授業3 魔物について
「今回は魔物について教えていく。魔法の扱い方とは直接関係は無いが、将来俺みたいに冒険者になったり騎士団所属の魔導士になったりしたら今後も魔物と戦う機会は間違いなく訪れるから知識を持っておくのは大事だろう。特にストレリチア。お前はちゃんと聞いておくように」
「あ、あの事は忘れろ!」
授業開始早々俺がストレリチアに指をさして念を押すと、顔を真っ赤にしたストレリチアに指をさし返された。まさかピンクスライムに衣服を丸ごと溶かされて裸白衣になったあの出来事を忘れろと?
「無理に決まってるだろ」
「ば……ばか!」
「馬鹿はお前だ」
「う……ふにゅうううう!」
ストレリチアが何も言い返せないというようにふにゅうと唸ると机に額をこすりつけて悶絶した。
……まあ、これ以上色々と責めても可哀そうだし、さっさと始めるか。
「まず、魔物ってのは大気中のマナだったり、地下の奥深くから噴き出る瘴気を基にして生み出された生物のことを言う。色々な魔物がいるが、一番の特徴は生殖により増えるのではなく、自然発生的に増えるってところだな」
「他にはどんな特徴があるの?」
俺が言ったことを真面目にノートに書き記していたウェリカが手を挙げて聞いてくる。
「瞳が赤みがかっていたり、気性が荒くて人間に対して強い攻撃性を示したり、魔力の塊で杖の材料にもなったりする魔石が体内に含まれていたりってのがあるな」
「そうなのね……」
ウェリカは俺の言葉に頷くと、再びノートに向き合い始めた。
「魔物の種類としては――」
俺はチョークを手に取り、黒板に軽く絵を描き始める。リリサが移動中なんかによく描いているのを見ていたから、どうやって描いていたのかを思い出しながら手を動かしていく。
「スライムやゴーレム、ミミックといった無機物系、ホーンラビットやストレイドッグといった獣系、ゴブリンやオークといった亜人系、ゾンビやスケルトンといったアンデッド系といったのがいるな」
説明した後、自分の描いた魔物を眺める。自分で言うのもなんだが、結構上手く描けているんじゃないだろうか。と思って四人に向き直ると、オルシナスが無言で手を挙げていた。
「……わたしも描いて欲しい」
そしてそう呟いた。そうか。そう言ってくれるのなら描いてやろうではないか。
「どうだ?」
「……ありがとう」
やがて黒板全体にオルシナスの似顔絵が描かれると、オルシナスは柔らかい声でお礼を言ってくれた。あえて髪の部分をまばらに塗ることで白と黒が入り混じった髪色を再現したのがポイントだ。
「ねえ、あたしも描きなさいよ」
「ちゃんと魔力制御が出来るようになったら描いてやるよ」
「はぁあ!?」
「描いて欲しかったら早く出来るようになるんだな」
「……わかったわ。だったら今ここで証明――」
「待て待て待て待て待て!」
立ち上がり、魔力を集中させようとしたウェリカを慌てて止めに走る。このままだと教室どころか校舎が崩壊しかねない。
「このままじゃ俺の首が危ないし、お前も最強になれないぞ!」
「それもそうね! ならさっさとあたしを最強にしなさい!」
「……今はわたしの方が強い」
「ダメだな。もっと全体のバランスを考えて描いた方がいい。デッサン力も足りていないしボクが手本を見せてやろう」
「あ、じゃああんたがあたしを描きなさい!」
「ボクはボク自身を描くだけだよ」
「はああああああ!?」
「……もっとわたしを、見て描いて。アル」
「ああ」
「なんでオルシナスにはあっさり頷くの!? ねえ!?」
「そもそも今、授業中なんですけどね……」
騒がしい教室に、レイノのツッコミが静かに響き渡った。
……申し訳ございません。
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