の汗ばんだ肌や、その感覚を、思い出す。柔らかい唇。


 大野琴。


 ノース、さっちゃん。


 みんなはどうしているのだろう。 今回は、サマージが報道されてるから、二人はまた世界を救おうと頑張っているんだろうか。 今のぼくには影から応援することしかできないけど、双子と平泉寺さんなら、きっとどうにかしてくれる。


 この3回目、結局学校へは戻らなかった。小舟はもちろん、大野琴との邂逅も、双子との再会も避け、腰越で夏至までの時間を潰していた。


 腰越駅で鎌倉行きの路面電車は住宅街に飲み込まれる。電車通りはそこで終わり、車道はそのまま海沿いの国道134号とぶつかる。小動神社の崖が海風を遮る交差点の裏路地に、くたびれた小さな民家を使った民泊があった。 1回目、雨の6月8日には思い出しもしなかったが、この腰越にはアニメの聖地が存在する。正確には伝説の絵師のスタジオがあったとか。20年代にはここで、その彼が有名アニメキャラクターを生み出していたとか。 今は民泊となっているくたびれたその一軒家の一角で、ぼくはただ時間を浪費した。スタジオ跡の一階の本棚にはアニメの画集や設定集なんかの資料が大量に詰まっていたので、昼間はずっとそれを眺めていた。


 現実に存在したアートマン、ノースのヴァジュラやサウスの獣、それにブラフマンや必殺技の数々。脳裏に浮かぶビジュアルの記憶が、まるでアニメみたいに思い出される。元はと言えば、初めて家のモニターで見たノースに、アニメキャラに対するような感情を抱いたものだった。まるで現実感がない記憶の数々。なんていうか他人の夢のようだ。


 夜は、宛もなくふらつきながら、双子と戦った漁港を眺めたりもした。江ノ島からは散発的な花火が上がり、雨の中繰り広げられた死闘が、いよいよ、まるで存在しなかったことのように思われた。いや、厳密には確かに存在しないのだ。



●2036 /06 /19 /14:29 /大船・商店街の外れ


 世界はこの三週間弱の期間に収束して、それが繰り返されるようになった。


 多分、あの夏至が世界の寿命だったんだ。だからそれは、ぼくやみんな、そして小舟の寿命でもある。だから、守るとか守らないではない。それが世界なのだから。


 そんなことを考えながら、ぼくは大船のマンションに向かっていた。姉ちゃんがいない時間帯を狙って、現金を盗みに来たのである。どうせあと何日か経てば夏至。世界は元に戻るのだ。


 双子がそれを聞いたら、言い訳だ、弱音だって言うだろう。


 でもどうしようもないんだ。寿命が決まっている世界を救うなんて、誰にもできない。 だって、ぼくたちだって世界の一部なのだから、世界とぼくらの寿命は同じ。50億年後、太陽の寿命に地球が巻き込まれる。これは太陽の寿命じゃなくて太陽系の寿命なんだ。魚が死んだら、寄生虫も死ぬ。巻き込まれるわけではない。みんなその一部なんだ。


 ぼくは、サンダルから出た自分の足の爪を順番に見ながら歩いていた。双子の爪は綺麗だったな、と思う。これが3回目ならきっと64回目頃には、双子のことも思い出さなくなるのだろう。 千回目とかの頃には何を考えているのだろう。逆に何か悟ったりして、双子に会いに行くんだ。もう、頑張らなくてもいいよって伝えに。


 多分記憶を共有しているのは双子と平泉寺さん。大野琴はどうだろう。あの場にいた人間だ。小舟にはその記憶がなかった。


 ぼくは、空になったビールの缶を握りつぶしコンビニの袋に戻し、2本目を取り出す。プシュっといって泡がこぼれた。雨季のぬるい空気とぬるいビール。人生みたいでほろ苦い。


 ビールを一口飲むために顔を上げると、マンションの前に黒いピックアップトラックが雑に止まっているのが目に入った。その瞬間ぼくはビールとコンビニの袋を放り投げて、元きた方向に走り出した。


 どんとぶつかって顔を上げるとノースが腕を組んで立っていた。ぼくは少し酔っ払っていたから、咄嗟にどうしていいか思いつかずに逃げ出そうとした。


 ばちん。頬を平手で打たれて、視界に火花が散った。「クズ! 諦めるな。」懐かしいノースの声だ、痛いけど。 ぼくは咄嗟に逆方向に走り出した。いや、逃げ出した。ぼくには救うことができない世界から、そしてノースから。


 どんとぶつかって顔を上げるとそれはサウスだった。 そうだよね。双子だもの。


「アラシカ、2回目何やってた? さっちゃんたちは大変だったんだよ。」


 ぼくは目を瞑って叫んだ。「世界なんか救おうとしたって、消えるんだ! それは決まってる事なんだ!」 サウスがきょとんとしてぼくを見ている。「宇宙は生まれて、宇宙は死ぬ! 寿命があるんだ! いいじゃないかそれで! 小舟にだって。みんなにだって。」最後まで啖呵を切ることができず、ぼそぼそと言いながら、ぼくは意図せずに泣いてしまっていた。


「アラシカ、ごめんね。さっちゃんがアラシカに余計なプレッシャーをかけてたんだね。」サウスがぼくの頭を撫でた。予想もしなかったサウスの大人びた対応に、涙が止まらない。


「もう世界を救うのはやめたよ。」 吐き捨てるようにそう言ったノースを見上げようとすると、足元のバランスを崩されてぼくは盛大に転んだ。 痛ってえええ! すぐにふわっと地面から引っ張り上げられ、ぼくはそのまま、タコに全身を絡め取られ、そこに停まっていた車のトランクにぶち込まれた。あっという間に視界は闇に包まれ、車はゆっくりと動き出した。いくら繰り返したとしても、大雑把な歴史は変わらないのだ。


「え?荒鹿がビール飲んでた?」運転席の姉の声がする。「うん、だめだねアラシカは」サウスが優しかったのは、嘘か、あるいは天然か。ぼくは泣きながら慣れないアルコールに侵されて眠ってしまった。


●2036 /06 /19/15:11 /藤沢・芦原邸地下研究室


 賑やかな声に目を覚ますと、そこは芦原さんの地下研究室でぼくは接続ユニットの上だった。双子も平泉寺さんも芦原さんもすでにPFCスーツを着ている。PFCスーツを着た小舟がぼくにPFCスーツを手渡した。見覚えのある身体の線。汗ばんだ肌・・・。


 って、いかんいかん、卑猥な想像は。「いや、小舟?」 ぼくは動揺を隠しきれずに大声を出してしまった。何でここに? なんでPFCスーツ?「何でここに? 何でPFCスーツ?」頭の中で思ったことがそのまま声になって出た。「鳴鹿ちゃんが呼んでくれたの。」小舟がぼくに耳打ちした。 あ、なんか、距離感。よくない。近い。みんないるって。恥ずかしいよ。


 って・・・。あ。そうか。小舟は1回目も2回目も知らないのだ。


 芦原さんが操作台の後ろに立っている。「九頭竜君、はじめまして。」聞き慣れた芦原さんの掠れた声がぼくを呼んだ。「あ、はい。はじめまして。」ぼくは気の抜けた声で挨拶をした。そうか。芦原さんもループしていないんだ。そしてぼくは辺りを見回した。


 ここにいるのは、芦原さん、小舟、双子。そして、あ、姉ちゃん。それにすこやか少年と平泉寺さん。


 すこやか君はぼくと目が合うと、平泉寺さんの後ろに隠れた。なんだよ、シャイかよ。あんなに懐いてたのに。聞かせてくれよ、福井弁を。


 ここにいるのは、ぼくをいれて8人。みんなが何故かPFCスーツを着ている。姉ちゃんまで。姉ちゃんはぼくを見るとウィンクした。クズ眼鏡め。


 芦原さんがぱんぱんと手を叩く音が響き静まる研究室。「今回の作戦名は、オペレーション・マンダラ。私たちは、曼荼羅を攻略し、大野琴を並行宇宙に返す。」


 ぼくは意図を掴めずに研究室を見回して、馬鹿みたいに口を開けたまま、みんなの顔を順番に見た。 みんな静かに芦原さんを見つめている。


「平泉寺の仮説を実証する。AG-0の曼荼羅が、並行する二つの宇宙を概念的に繋いでいるのだとしたら、私たち自身が大野ちゃんを中心とした曼荼羅になることでブラフマンを欺き、そこに物理的な穴を開ける。大野ちゃんはそのための鍵になる。」 まったく意味が分からない。ぼくだけなんだろうか。


「それって、世界を救うことと関係が・・・。」ぼくの質問をノースが遮る。


「もう、救うとかじゃなくたっていいの。」ノースが部屋の隅からゆっくりと歩きだし、だんだんとぼくに近づいた。呼吸がふれ合ってしまうような近い距離感で、彼女は口を開いた。その深緑の瞳に吸い込まれそうになる。「あたしはね、世界が終わった日の後も、この世界で生きていたい。」


 ノースはゆっくりと深呼吸をして続けた。「クズリュウ。あたしは世界なんてどうなったっていいの。あんたがいて、あんたと一緒に生きていければそれでいいの!」 ノースの声は強く、そして少し震えていた。ぼくはノースの深緑の瞳を真っ直ぐに見つめた。「あんた、言ったよね、君たちを守りたいって、こんな世界から救い出したいって。普通の生活をさせたいって! 最後までやってよ!」手の力が抜けて、ぼくは小舟から受け取ったPFCスーツを床に落としてしまった。 ぼくがそれを拾う前に、ノースがそれを拾い上げ、ぼくの手に叩きつけた。


「だからさっさとそれを着て。」そう言って、彼女は後ろを向いてしまった。「ノース。」ぼくは彼女の名前を音にした。


「コフネがマホロの家で、クズリュウに告白した。」ノースがぼくに背中を向けたまま話し始める。小舟は突然のニュースに焦って頬を赤くした。「え? え?」あたふたする小舟。「気持ちを伝えられるコフネが、かっこよかった。だから、コフネ。」ノースが小舟を振り返る。小舟もノースを見つめた。「あたしも伝えようと思ったんだ。ありがとね。友達になってくれて。」ノースが小舟を抱きしめた。


「う、うん。」はじめは戸惑ったものの、小舟は自分の知らない1回目や2回目に思いを馳せる。きっとそれが深層心理と合致したのだろう。なんだか晴れやかな顔をしていた。


「モテるな、アラシカ。」サウスがニヤニヤしていて、大人たちもニヤついている。すこやか君だけが事態を飲み込めていないようだった。


 芦原さんがもう一度、ぱんぱんと手を鳴らした。「まずは大野ちゃんを召喚しよう。さっちゃんと九頭竜君。」「はい!」と言って頷くとサウスは金色に輝くアートマンに変身した。


「これがアートマン。すこやかくんは知っているね。」芦原さんは、サウスを指さしてから、すこやかくんに目をやって、姉ちゃんと小舟に説明を始めた。「感情エネルギーを実体化させて出てくるプレートがアーマー化した姿のことだね。実はトゥルクの言葉『アートマン』そのものをを語源にしている。」


「個の中心にあり認識をするもの。全てのものの根源に内在して個体を支配し統一する独立の永遠的な主体。自我。」そう言うと、芦原さんは少し照れくさそうに笑いすぐに続けた。「wikipediaにあったトゥルクの教義の一説だけどね。」合宿の間に聞き飽きた芦原さんの授業だった。懐かしい。


 芦原さんが姉や小舟にいろいろなことを説明している間に、ぼくは操作台の後ろに行ってPFCスーツに着替えて変身した。


 ぼくの纏ったアートマンは、1回目のままだった。 蒸発した指先は実体化で復元されていたけれど、全身はあの時に浴びた赤い返り血のような色で真紅に染まったままだった。 うっへえ、痛ったそう。直接痛みを思い出すことはできなかったけど、そのほうがいい。あんな痛みは、もうごめんだ。


「このタコ、プラークリットっていうんだけどね、これを簡易加速器のなかにこっちに1匹、こっちに1匹、それぞれ入れます」壁から迫り出して来た大きな浮き輪のような機械、簡易加速器とやらで実演してみせる芦原さん。「で、それを両方から発射して何周も回した後に、真ん中で衝突させると、あら不思議。タコが3匹に増えます。いろいろ組成が変わっていて、元のタコはいないんだけどね。でも、これは不思議なことでも何でもなくて、核融合っていう物理現象の応用なんだね。これは小舟ちゃんの。」


 芦原さんにプラークリットを手渡された小舟が、興味深そうにタコと戯れている。「で、これは鳴鹿。」タコを配って歩く芦原さんは、なんていうか、近所のおばさんみたいだった。


 ぼくは部屋の真ん中でサウスと向かい合う。他の人たちは操作台の後ろや接続ユニットの影に身を隠した。ぼくが拳に光を集めサウスに殴りかかろうとすると、芦原さんが叫んだ。


「ストーップ!」拳の光が弱まった。サウスがぼくに向けてすっと両手を差し出した。芦原さんに目をやると、彼女が黙って頷いたから、ぼくはサウスに視線を戻して、彼女の手を取った。


 二人の手が触れると、そこからきらきら輝く金色の地球環のようなリングが現れて、二人の上半身を貫くように風を産み、ゆっくりと水平に広がった。それは突然加速すると部屋の隅にぶつかって消え、金色の光の粒になってぱらぱらと床に落ちて消えた。 同時にぼくらも、それぞれが真後ろに吹っ飛ばされて壁にめり込んだ。部屋のなかに金木犀の匂いが薫り出し、中央にはゆらゆらと揺らぐ柔らかい光が現れた。やがて光が薄れると、そこにはセーラー服姿の大野琴が立っていた。


●2036 /06 /19 /15:45 /藤沢・芦原邸地下研究室


 部屋の中央に現れた大野琴を確認すると、操作台の後ろから芦原がすっと立ち上がり、荒鹿とサウスに向けて頷いた。


 大野琴を包み込んでいた金色の柔らかい光が霧のようにゆっくりと消えてしまうと、荒鹿とサウスは立ち上がり、それぞれ部屋の対角線の両端から、大野琴に向けてゆっくりと歩いた。


 厳しい目つきで部屋の隅々を見回して、部屋そのものや人物の配置状況を確かめていた大野琴だったが、荒鹿がマスクを上げたのを見つけると、ゆっくりと微笑んで、彼に向かって走り出した。全員が固唾を飲んで、予想もつかなかった彼女の行動を見守っている。 一番驚いたのは荒鹿だったが、手を広げて飛び込むように走る大野琴を抱き止め、そのまま後ろに倒れてしまった。


 大野琴は荒鹿の胸のアーマーに顔を埋めて、よかった、と言った。


 その瞬間、大野琴は雷で打たれたように跳ね上がり、宙に浮いた。


「あ。ああ。」放心状態の大野琴がゆっくりと降下し始めた。


 荒鹿は立ち上がり、天から落ちてくる鳥の羽を受け止めるように両腕をだし、大野琴を抱き止めた。 荒鹿の腕の中でそっと、目を開く大野琴。その視界に入る荒鹿の姿。


 大野琴は、その瞬間、全てを思い出した。


 つづく

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