システム面の評価

 3Dの背景にドット絵キャラの組み合わせという、当時はよく見られたスタイルのグラフィック(たとえば同じDSにおける『ドラゴンクエスト』のリメイク版や、『ポケットモンスター』シリーズもこのスタイルである)。ただ背景に対してキャラが大きく、見通せる範囲が狭い印象を受けた。


 この見通しの狭さによって迷いやすく、さらに相対的に移動距離が長くなる。これにエンカウント率の高さが組み合わさっているのが割と致命的で、最初に訪れるダンジョンである工場遺跡ですらかなり辛かった。シリーズ定番の迷彩シールドでエンカウント率を低減できるが、それを使ってようやく適正と言った印象。


 もちろん降車状態ではほとんどのダンジョンで鬼のようなエンカウント率である。さらに戦車がないということはドッグシステムでのワープもできないので、余計にエンカウント率が高く感じる。ファミコン版の初代は当時のRPGとしては異例なほどエンカウント率が低くて今でもストレスフリーで遊べるというのに、なぜ本作はこんなことになってしまったのだろうか。


 また、ダンジョンなどでは斜め向きの狭い通路があったりするのに斜め移動ができないのはテストプレイで気にならなかったのだろうか。特にラスト手前のダンジョンが八角形の構造なので、斜めの通路を頻繁にジグザグ移動することになる。キャラグラフィックは作る手間がかかるので4方向だけに絞ったとしても、斜め移動そのものはできるようにすべきだった。


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 『鋼の季節』のフルタッチ操作が極めて不評だったためか、本作はタッチペンを一切使用しないとパッケージにも明記されている。しかし細かすぎる(拡大を前提にしているとしか思えない)全体マップや、大まかな位置情報のみが表示される(タッチで店の情報が表示されるようにしか見えない)町のマップなど、本来はタッチ前提だったのではなかろうか。


 そもそも『鋼の季節』のフルタッチ操作自体が子供じみた反骨心(メーカーからタッチパネルを使うように要求されたことへのカウンター)によるものだと語られているので、その経緯を知っていると本作がタッチパネル完全不使用になっているのも、プレイヤーを度外視した意図を感じてしまうのである。


 全体マップは非常に見づらい。特に、段差による通行不可のポイントがわかりにくい。より具体的には樹海の抜け道や、マップ南部の構造はかなりわかりにくくなっている。前述のように操作画面(上画面)での視界が狭く、このような場合は下画面でのマップがナビになるというのが普通だと思うのだが、本作ではあまり役に立たない。


 下画面マップは通行した部分が埋まっていき、街やダンジョンはアイコンが表示されるのだが、厄介なのはマップが埋まってもそこにある施設のアイコンが表示されるわけではないという部分。これでグレートキャノンを見落としたり、さらにはオズマの住処すら見落としてストーリーが止まったりもした。


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 戦闘画面ではヌルヌル動くモンスターが特徴的。しかし全体的にDSの解像度に追いついていないというか、高解像度の元絵を無理やり落とし込んだような印象を受けた。たとえばラスト直前の印象的なジャガン・ナートについては、せっかくのグラフィックが潰れてしまっている。あれは本来はもっと高解像度で出すべきだったのではなかろうか(本作のUIでは不可能だろうが、たとえば上画面全体を使うとか)。初代ではファミコンの性能を活かしきったグラフィックが見事だったので残念。


 戦闘バランスはわりとぬるいというか大味で、ほとんど全滅することなく進んだ。最終的にレベルは60台で、レスラーは最後の特技を覚えてすらいなかった。全体的に敵の耐久力が無駄に高くて時間がかかりがちで、それゆえに戦闘モードを最速にしていたので何が起こってるのかもわからないことが多かったのだが(モードは戦闘中に切り替えられるようにしてほしかった)。


 たまに出てくるキラ化モンスターは意味がわからなかった。報酬は若干多いが、それ以上に耐久力が高すぎるため弾薬を無駄にして終わることが多い。本来はボーナス的な要素なのだろうが、どうせ倒す前に逃げられるということがわかってからは、見つけたらこちらから逃げるようになってしまい本末転倒。


 戦車回収は便利なのだが、あまりにも安価すぎて全滅のリスクがほとんどなくなってしまっている気はする。そういえば修理も激安になっており、無料修理に頼らなくても問題なく進めるようになったのは評価。おまけで修理キットをくれたりするのも嬉しい。


 まあ初代からして、もともと戦闘の難しさが売りのシリーズではないのでこれでいいのだろう。最後までレッドウルフ(改造済み)とバイオタンク(ドリルトリケラ)のキャノンラッシュと、ソルジャーのマグナムガデスの力押しで通した。


 それにしてもバイク型戦車というのは良いアイディアだ。直接人間用の武器や道具を使える一方、生身がダメージを受けるリスクがある。ソルジャーが乗ったバイクは、終盤は迎撃兵器以外がほぼ役立たずになってしまったので、人と戦車の同時攻撃のような特技があればなおよかったかも知れない。


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 細かい不満点は、戦車のエンジンやCユニットを「外す」ことができないという点。たとえば2台の戦車のエンジンを交換したい場合、単純に外せないために、一時的な付け替え用として第3のエンジンを調達する必要がある。初代では(警告メッセージは出るものの)問題なく外せたにも関わらず、敢えて不便にされてしまっている。


 また、戦車用のアイテムを拾った際に入手を保留できないのが不便。重量オーバーで自走不能になる場合でもアイテム欄に空きがある限り勝手に入手してしまう。こちらも初代では、重量オーバーになる場合は拾わずに保留するという選択肢があったのに。


 あと、鳥の糞が付く頻度が異様に高くないだろうか。ロストパスワードで洗車モップを入手していたから速やかに片付けられたのだが、発売当初にノーヒントでプレイしていればそのたびに洗車屋に行く必要があるはずで、非常に面倒だったと思う。


 一部の砲弾(特に汎用性の高いセメント弾)が店売りされておらず、アーチストの特技で作るしかないというのも不便。パーティ編成による個性付けというほどではなく、必要になる頃には一時的にアーチストを仲間に入れれば簡単にレベルが上がってすぐ調達できるようになるので、単に手間がかかるだけである。


 そもそもパーティ内の自由枠が2つしかないのに職業が無駄に多い。たとえばアーチストは修理・製造・改造が主な役割なので、メカニックが内包してもよかったのでは。本作のシステムの発展型という『2リローデッド』ではサブジョブの導入によって改善している模様である。


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 いろいろと問題に感じた点を語ったが、システム面の大きな不満は「異常なエンカウント率の高さ」と「マップの見づらさ」くらいである。これらは複合的にプレイアビリティを大きく悪化させているので印象に残るのだが、それ以外は大きな問題とは言えないだろう(フリーズバグは幸いにも一度も起こらなかった)。


 改造を戻せないことが不評なようだが、少々失敗してもクリアできなくなるバランスだとも思えないし、限界まで強化することを前提としたエンドコンテンツがあるわけでもない。もっとも、いろんな戦車を見てみたいという気持ちは理解できる。バイオタンクもどうせなら4種類作りたかった(素材は後で大量に余るんだし)。

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