第2話 俺の冒険譚

今からする究極の2択、貴方ならどっちにする?

【一つ、すごくかっこいいド派手な能力】

【二つ、最高にイカれたオモロイ能力】

まぁ、大体の人は決まって………いや、普通に考えて2つ目じゃね?1つ目だと何かほかと被りそうで嫌だし、2つ目のほうが唯一無二だから多分ひねくれてるやつほど2つ目選ぶだろ。


『なんなら、あなたも2つ目だからね。ひねくれ君』


そう聞こえてきた声で俺は目を覚ました。

どうやらここはベットの上らしく、柔らかい布団に包まれて寝ていたらしい。


「……何だ、さっきのは『夢じゃないわよ?』…いや、俺のセリフ取らないでください」


いや、本当は気づいていた。これは夢ではないこと、そしてここは俺の知るベットの上ではないことを。

明らかに俺のベットではないし、何なら多分俺の知っている世界でもない。

だって………何か、明らかに本で見るリザードマンみたいな生物が椅子の上で居眠りしてるもん。

鱗とかすごすぎでしょ。いや、そもそもこのナレーションが聞こえてくる時点で気づいてましたよ、ええ、気づいてましたとも、これは現実だってことに。なら、やることは決まっている。


「よし……逃げるか!」


『や、何でよ?』


ナレーションを無視して俺は音を立てないようにベットから降りようとして、そう、降りようとしたのだが……うん、もう一人いた。

いや、どこにいたのかというと……うん目の前である。

何なら思いっきり目があっている。多分さっきの逃げるかも聞かれていた。


「………あんた普通、命の恩人の目の前でそんな言葉いう?」


ご尤もである。状況からしてあの場から俺を助けたのは彼らであるのは明白である。しかしだ、言い訳させてほしいのだが、見ず知らずのしかも他種族に助けられたからといってそれを信用できるだろうか、否である。


『クソね、やっぱりあんたは』


これ、もしかして俺の心の声が聞こえてるのではないだろうか?

それって覗きと一緒じゃね?犯罪やん、犯罪!!この犯罪者が!


『……死ね』


辛辣である……とても辛辣である。

まぁ、よくわからんけどこれは俺の能力だと思う。というか、俺が選んだのだからしょうがない。


「あれ夢じゃなかったんだな」


「あんた、人の話聞いてるの?」


俺が独り言を言っていると目の前にいる少女はそう言った。

改めて俺は少女の方に目を向けるの少女もまた、肌に鱗が付いており、リザードマンほどではないが他種族なのが見てわかる。


「……すいません、ちょっと怖かったので逃げようとしました」


「理由が最低だし、素直すぎて逆にムカつくわね、あんた」


何故か少女は更に不機嫌になった。

やはり女の子とはふしぎである。何故さらに機嫌が悪くなるのだろうか?

オレ、スナオ、ワルイコトシテナイ?

と、ふざけたことを考えていると近くに座っていたリザードマンぽい種族が目を覚ました。


「お、おお!あんた目を覚ましたのか!良かった良かった!!」


そう言って俺の方をボンボン叩いてきた。

話し方と声音からして男のしかも若い兄ちゃんくらいの年齢なのかもしれない。

そして何より優しそうな雰囲気である。


「しかし、あんた何でまたあんなところにいたんだよ?どう見ても冒険者ではないよな?その格好からしてよ」


「…………」


なんと答えたらよいのかと無言になってしまった。

しかし、ほんとになんと答えたらいいのか?

目を覚ましたらあそこにいた、たまたま入ったらあそこについた、ピクニックに来てました?

どれも理由としては納得いかないだろう、特に最後のは。

そのまま少し無言でいるとリザードマンはこちらの様子を見て少し気まずそうに笑みを浮かべた。


「悪い悪い、よく知らんやつに聞かれても困るよな?特に俺たち魔種族だとよ。先ずは自己紹介といこうぜ!俺はリザードマンのマクシュ•ベルン、マクシュと呼んでくれ!」


マクシュは横に目をやり、もうひとりの少女に合図を送った。

そうすると嫌そうに少女が反応するが、マクシュがもう一度合図を送ると嫌嫌ながら立ち上がり自己紹介をした。


「……竜人族のクワイク•ルナクスよ」


自己紹介をするとフード被り顔を隠した。隠すほんの一瞬だが、殺気のこもった目でこちらを見てきた。

え?何で、何で俺そんなに嫌われてんの??


『クソミソ、童貞こじらせ野郎だからじゃない?』


このナレーションはクソである。


「………石狩ユウト、よろしく」


そう言うとマクシュはニッコリと笑ってまた肩をたたいてきた。

それからは部屋を移動したいということでマクシュの後についていき、階段を下りてこの建物にある食堂らしいところについた。


「ユウト、腹減ってるだろ?奢ってやるから一緒に食べようぜ!」


そう言ってマクシュは注文を済ませて席につく。それに続き俺とクワイクも席につき、料理を待った。

正直、この状況には理解が追いつかないが、しかしそうも言ってられない。

現状、俺はこの場所で一人であり何も知らないこの地で何もできるわけもなくマクシュ達にどうにか力になってもらうしかない。

何故なら………すごく優しそうだなら。もっといえばこの手のキャラはちょろそうだからである


『最低』


うん、このナレーションいつか痛い目見させる。絶対に


「……マクシュ、奢るのはやめたほうがいいわ。私たちの現状を考えるとあまりお金は」


「クワイクよ、目の前に困ってる人がいたら助けてやらんと、特に俺達魔種族は」


何やら二人はもめているようだ。まぁ無理もない、見ず知らずの奴に金なんて使いたくはないだろうにしかも一度逃げ出そうとしたやつになんて特にだ。

しかし!!今はそう言ってもらっては困るのである。頼れるのは現状この2人だけ!特にマクシュだけなのである。

なのでこの状況を打開すべく何か対策を考えねばと思っていると。


「おや?おやおやおや!?これはこれは魔種族のお二人さんじゃないですかね!」


そこにはフードを被った中年くらいのイヤーみなおっさんがいた。というか、凄く今からバカにしますよと言わんばかりに笑みを浮かべている。


「嫌われ者の魔種族たちがつるんで何してるんですかね?怖い怖い、五大種族に復讐でも考えてるじゃねえのか?戦争に負けたしな!お前ら魔種族はな!」


そう言って男は高笑いをした。

ふと、前の席の二人を見るとマクシュは男を見て苦笑いを浮かべていたが、クワイクの方はフードから少し見えた表情は怒りと憎しみそして少しの悔しさを浮かべており、手は力強く握られており、今にも殴りかかりそうな勢いである。


「………ハハ」


マクシュが苦笑いと共に乾いた笑い声を上げた。それはどこか悲しげにでも相手を刺激しないように。

しかしそれは逆効果だった。


「何笑ってんだよ、気持ち悪いな。爬虫類ごときが笑うんじゃねぇよ?大体気づけよ、お前ら魔種族はこの街に必要ねぇってことをよ?なぁ、そうだろ?お前らよ!」


男がそう言うと近くにいた人達が一斉に声を上げて笑い出した。

その声は男に賛同する声であり、この酒場にいる全員が各々嫌味のような言葉を吐いていた。

やれキモいだの、死ねだの、帰れだの、まるで小学生の底辺レベルの語彙力である。


「なぁ、あんたもこんなキモい種族といないほうが良いぜ?じゃないと……プ、ブハハハハ!!!トカゲみたいになっちまうからよ!!!」


そう男が言った瞬間、クワイクが立ち上がり男に殴りかかろうとした。

しかし、男はすでにクワイクの視界から消えていた。というか倒れていた。

何故か??それは………


『……やるじゃん』


うん、殴っていた。誰が?決まっている、俺がである。それはもうきれいに一発おっさんの顔面に俺の正義の鉄拳…いや、正義の鉄拳改めて最後の一発である。

何故最後の一発に変更したかというと……。


「……お前何したかわかってんのか??」


男は腰に携えてある短刀を引き抜いて突きつけてきた。

そう、何故最後の一発に変更したのかというとこの短刀が見えていたからである。

多分刺されて死にます。さようなら皆、そしてウェルカム・トゥ・来世、乞うご期待を!!


『茶番してないで今度こそ避けたほうがいいわよ。巨人のときと違って』


短刀をこちらに向けながら男は走り出した。まっすぐ俺に向かって突進してきており、多分避けても追いかけ回されて刺されるのは目に見えている。

だからやるべきことは決まっている。……そう決まっているのである。


「……よし、逃げよう」


追いかけ回されて刺されるのは目に見えている?だからといって逃げないとは言ってない。

もしかしたらワンチャン逃げられるかもしれない、そう思い俺は振り返り一目散に逃げ始めた。

それはもう悲鳴を上げながら全力疾走である。


「な、何でこうなるんだよぉぉぉぉぉ!!!!!」


こうして俺の異世界生活は始まるのである。後に一緒に生活していく仲間とともに。

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