第17話 報復のクラス委員。

「みんな、これから来年三月までの一年間よろしくね」

担任の村瀬 久美先生から言葉に続き、

「初対面で自己紹介は難しいと思うので先ずは担任の私から、私の名前は村瀬 久美です。名前の意味は追々に、容姿は見ての通り小柄でポッチャリです、最近付けられたニックネームは『パグ』ですが、独身女性にパグは無いでしょう?だからみんなもパグと呼ばないでね」

これは僕が失言した『パグみたいな顧問』を根に持っているに違いない。


「それじゃ出席番号順に、最初は安藤さんからね」

「ハイ、安藤美香です、中学時代のニックネームはミカリン、くれぐれも『アンミカ』では有りませんので宜しくお願いします」

クラスの中からクスクス笑いが聞こえるけど、僕には何が面白いのか分からない。


「私は井本 渚です、井本と言っても珍獣ハンターじゃないです」

これもまたクスクスと女子生徒の笑い声が聞こえるが、やっぱり僕には理解不明だった、多分テレビのバラエティと推測するけど善い所をCMで中断される民放局の番組を僕は見ないから知らない・・・


初見で理解したが一年一組に男子生徒は僕を含めて三人、それ以外は女子ばかりでクラス内の三十人以上を占めている。

五十音順に一人目の男子が、

「僕は西川です、趣味はゲームとJPOPを好きなインドア派です」

見るからに運動が苦手そうな引き篭もりでも肥満体では無い。


「僕は東山、お笑いエンタメとネットで動画鑑賞が趣味です」

これもインドア派だな、動画鑑賞とか言ってもエロ動画なら解らなくも無いが、照明の暗い映画館で見る映画なら直ぐに寝てしまう僕には無理だ・・・

とか考えている内に僕の順番が回ってきて、

「槇原です、特に趣味や好物は無くバスケだけが好きで、それ以外は何も興味が沸きません、それと人付きあいも苦手です」

これでバリアと言うか予防線を張った心算の僕は、一年一組のクラスメイトでも係わり合いになら無いと安堵する。


最後の女子生徒が、

「私は渡辺 リカです、推しは韓国アイドルのジオンです、同じ趣味の友達を作りたいです」

推しとは押したり引いたりの押しじゃないのは知っているけど、アイドルにも興味の無い僕には、ジオンとかシャーとか言われても誰のことやらチンプンカンプン状態。


初対面の挨拶が終わり、担任の村瀬先生が進行して、

「これで自己紹介が終ったから、クラス委員を決めましょう、誰か立候補は居ないかな?」

クラス委員なんて面倒臭い役職を誰か立候補する訳が無い、どうせ何処の部活にも入らない暇でお節介、失礼、面倒見の良い女子に任せるに限る。


一人の立候補者も居ない静まり返る教室にクラス担任の村瀬先生は、

「あれぇ?立候補しないなら私が推薦しちゃうわよ、そうね槇原君なら大丈夫そうね」

おいおい、何で僕なら大丈夫なんだよ、これは無理強いのパワハラだぞ・・・


「どうして僕なんですか?」

「う~ん、槇原君は大きいし、他のクラスとトラぶってもナントカしてくれそうだし、ねえパグちゃんの頼みを聞いてよ」

パグちゃんって・・・これは僕の失言に対しての報復なんだ、そう理解するしかない、ただ中学時代はクラス委員以外でも給食委員や体育委員、保健委員や放送委員などの委員会が有って何かに所属しなければ成らなかったからクラス委員を推薦されても仕方無い。


「分かりました、ご期待に答えられるか解りませんがクラス委員をけます」

さぁ、クラス委員以外は何も知らないぞ、後は他の人で勝手にやってくれ・・・


たかくくるとは今の僕だろう、その後の人選を期待する心算は無いが、

「それじゃ昼休みを挟んで午後から実力テストを開始します」

村瀬先生の指示を聞いて、え?他の委員を決めないの?と思う僕は、


「先生、他の委員会は?」

「自主性を重んじる白梅高校はクラス委員以外、その都度に体育祭委員会や卒業アルバム委員会を設けて行動するから何も無いのよ」

制服や体操服、髪型や髪色も自由、校則の緩い白梅高校だから、と言えばそうかもしれないが余りにアバウトじゃないかよ・・・


「そう言う事だから槇原君、クラス委員をお願いね」

大人気ないぞ、担任の村瀬パグめ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る