人間ジェンガ平山
花森遊梨(はなもりゆうり)
受験テクニックだけで暮らせる素晴らしい社会
平山珠緒
20歳
一流大学に籍を置き、卒業証書も取得し、今は製薬会社に勤めつつ何故かまた大学に通う才女
そんな彼女には…
友達もいなければ趣味もなく
テレビや新聞はまったく見ず、話題のニュースは知らず
政治に関心がないのはもちろんのこと、
抱きたい芸能人から押し倒したいソシャゲキャラの一人も思い浮かばないという、
ヒマラヤから降りてきた生きる屍も同然の存在であることが判明した。
そう問いかけるのは、スポーティな服装にポニーテール、生活保護家庭の生まれ育ちとは思えない健康的な眩さをたたえる女子大生
「えっと?学生時代はどんな感じだったのタマさんは?」
「そりゃあ受験勉強を極めるための日々っしょ?
微を解くのに公式も理屈も文系科目も不要!冪数を前に出して、掛け算をして、そこから1を引けば答えが出る。これをクラスで最初に体得したのは私だったよ」
「文化祭とか、修学旅行とかは?」
そう問いかけるのはこんな猛暑の夏でも赤パーカー、耐熱自慢なその格好のおかげで可愛らしい顔つきや意外と暴力主義なことにも気づかれづら女子大生、
「うちの学校ではやらなかったけど?他の学校でもコロナとかでやらなかったと聞くし、世間で言われるほど大したもんじゃない?」
「萌葱ごめん、私は今日でタマさんを殺すことになりそうだよ」
そう言った丹は何気なく拳を握りしめていた
「ちょっと!いくら私たちがコロナで学校行事がないから人を殴るのはいけないって!!」
そんな女子大生の小競り合いが繰り広げられるのが売りのこの喫茶店の名前は「コーニーズ」
本当の売り場名画の似合う調和に満ちた喫茶店を目指して!をコンセプトに、ロン毛の疲れた顔の男がパンをちぎって食ってるところにロン毛の男と黒ローブの人間が同席している絵画(エマオの食事)を中心に日替わりで様々な絵画を展示してることである。
数分後…
「タマさんはもっと人生を広げていくべきだね。受験勉強のやりすぎで20年の人生を一般的な13年分くらいしか使えていない、ちょっと勿体無いな」
そう言っている丹のパーカーは破かれ、そのほっぺは萌葱によって喫茶店のテーブル(の角の部分)に叩きつけられた後遺症で真っ赤に腫れ上がり、氷嚢がわりのアイスコーヒーを当てている状態だ
「大学や会社にも夏休みはあるのよね?チャンスは今しかない、今すぐ新しい世界を開くべきだよ」
そう語る萌葱の顔は鼻から下が鼻血にベッタリとまみれている。丹の鉄拳を至近距離から喰らい、一時は漫画みたいに顔面が陥没した後遺症である。
なかなか上質な容姿の女子大生×2に夏休みを充実させようと迫られている光景だ。
年齢指定のいかんに関わらず、いろんな未来が広がっているし、人によっては嫉妬を燃やす、そんな光景である。
まあ現実を直視すれば、お互いがお互いの意見を曲げず、喫茶店で躊躇いなく暴力が飛び交わせ、その過程で友人で女性で結婚前の顔面に躊躇いなく攻撃を加えられるマッドマックス…は言い過ぎにしてもマッドミドルな女子大生に夏休みを任せろと迫られている状況である。
彼女達に夏休みを委ねても良いのだろうか?
「女子3人が裸にレインコートで浴室で夏休みの工作をする」というVシネマも同然の夏休みの思い出が刻まれそうな可能性もゼロとは言い切れない
文字通り受験勉強と最低限の家事能力だけで今日まで暮らしている珠緒はそう思ったのだった。
人間ジェンガ平山 花森遊梨(はなもりゆうり) @STRENGH081224
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