Stay Alive.Say.4.隠しクエストと初めての仲間メイ!(4)


Stay Alive.Say.4.隠しクエストと初めての仲間メイ!(4)


「ねえ....ねえ…ねえシャル? 大丈夫?」


まるで水の中で音が聞こえるように、その音は遠くから響くようだった。

しかし、次第に鮮明になるその音がシャルの精神を起こした。

重いまぶたを開けると、赤い髪に美しい女性のメイが目の前にいた。


「ウアアアッ!」


一瞬びっくりして、シャルは後ろに倒れ、噴水台に落ちそうになった。

メイはそのようなシャルの姿にくすくす笑って微笑んだ。


「ハハ、ごめん。驚いた?寝てるから話しかけてみたんだけど大丈夫?」


にっこり笑う姿さえ美しいメイ。


「大丈夫です」


シャルはあまりにも驚き、冷や汗を流しながら答えた。


「ふふ、それならよかった。それより早く来たね」


「はい、まぁ…」


シャルがぎこちなく答えると、ライラがシャルの服の中から飛び出し、口を開いた。


「おはようございます メイさん」


「君も、おはよう。ライラ」


太陽の光がまぶしかった。

いや、それよりうさかた。

本当のことを言うと、シャルはほとんど寝なかった。

昨夜から今朝までほとんど寝ずに狩りをしてアナザーで過ごした。

それでも結局、肉体的な限界によってメイが来る3時間ほど前に自分も知らないうちに眠ってしまったのだ。

しかし、そのおかげで所持金は5ゴールドまで集まり、レベルも1上がって6になった。


----------------------------------


-ステータス。


-名前:シャル。

-レベル:6。

-種族:人間。

-職業:なし。

-称号:なし。

-性向:100(善)。

-HP(生命力):250/250。

-MP(馬力): 100/100。

-筋力45。

-体力25。

-敏捷10。

-知能10。

-知恵10。

-幸運10。


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だけど、これではまだ山脈の入り口も越えられない。


まだまだ強くならなくちゃ.....!


それに何より大きな問題はゴールドだった。

今現在、2日間の収入はわずか5ゴールド。

まだ適応ができていない状態だとしても予想より少ない数値だった。

病院費の30万円、つまり300ゴールドまで残った金額295ゴールド!

残りの期間は28日!

今の速度では絶対に時間通りにその金額を用意できない!

しかしそれでも今できることはただ前に進むだけ!

シャルは焦る気持ちをできるだけ落ち着かせては、立ち上がった。


「はああむ~」


ある程度心を落ち着かせると、昨夜の徹夜活動による疲労であくびが飛び出した。


「かなり眠そうに見えるけど大丈夫? あまり眠れなかったの?」


私があくびをすると、メイは心配そうな表情でシャルを眺めながら尋ねた。

そうすると、シャルが答える前に、ライラが飛び出して口を開いた。


「聞いてくださいメイ!、この人、一晩中….....!」


ライラがシャルの徹夜活動について口外しようとすると、シャルはライラの頭を手のひらで押さえながら話を横取りした。


「少し寝坊をしましたが、大丈夫です。それより今日はどうしますか?」


シャルは自分を睨みつけるライラを無視して、そう尋ねた。


「そうだね、まずいろいろ消耗したから物資補充かな? その後はすぐ狩りに行こう」


「いいですね。そうしましょう」


「あ、そしてシャル、ゲームもいいけど あんまり無理わしないでよね」


「ハハ....、そうします」


そうして足を踏み入れ、消耗品専門店であるひげひげに訪問した。

正直、シャルはここと自分が縁のない場所だと思った。

初めて村の少年ジェンと一緒にした時は、詳しい物価と収益構造をよく知らなかったため、大きく感じることはできなかったが、実際に直接お金を稼いでみると、このとんでもない物価が肌に響いた。

シャルが4時間の間、血と汗を流しながらお金を貯めたところで、ここで1ゴールドの下級ポーションを一つ買えば、無一文になるからだ。

とにかくそれはそうだとして初めて見た時は可笑しいだと感じなかったが、もう一度見ると少し変なところがあった。

生命力を100回復させてくれる下級ポーションの価格は1ゴールド。

だけど、生命力を500回復させる中級ポーションは10ゴールドもするのだった。

下級ポーションに比べ5倍の回復量を持ったが、価格は10倍も高かったのだ。

しかし、これなら下級ポーションを10個買った方が効率的にも金銭的にももっとお得なのでは?

私がそう思う頃、突然メイがすーっと近づいてきて声をかけた。


「それ買うの?」


「いいえ、まさか、こんなに高いものは思いもよらないんです」


シャルは少し慌てるように冷や汗を流しながらそう言った。

それと、ちょうど気になることもあったので、彼女に聞いた。


「それにしても、これはちょっと変じゃないですか?"


「うん?、何が?」


シャルはポーションの上に手を置きながら言った。


「価格に関することです、下級ポーションは生命力を100回復して1ゴールド、一方中級ポーションは生命力を500回復するが10ゴールド、これなら誰も中級ポーションは買わないのではないでしょうか? なら、どう考えても安い値段で下級ポーションをたくさん買っているほうが、もっと安くて効率的じゃないですか」


その言葉にメイは、シャルの考えが理解できると言って、そっと笑って口を開いた。


「はは、確かにそうかもしれないね、私も最初はそう思った」


メイはポーションの瓶を手に取り、優しく微笑んでから言った。


「確かに君の言う通りなら、下級ポーションだけ買ったほうが得だよね、でも、それはとある前提が基準になっている考え方だよ」


「とある前提?」


シャルが疑問を抱くと、メイはじらさずにすぐに正解を言ってくれた。


「それはつまりポーションを 無限に使えるということだよね」


メイは優しく微笑みながら話しお続けた。


「ポーションもスクロールも無限に使えれば申し分ないけど、残念ながらそうではない、実際に一度の戦闘で使えるのはスクロールとポーションそれぞれが種類を問わず3つまでだよ、つまり戦闘中にインベントリを使うことは不可能だと言うことだよね、だから確かに単純に考えれば 下級ポーションが得に見えるけど実際の戦闘では、下級ポーションは300まで回復できるのに対し、中級ポーションは1500まで回復できると言うことだよね、それでも価格的な部分だけ見れば非戦闘時には下級ポーションがよく見えるのは事実だね、それでも絶対負けられない戦いの中にいるとすれば中級ポーションはそれだけの価値があると言えるの」


「へえ~」


彼女の説明にシャルはすぐに納得できた。

すなわち、非戦闘時の単純金額単位の回復量だけを見れば、下級ポーションが良いが、緊迫した戦闘時に限定された消費アイテムの制約を考えれば、最大回復量がさらに高い中級ポーションがより大きな価値を持つという意味だった。

特に、レベルが上がって体力が高くなれば、下級ポーションでは体力を回復したとは言えないほど、戦闘でその効率性が落ちることになる。

以前、あやめが世の中は価格が上がるほどコストパフォーマンスが落ちる法則があると言ったことがあったが、それがこれに当てはまるものだと思った。

それでも、今すぐ所持金が5ゴールドだけのシャルがする心配ではなかった。


「説明ありがとうございます、すぐ理解できました」


「ふふ、それならよかったね」


微笑みながら商品を見るメイ。

シャルはそんなメイに向かって軽く尋ねた。


「そういえば、メイさんは何を買いに来たんですか?」


「うん、私?私は大したことないよ。ポーションと、この前使った閃光スクロールと、非常脱出スクロールを少し買っておこうと思って、あれがないと、なぜか少し不安になるからね」


そう言って、メイはすぐに下級ポーション3個と閃光スクロール2個、そして緊急脱出スクロール1個を手に取った。

そんな彼女のためらいのない行動とは違って、シャルは自分も知らないうちに陳列台に書かれた値札に目が行った。


どれどれ..... 下級ポーション3つは3ゴールド、閃光スクロールが5シルバー、2つだから合計1ゴールド、そして緊急脱出スクロールが1ゴールド…!

総額5ゴールド?!!


シャルは一気にシャル自身が2日間死ぬ苦労をして稼いだ金を燃やしてしまう彼女の燃えるような支出に驚愕を禁じえなかった。

メイはすぐに支払いをしようとするかのように、ためらうことなくカウンターに向かった。


メイさんはもしかしたらお金持ちなのか…?


彼女の迷いない消費に、シャルは乾いた唾を飲み込んだ。

これ以上彼女のフラックスを見守っていたら、金銭感覚が壊れるかもしれないと思ったシャルは、首を回して陳列台を見続けた。


ふむふむ、煙幕スクロール3シルバー、音爆スクロール5シルバー、そしてこれは5ゴールド.....5ゴールド?!


値札を見て突然の巨額に当惑したシャルは、直ちに値札から商品に目を向けた。


何よこれ…?!


それを見た瞬間、シャルは悪寒を感じた。

そこにはこう書かれていた。


「強奪....スクロール?!」


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強奪スクロール


*相手が所持するアイテムまたは装備を指定して発動します。

*使用者が相手の指定アイテムを強奪した場合、所有権を自分に与えることができます。

*相手が死ぬ場合、指定したアイテムを100%確率でドロップさせます。

*使用時のユーザーの性向が大幅に減少します。


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そこに書かれた説明はシャルを驚愕させた。


相手が死んだ場合って…?


ひたすら他人に危害を加えるためだけに存在するスクロール···!

あまりにも強烈な悪意、それに当惑したシャルは驚いた表情で消耗品店の店長に向かって首をかしげた。

シャルの視線を感じた店長は、回避するように視線を向けた。

だが、何お言えるというのか?

それを聞くことさえ怖かった。

ずっとシャルは心のどこかで戦うのはあくまでもモンスターと人だけだと思ってきた。

しかし、このスクロールの存在はそれを真っ向から否定してきた。

人と人···いつかシャルもこのようなスクロールを使う人と戦うことになるかもしれない。

いや、狙われるかもしれない!

そう思うと、どういうわけか体が震えた。

その瞬間、メイはシャルのそばにすーっと近づいてきて口を開いた。


「ああ、それ見たんだ··· 気色悪いよね、強奪とか殺すとか」


メイはいつもの笑顔に満ちた表情とは違って、真剣で冷たい表情で話を続けた。


「だからシャル君も気をつけてね、この世にはこんなスクロールを平気で使う人もたくさんいる··· みんなが優しいわけじゃない、だからできれば君はそんな人じゃないことを願うよ」


「はは、私はこういうの買うお金もないので安心してください」


真剣な彼女の表情と声に、シャルは自分も知らないうちに少し怯えてぎこちない声でそう言った。

メイもそれに気づいたのか,ぎこちなく笑いながら口を開いた。


「だよね?はは、ごめんね、いきなり変なこと言って」


ぎこちなく笑うのもつかの間、彼女はすぐにいつもの笑顔を取り戻した。

だけど、 今の彼女のその冷たく薄気味悪い声をシャルは忘れられなかった。

普段からいつも微笑んで温かい声を持った彼女だったので、気味薄気味悪さがより一層脳裏に深く刻印された。


「そろそろ、行きましょう、 私は買うものもありません」


「うん、そうしよう」


いつものように微笑みながら話す彼女の声が、この瞬間はなぜかぎこちなく感じられた。

なぜそのような表情をしたのか聞きたかった。

メイさんはそんな人と会ったことがあるんですか?

そのように聞きたかった。

しかし、シャルはそれを敢えて問い質さないことにした。

出会ってまだ2日目の彼女と私。

私たちは友達と呼ぶことさえ曖昧な関係だった。

だから聞くことができなかった。

聞くことさえ深入りするよで聞かずに引き渡した。

まるで何事もなかったかのように。

そうやって、何も聞かずに私たちの時間は過ぎた。

野原を歩き回り、時には森を乗り越えながら、一緒にモンスターを狩った。

疲れたりお腹が空いたりすると、みんなで一緒に休んだ。

シャルがキューブ型非常食をおいしく味わいながら食べると、ライラもそれを一口かじった。

その時のひどい表情でキューブを吐き出すライラの表情をシャルは大笑いで眺めた。

ライラは異邦人はこんなごみみたいなものを食べるのかと驚愕した。

そのように休んで回復すれば、私たちは再び立ち上がり、モンスターと対立した。

巨大なモンスターも小さなモンスターも一緒に相手にした。

時間が経つにつれて、私たちが町に戻る頻度はますます少なくなった。

装備の耐久度が足りない場合でなければ、私たちはほとんど森の中で生活した。

でも、それだけ私たちは速いスピードで成長し、お互いの友愛を育てることができた。

一緒に戦って対話し、お互いに対する理解を深め、一緒に過ごす時間を楽しむようになった。

そのように一緒に冒険をしながら、私たちはますます安全にモンスターを狩ることができる所を広げていった。

前にすすむたびにますますモンスターは強くなったが、2人が一緒だったから、いや、ライラを含む3人が一緒だったから、私たちは無事だった。

そうやって私たちが一緒にいはじめてから、いつのまにか5日が過ぎた。

シャルがアナザーに来て7日目になる日。

その時点で私たちのレベルは10に達した。

そして同時に、私たちの拠点は山脈の目の前まで拡張された。

明日はいよいよもう一度あの山脈に挑戦することになる。

6日前の雪辱を果たす時が来たのだ。

シャルはメイとライラとの過ぎた時を思い出した。

この6日間、我々は何の対策もなしに狩りをしただけではなかった。

その日の敗北を思い出しながら、私たちは作戦を立て、備えながら訓練した。

暗闇の中で生き残るための訓練、それは決して容易なことではなかった。

まるで視力を失ったような不安定さと根源的恐怖!

それを乗り越えることは決して容易なことではなかった。

しかし、シャルは成し遂げた!

この11年間ずっと闇の中にいた。

そんなシャルに闇を乗り越えることは決して不可能なことではなかった!

最初はスケルトンたちとの対決だった。

布で目隠しをし、ライラの指示に身を委ねた。

初夜は失敗だった。

ライラもシャルも、要領がなかった。

それでも、次第に二人は呼吸を合わせていった。

そして3日目になる日。

ライラは正確かつ簡潔に指示する方法を身につけ、シャルは彼の言葉を正確に行動に移す方法を身につけた。

これはメイも同じだった。

そのような部分においては、メイがシャルよりセンスが良かった。

2人は、今やライラの指示に従って、目隠しをしながらもスケルトンの群れを虐殺できる境地に達した。

そして今日に入ったメイと初めて会った日に会った巨体のモンスターとの戦闘でも軽く勝利できるようになった。

単純計算でその当時より2倍も強くなったシャルとメイ。

また、6日間にわたる戦闘訓練で、2人は以前より確実に強くなった。

そのため、おそらく次にまたその猿たちと会えば、以前のように凄惨な敗北は経験しないだろう。

シャルとライラはお互いを見つめ合ってうなずいた。

しかし、だからといってあえて夜に彼らの生息地に入る理由もなかった。

進入は朝日が昇れば決行することにした。

今回の探索の目標は山脈の構造と生態調査、そして可能ならばペンダントの位置を把握することだった。

一日で把握できれば申し分ないが、そのように事が簡単に解決するという保障はどこにもなかった。

そのため、慎重に事を進めなければならなかった。

シャルはたき火を眺めながら、来る明日に向かって決意を固めた。

シャルはたき火の前でいつものように狩ったモンスターたちの死体を手入れしていた。

ライラはシャールの髪をベッドにしてシャールの頭上で寝ていた。

しかし、今はそれさえ慣れているのか、シャルは自然にライラを受け入れていた。

アナザーに来て7日目、今手元には38ゴールドがあった。

レベルが上がり、より長い時間狩りができるようになったおかげで、訓練を兼ねた5日間だったにもかかわらず、大きく収入が減少しなかった。

たとえまだ全然足りない収入だったとしても、それでも少しずつ増える収入にそれなりの希望をかけてみることにした。

それに全財産は38ゴールドが全てではなかった。

5日間、シャルとメイは文字通り数千匹のモンスターを狩った。

その過程でいくつかの装備アイテムを得ることができた。

シャルは手が凝るのか解体用ナイフを口にくわえて指の関節をほぐしてくれた。

そんなシャルの手には、本来ないはずの手袋がついていた。

それだけか?

シャルが初めて着ていた布とも少し違う服を着ていた。

本来は何の防御性能もない平凡な布の服だったが、今は腹部と胸部に厚い革を重ねた革の服を着ていた。

実際に得た装備はそれだけではなかった。

シャルはまた、皮の盾も狩りをする過程で入手することができた。

しかし、大剣を使うシャルは盾を使わないため、現在、盾はマーケットに価格鑑定を送っておいた状態だった。

ローグの大剣ほどの価値はなかったが、今確認されたことを見れば、この革鎧は10ゴールド、革手袋は5ゴールドの価格が測定された。

すなわち、現在シャルの資金は53ゴールドに盾の販売価格まで合わせて+aであるわけだ。

そこにいざという時にはローグの大剣を30ゴールドに渡す方法も存在する。

そのため、たとえ今すぐ資金が十分な状況ではなかったにもかかわらず、希望をあきらめるほど絶望的な状況とも言えなかった。

それを知っているので、シャルはせっせと手を動かした。

その時、木の上で周辺を見ていたメイがさっと着地し、たき火の前に近づいて座った。

彼女も以前と違って丈夫そうな靴とフードのようなマントを巻いていた。

戻ってきた彼女に向かって、シャルは優しく口を開いた。


「おかえりなさい」


メイは自然にたき火の前に近づき、座りながら言った。


「うん、この辺にモンスターはいなかったよ。やっぱりこの辺は安全地帯みたい」


「それはよかったです」


シャルは上手にモンスターたちを手入れしながら答えた。


タッタッ、タッタッ


なぜか聞いていると心が安らかになる焚き火の音と共に、しばらくの沈黙が流れた。

メイは自分の足を優しく抱きしめたまま黙って焚き火を眺めていた。

シャルはたき火に向かって木の枝をいくつか投げ入れた。

たき火はよかった。

モンスターが接近しない地帯でこのように木に火をつけるだけで簡単に作れるのはもちろん、減った生命力を回復することにもボーナス効果が適用された。

だが、それだけではなかった。

こうしてたき火を見ていると、なんだか心が楽になった。

油断すると、まるで精神が吸い込まれるように手が止まり、火に心を奪われる場合もしばしばあった。

それだけ焚き火は分からない妙な魅力があった。

偵察から帰ってきたメイも無言でぼんやりと焚き火を眺めていた。

そんな彼女が突然シャルに一言を投げた。


「ねえ、シャル」


姿勢を変えずに火を見ながら話すメイ、シャルは手を止めて答えた。


「はい?」


「いつまで敬語で話すの?」


突然の彼女の質問に口から入ってきた空気が急ブレーキを踏むような気がして何も言えなかった。

そんなシャルを膝の上でじっと見つめ、メイは続けた。


「そろそろ楽に話してほしいなとね、たぶん私たち年代も同じだと思うよ?」


そんな彼女をシャルはたき火越しにそっと眺めた。

そして、止まっていた手を再び動かしながら話を続けた。


「おいくつですか?」


「二十歳、君は?」


大したことないように投げつけるように話すメイ。

そんな彼女の態度にシャルも大したことないように率直に答えた。


「はは、私も二十歳です」


にこやかに笑うシャル。

そんなシャルの返事にメイは少しいたずらな声で口を開いた。


「はは、本当に? 実は中身40歳以上のおじさんなんじゃないの?"


茶目っ気あふれる話し方だったが、無表情だった彼女は、もういつものように微笑んでいた。


「はは、本当ですよ!」


そんな彼女の姿にシャルも笑いながら答えた。

そんなシャルを眺めながら、メイは言った。


「でも、君全然、二十歳のようには見えないんだもん?」


「そうなんですか?」


シャルは手入れを続けながら答えた。

メイもまた、虚空に話すように軽く話した。


「うん、そうだな、何と言うか、君は同年代に比べて落ち着いている、変ないたずらもせず、無理に突っ込むこともないし、だから一緒にいると気持ちが楽になる」


「それならよかったです」


シャルは優しく微笑み,そう言って手入れを続けた。

そしてその時、そのようなシャルを睨みながら、メイが一言投げた。


「でも君が敬語で話しすることお聞けば少し不便かも…」


彼女の視線に当惑したシャルの手が止まり、冷や汗が流れた。

そのようなシャルをまだ睨みつけながら、メイは話し続けた。


「だから気楽に話してもいいよ、無理やり敬語を使う必要ないから」


シャルは彼女の強烈な視線に冷や汗とぎこちない笑みを浮かべながら答えた。


「分かりました」


分かりました。

無意識に吐き出した敬語!

しかし、メイはそれを許さなかった!


「あ!あ!そうですか?! 分かりました!シャルさん!」


ずっとタメ口を使っていたメイの口から大げさな口調で飛び出した敬語!

その言葉にシャルはアッと思った!

すーっと彼女を見つめると、丸くてきれいな目をできるだけ鋭くしてこちらを睨んでいた…!

何とかしてこの事態を収拾するために、シャルは最大限の努力で恥ずかしさを退けながら口を開いた。


「……うううん…こ...ごめん?」


ぎこちなさそうに頬を赤らめながら、そう言ったシャル。

メイはそのようなシャルの姿に今までで一番大きく笑って言った。


「何それ!」


しばらく止まらない彼女の笑い声になぜか恥ずかしくなったシャルは一言も言えなかった。

恥ずかしかったが、彼女の笑い声はなぜか聞いていると気分が良くなった。

笑い声さえ柔らかくて美しかった。

あやめもこんなによく笑ったらよかったのに......

私と一緒にいる時のあやめはあまり笑わなかった。

そういえば今週もあやめは来なかったよね.....

もう2週間も彼女は訪れていない。


心配だな.....


会いたい気持ちもあったし、同時に心配になる気持ちもあった。


何かあったんじゃないよね?


正直に言うと、とてもあやめに会いたかった。

突然のゲームの中の世界と死の峠。

あまりにも恐ろしい経験をたくさんした。

そして、素直に言えば、今この瞬間さえも不安感で崩れ落ちそうだった。

思った以上に稼ぎにくいお金と、どんどん近づいてくる期限。

不安で不安でたまらなかった。

体のために無理に寝ようとしても1~2時間で不安感で自然に目が覚めた。

そんな死の恐怖の中で、結局最後に思い浮かぶのはいつもあやめだった。


会いたい。


もし今彼女が手を握ってくれれば何よりも心強いだろう。

そうやってあやめについて考えてみたら、なんだかこの時急にそんな気もした。

もしあやめもこの仮想現実ゲームをしたら私たちはまた会えるんじゃないかな?

子供の頃一緒に遊び回っていたあの頃のように、もう一度走り出すあやめを追いかけ、走り出すことができるんじゃないかな?

それができるかも知れないと思うと、不安感に震えていた心臓が暖かくなるのが感じられた。


そう、会えるかもしれない!

今は肯定的なことだけ考えよう!

あやめはきっと大丈夫!


以前にもこのようにあやめが何週間ぐらい訪ねて来られない場合があった。

あやめは今大学生だが、時には会社員である兄の書類作業を手伝う時があって週末にも忙しくなったりした。

だからあやめはきっと大丈夫だろう。

すぐいつものように相馬の病室のドアを叩きながら会いに来てくれるだろう。


それでもやっぱり今会いたい···あやめ。

今私のそばにいてくれたらどんなに心強いだろうか?


あやめは本当に不思議な存在だ。

ただ思い出すだけでも心が温かくなり、力が出る。

だが、同時に時にはあまりにも頼るようになり、私も知らないうちに心の片隅が鈍くなったりもした。

シャルは首を横に振った。


駄目だ心が弱くなってはいけない!


やっぱりたき火は不思議だ。

ただそこにいるだけだが、普段より考えが多くなるような魔法がある。

しかし、今は雑念をするよりも、すぐに生き残るために手を動かさなければならない!


よし、集中しよう、集中!


シャルが雑念を置いて再び集中しようとしたその時、笑いを止めたメイが柔らかい口調で口を開いた。


「ねえ、シャル、そういえば、あなた、死んではいけない理由があるって言ったよね?」


彼女の質問にシャルは頭を下げて手入れ中のウサギを見つめながら答えた。


「はい、まあ…」


「それは何でなの?」


やや真剣な表情で尋ねる彼女の問いに、なぜかすぐには答えられなかった。


「........」


話したくないとか隠したいというより、ただ心配だった。

本当に言っていいのかな?

彼女に負担になるんじゃないかな?

そう思ってためらったのかも知れない。

シャルがそんなにためらっていると、メイは申し訳なさそうに手を振りながら言った。


「はは、ごめん。言いづらいなら言わなくても大丈夫」


彼女が心からシャルに配慮していることをシャルは感じることができた。

そのため、シャルは解体用ナイフをぎゅっと握りしめ、ゆっくりと口を開いた。


「……そうですね....大切な人とまた会いたいからです....でもそうするにはお金がたくさん必要です。一刻も早くできるだけたくさん、だから死んで24時間も 横になっている時間はありません」


シャルはそう言って手を止めた。


「そうなの?でも、じゃあなんであえてゲームで稼ごうとするの? 今すぐの収入を考えると、バイトとかがもっと安定して、たくさん稼げると思うけど?」


シャルに疑問を投げかける彼女は、問い詰めているのではなく、ただ疑問を感じているような口調だった。

そのため、シャルはその問いにも答えた。


「……はは、確かにそうですね···でも私はそのよなことはできませんでした.... 現実の私は体がとても弱いんです。それで結局、できることはゲームしかありませんでした」


そんなシャルの返事にメイは少し悲しく落ち着いた口調で口を開いた。


「そうか、ここが君にとっても唯一の方法だったんだ、なんだかそれはわかる気がする」


メイは自分の足の中に顔を隠した。

それから話を続けた。


「敏感なことを聞いてごめんね」


「大丈夫です」


彼女の心からの謝罪にシャルは優しい表情でそう言った。

そして、今度はシャルの方からメイに質問を投げかけた。


「そんなメイさんはどうしてこんなに熱心にゲームをするんですか?

単純に楽しもうとしているようには見えませんので"


「......ふむ、そうだね」


シャルの質問に、しばらく頭を上げて木々の間から見える空を眺めながら物思いにふけったメイ。

そして、すぐに答えを決めたかのように、メイは焚き火を眺めた。

そして、少し暗い表情で焚き火の中に溶け込むように言った。


「願いが....叶うかもしれないじゃん」


疑問形の答えだったが、なぜか彼女の答えからは確信に近い何かが感じられた。

そのため、シャルは問い返した。


「願い?」


しかし、シャルのその問いは彼女の笑い声とともに溶け込むように埋もれて消えた。


「はは、それよりシャル、君、また敬語だね! ため口してよ、ため口!」


この日、ごまかすように見過ごした彼女の一言にどれほど大きな意味があったのか。

それを私が知るのはかなり長い時間が経った後だった。


「こ…ごめん!」


シャルのぎこちない話し方にメイは大声で笑いながら口を開いた。


「本当君にタメ口はごめんだけなんだ?」


「ごめん…メイ…さん…」


「もお、さんはいらない!」


彼女の笑顔と笑い声とともに夜は深まっていった。

その後、あまり特別なことのない会話が交わされた。

そして昇る朝日と共に私たちは体を起こした。

軽くストレッチングをするシャルとメイ、そしてぐっすり寝て起きたようにシャルの頭の上であくびをするライラ。

私たちは決戦の朝を迎えた。


さあ、出発だ!

そしてリベンジだ!


先に山脈に向かう橋の上を速く飛ぶライラ。

気持ちよく冷たい朝の空気に乗って降る日差しは夜の影をおさめ、彼らが行くべき場所を照らした。

まるで光に追われて逃げるような影。

その光景を目の前に、シャルとメイは巨大な奈落の上の橋に立った。

逃げる影はまるでシャルに抱かれ、さわやかな日差しはメイを飲み込んだ。

メイは光の中で口を開いた。


「ねえ、シャル、私は何があってもあのペンダントが欲しい」


シャルは影の中で答えた。


「うん、私も」


二人はお互いに向き合った。

光に照らされる彼女はとても美しかった。

おそらく、この日差しを最も美しく着ることができる女性は、この世に彼女だけだろう。

そんな気がするほど美しいメイ。

当時はそれを知らなかったが、長い時間が経った今日では、心からそう思うようになった。

メイは光の中で微笑みながら口を開いた。


「死んでも譲れないものがある、たぶん君もそうだろう、それでも私たち二人のうち誰が英雄の後継者になっても恨みっこなしだよ」


影の中で、シャルは彼女の笑顔に向かって静かにうなずいた。

すべてが彼女の言うとおりだ。

死んでも譲れないものがある。

たぶんこのさきで私たちはあの小さな妖精が失ったペンダントをめぐって競争することになるだろう。

でも、別にそれが私と彼女が敵になるという意味ではないと思う。

これは一種の競走。

誰が先にゴールに到達するかを決める競走。

だからこそ、私たちはその一つのゴールに向かって一緒に走っていくのだ。

譲れないだけで負けても恨みとか憎悪心とかそんな感情を持たないだろう。

少なくともこの瞬間、シャルはそう思った。

二人は橋を渡って山脈に向かって歩き出した。

その日の偶然から始まった出会い。

一緒に見つけた妖精、ライラ。

シャルとメイが一緒にする初めての旅。

二人はその結末に向かって歩き出した。


■□■







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歌ミン-ギュからのコメント

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いつも見てくださってありがとうございます。 私は日本語も下手で翻訳もしなければならないので他の人よりたくさん遅くなっているのに皆さんが見守ってくださるのが一番大きな力になります。 いつもありがとうございます!

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