第13話 家内安全、夫婦円満。

夕食後に入浴と風呂掃除をを済ました僕は、天野さんの引越しで部屋の空きスペースが無くなり、ソファ代わりのベッドに座ってエキストラの話を聞かされていた。

午前のハードだった部活で疲れきった僕は、

「話は聞くから少しだけ横に成らせて」

と程好い寝心地のマットレスに横たわった。


そう言った僕を見た天野サヤカさんは、

「私の話に裕人君は興味が無いのね、そんなに疲れているならこうしてあげる」

いったい何をされるのか、そう考えるより先に天野さんの指先が僕の脹脛とアキレス腱の辺りを強く押した。


「うギャァ~、それ痛いよ」

「可笑しいなぁ、リンパの流れを促すマッサージなのに、ちょっとだけ強かったのかな?」

天野サヤカさんは悪気の無い笑顔で僕に問うが、

マッサージ強度をレベル10で表現したら気持ち良いのがレベル5か6なら、天野さんのリンパマッサージはレベル8か9の悶絶する足ツボマッサージだと思う。


「もう少し優しく、力加減をレベル5でお願いです」

「これでもレベル5の積りだけど、個人的な感覚の違いね、でもね、気持ち良いと痛いは紙一重って言うでしょ、ドSとドMじゃなくても」

笑顔で言う天野サヤカさんへ、

「僕はドSでもドMでも無いから、凡人のレベルで望ます」

それから天野サヤカさんが言うリンパマッサージは心地良く、瞼が閉じて寝落ちに近づいた頃に、


「裕人君が疲れているのにアソコは元気だよ、何で?」

不覚にも僕のアソコはスエットパンツ越しに大きくテントを張っていたが、理由は定かで無い。


「何でか分からない、天野サヤカさんの携帯スマホで調べてよ」

僕が所有している初期型の林檎タブレットはシステムのサポートが終了して数年が経ち、神山総合病院へ転任した奈央ねえさんとEメールも繋がらなくなっていた。


「えっとねぇ、有ったわ、極限まで疲労した男性は性欲に関係なくボッキするらしい、これを『疲れマラ』と言うみたいよ、ねえ『マラ』って何?」

国民的美少女と言っても過言で無い正真正銘の処女バージン天野サヤカさんが携帯の画面を見ながら『マラ』と言い、その意味を僕に訊くから、


「きっと陰茎の事だと思うよ」

「え、マラって陰茎なの、裕人君のエッチ!ムッツリスケベ」

エッチとかスケベとか、疲れマラは性欲に関係しないって天野サヤカさんの口が言ったでしょ、もう勘弁してよ・・・


「男と女の違いは難しいね、私も眠くなってきたからそろそろ裕人君を解放してあげるわ」

話に疲れて睡魔が訪れた天野さんは大人しく寝てくれると少しだけ安心した僕も眼を閉じた。

それから数分か、数十分後に僕の肩を叩いて、

「ねえ裕人君、何処かで子犬の泣き声が聞こえるけど、これって私の空耳かな?」

確かにアンアンやキャンキャンが僕の耳にも聞こえてくるけど、これの音は僕が知るアレで、


「この声の主は母さん、父さんとラブラブして子犬みたいな声が出ていると思う」

木造の二階建て戸建て住居の母屋と繋がるベーカリーを営む両親、僕の家で土曜の夜は明日が休日の両親に取っての親睦時間で、今年四十歳の父と三十八歳の母は現役の男女でも不思議じゃない。


「え、裕人君は義父さんと義母さんがエッチしている声を聞いても平気なの?」

「別に、夫婦円満家内安全って言うでしょ、冷めた仮面の夫婦よりずっと平和だと思うけど、それと二十分くらいで絶頂した父さんの『ウォ~』って聞こえてから、十分間休憩して二回戦、三回戦が始まるからその間に寝た方が良いよ」


僕には平気な両親の行為でも天野サヤカさんには刺激が強かったらしい、翌朝の彼女は眼を赤くして、

「裕人君、義父さんと義母さんのアレを想像して全然眠れなかった」


いつもは早朝三時に起床する父と母は休日の日曜は八時過ぎまで寝室に居て、いつもどおり七時前に朝食を頂く僕の為に準備した天野サヤカさんは、

「義父さんと義母さんを起こした方が良いかな?」

そう僕に問いかけるから、

「両親の寝室に入らない方が善いと思う、下着姿ならマシだけど全裸で寝ているかもしれない」


「え、本当に裸族なの?」

思わず声に出した天野サヤカさんが見ているリビングの向こう側の寝室からショーツだけのトップレスの母が朝シャワーを浴びる為に歩いて、天野サヤカさんの存在に気付いて、

「お父さん、サヤカちゃんが居るから何か着なきゃダメよ」

母の言葉に天野さんは耳まで真っ赤に赤面しならが、ツルリと右の鼻から血を流した。





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