最終話 神木 凛。
「おはよう」
わたしは、礼音と蓮くんの写真に挨拶をする。
蓮くんの写真……っていっても死んじゃったわけじゃない。
でも、レンくんとは、もう2年以上会っていない。
あれから蓮くんは、単位をとれば卒業できる賢勇の通信制高校に転校して、この家も出ていってしまった。
お母さんには、「時々、連絡をとってみれば?」と言われたけれど、連絡はとっていない。
最後に会った時の蓮くんのコトバ。
「俺を信じて待っていてほしい」
そんなキザな言葉を信じてわたしは待っている。いや、正確には「待っていた」だ。
わたしは知っている。
もうすぐ、レン君から連絡がくることを。
わたしはテーブルに広げられた新聞に目を落とす。新聞の端っこには、こんな記事がある。
「今年の司法試験最年少合格者は、賢勇学園高校(通信制)出身の18歳でした。なお、法務省は今後の……」
だからわたしは、家でとっておきの可愛い服を着て待っている。
わたしが何度もスマホを確認していると、なぜか、インターフォンがなった。
きっと、彼だ。
わたしは、はやる気持ちを抑えて、階段をゆっくり下りる。わたしも2年前とは違う。大学生のおねーさんなのだ。
ドアが開いた。
そこには、少しだけ背が大きくなって、見違えるほど凛々しくなった彼がいた。わたしのために2年間、死に物狂いで頑張ってくれた青年。
普通の普通だった彼。
わたしのためにどれだけ努力したのだろう。
その決意が。
その気持ちが。
どんな愛の言葉より、わたしには嬉しい。
青年はわたしを見ると、少しだけ驚いた顔をする。そして、申し訳なさそうに微笑んで口をひらいた。
「凛。遅くなって悪かっ……」
あぁ。もう我慢できない。
高一の夏。この玄関で初めて彼に会った。
高一のわたしは、緊張して、作り笑顔でここに立っていたっけ。
あれから色々なことがあったね。
一緒に泣いて、一緒に笑って。高校の半分も一緒にいられなかったけれど、とても大切な思い出。
そして、わたしは。
またこの玄関で、君と再会した。
「れんくんっ!!」
わたしは我慢できなくて。
言葉の終わりを待たずに、その青年に抱きついた。
(終)
※※※
ご愛読ありがとうございました!!
蓮と凛の数年間を一緒に旅してくれた皆様に、大感謝です。
面白いと思っていただけたら、評価やレビューをいただけますと嬉しいです。
では、また違う作品で。
これからもよろしくお願いいたします。
【挿絵】また会う日まで。
https://kakuyomu.jp/users/omochi1111/news/16818093082952375611
※話のテンポ上、本編で割愛した話が一つあるので、タイミングを見てアップする予定です。気が向いたらそちらもご覧いただけると嬉しいです。
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