第14話 白梅高校の。

四月七日、日曜の朝、土曜の夜に両親のラブラブを聞いた天野さんは睡眠不足で眼を赤くしていた。


朝食を摂り自室に戻った僕へ天野サヤカさんは、

「裕人君が悪いんだよ、お義父とうさんとお義母かあさんのエッチを説明するってデリカシーが無い」

それは八つ当たりも良いところと思うが、

「ゴメンゴメン、サヤカさんには刺激が強かったみたいだね」

僕からの気休め程度の慰めに、

「もう、正真正銘、処女バージンの私は心臓がバクバクして眠れないのに、裕人君はグーグーいびきを掻いているし、責任とってよ」


責任を取れと言われても、一体何をすれば天野サヤカさんは怒りのほこを納めてくれるのか、僕の分からない事は相手に聞くが一番の賢明と、

「どうしたら好いの?何でも言って、出来る事ならするから」


「それなら何でも言うよ、えっとねぇ、裕人君に甘えたい、私が眠るまで甘えさせて」

天野サヤカさんは言うが、まさか僕の両親を真似てイチャイチャしたいじゃないと疑いつつも、

「具体的に教えて」

「ベッドで私をハグして、今度は裕人君が私にお話して」


そう言われても、天野サヤカさんが興味を抱くような話題を持ってない僕は。

ダブルベッドのマットレスで天野サヤカさんが望む様に優しくハグして横に成り、

「う~ン、困ったな」

「入学式前にバスケ部で白梅高校へ行っているでしょう、校舎の雰囲気とかグランドが広いとか体育館が大きいとか、ね、何か有るでしょう」

同じ白梅高校の僕は普通科、天野さんは芸能科へ入学が決まっているが、学校の雰囲気を天野サヤカさんは未だ知らないと思う。


「そうだね、歴史ある高校だから校舎は辛うじてコンクリート製、築五十年くらい経っているかな、体育館の外観は三階建てでも一階は体育倉庫と鍵を置いている教官室、二階が天井の高い体育館でバスケ部が活動している、他の先輩は居るみたいでも三年の部長と副部長しか来ない、きっとそれは数合わせの幽霊部員だと思う」


今のところ僕が知る限りの情報を伝えると天野さんは、

「え、白梅高校の謎とか裏の校則ルールとか先輩に聞いて無いの?」

なるほど、そこか、少し考えると一度だけ教えられたアレは、


元々は女子校の白梅高校は男女比率が1対4と異常で、高校受験の為に恋愛を我慢していた女子生徒が世間で言う高校デビューして、積極的にお目当ての男子へ告白する。告白された男子は最低一度のデートに応じなければならない。それをモテ期と勘違いして何人もの女生徒と一度限りのエッチを繰り返した先輩は謎の組織から報復処置を受けて、前立腺の快楽を覚え高校中退してプロのオネエへ転身したらしい、

「と、まぁこれは都市伝説的な噂だけど」

話半分で聞いていた僕は自分が感じたように天野サヤカさんへ伝えた。


「でもね火のない所から煙は起たないって言うから何かしらの根拠は有ると思うし、女子からの告白デートを回避できる方法は無いの?」

火の無い所か、それも有りえるよな、告白からデート回避は、確か何か有ったような気がするけど、僕には関係ないと聞いていたから記憶が怪しい・・・あ!


「生徒会へ恋人の氏名を書いた交際届けを提出すれば大丈夫だったような・・・」


「それなら裕人君は私の名前で届けて、、ちょっと今は事務所的に不味いかな」


自由気ままに仕事を請けていたモデル時代を違って、芸能事務所クイーン&プリンセスの俳優部へ移籍した天野サヤカさんは芸名を槇原サヤカに替えた、俳優部は恋愛スキャンダルがご法度らしく、そこだけは用心しなさいと桜島社長から釘を刺されていたと言う。


「イケメンじゃない僕なら大丈夫だよ、天野サヤカさんは心配しないでね」

「別に心配はしないけど、イケメンじゃない男子を好きな女子は居るし、『蓼食う虫も好き好き』って言うでしょ」

タデってなんだ?話を蒸し返すのも面倒臭いし先へ進まないし、睡眠不足で天野サヤカさんが眠いなら早く寝てくれよと思う。


「う~ん 眠くなってきたわ、もう少しだけ話して」

「以前からの音楽科と美術科、今年新設の芸能科は普通科と離れた別棟の校舎で、500人程が収容できるコンサートホールも常設されて、普通科の生徒は芸術系校舎に入室禁止とか、ねえ聞いてる?」

z・z・z・z・・・


小さな寝息をたてて瞳を閉じた天野さんの寝顔も可愛い感じる。

その寝顔から静かに腕枕を外す僕に、

「私、未だ寝てないから、居なくなっちゃ駄目だからね」

え、天野サヤカさんは寝たふりなの、まるで演技派の女優だよ・・・


この後の二時間、僕の腕枕で熟睡した天野さんと、昨日の部活で疲労が残る僕の上腕二頭筋がジンジン痺れていた。

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