Say.3. 新しい世界 (1)


Say.3. 新しい世界 (1)


そこには果てしなく広がる青い野原と丘があった。

走って坂を上ると、風を感じた。

春と夏、その隙間の匂い。

かすかに感じられる花の香りは、甘く鼻を誘惑してきた。

黒髪の少年は両腕を広げて丘の上で、その巨大な世界を感じようとしていた。

風の中で目を開けると見えるもの。

果てしなく広がる広大な平野。

流れる川。

川伝いに見える巨大な山脈。

あの向こうには何があるだろうか?

眺めたそこには果てしなく広がる巨大な世界が広がっていた。

少年の胸には好奇心がわき起こった。

未知の世界。

まだ誰も知らない可能性の世界がその向こうにはあった。

少年は手を伸ばした。

まるで、あの向こうに見える太陽でもつかむ勢いで、その小さな手を世界に向けて伸ばした。

しかし、その瞬間。

そのすべての風景は一瞬にして黒く変わって行った。

まるで伸びた指先にあった太陽が遠ざかるように少年は絶壁の下に向かって、果てしない闇の中に陥っていった。


■□■


ジジジッ!


「そ...に...か.....の?」


頭の中からそんな声が聞こえてくるようだったが、それはひどく割れて意味の分からない声だった。

そして、まるで夢のように、私はそれについて完全に忘れるようになった。


□■□


-ローディング2%、3%、4、5、6%···100%

-障害補助装置を確認。

-ペアリング。

-インストール。

-ログイン。

-ユーザーの生体情報を確認中。


突然暗闇の中でそのような音声と共に半透明なメッセージウィンドウが上がってきた。

しかし、それを確認する暇もなく、その時私はまだ悪夢のようなパニックの中でうめき声をあげていた。


「もこれ以上延命治療は無理でしょう」


死神の声が浮かんだ。


いやだ...まだ....死にたくない...!


トカク、トカク、トカク…!


忘れられない足音が耳に響くようだった。


-登録されていないユーザーを確認しました。

-新しいアカウントを作成します。


誰でもいいから助けて···

まだ死にたくない···あやめ....!


トガッ!トガッ!


まだ君にちゃんとさよならも言えなかったのに···


「あなたを探してくれたあの子に感謝しなさい」


-新しいアカウントの作成を開始します。


ピユウン---


突然真っ黒な私の世界に浮び上がった文字たち。

その文字に驚く間もなく波打つように世界中が真っ白に染まった。

そして私はその世界で目覚めた。

分からない奇妙な感覚だった。

まるで眠って夢を見るような朦朧とした感覚。

体というものは感じられないまま、まるで体を失って魂になったような浮遊感さえ感じられた。


ああ、そうなんだ、私は死んだんだ。


そう思う」と言って、思わず納得しようとした瞬間、機械的な女性の声が聞こえ始めた。


-生体情報登録。

-新しいユーザー"そま"様を確認いたしました。


「誰だ?!あれ?声が出る…!」


あまりにも驚き、思わず飛び出した声!

10年間死んでいた首から突然飛び出した私の声に自分ですら驚くこともつかの間。

空中に絵文字のような黄色の球体が現れ、その特有の機械的な音声で私の問いに答えた。


-はじめまして、そま様、私はそま様のアカウント作成及びゲームを始める前に基本的な事項についての設定案内を担当している人工知能AIセラデーと申します。


「人工知能AI?」


どうしてそんなものが今私の前に現われたんだ?

それよりゲームって?


状況を理解できなかったこの時の私はただ混乱するだけで、理性的な思考をすることが不可能だった。


やばい。頭が痛くなってくる···

人工知能?

Ai?

ゲームアカウント?


急にそんなことを言っても納得できるはずがなかった。

もっとも、今日私は死ぬ予定だったのではなかったというのか?

病院から追い出され、施設で死んでいく予定ではないというのか?

ところでどうして今私は話もできてこの変な空間の中で絵文字と対話をしているのだろうか?

そして···10年ぶりに目覚めて初めて見たのが変な顔文字だなんて···

何というつまらない冗談だと言うのか?

あまりにも疑問だらけだった状況、私はできるだけ混乱した胸を落ち着かせ、絵文字のaiセラデーに聞いた。


「私は死んだの?」


-いいえ、現在、私は「コクーン」でそま様の脳と直接つながっている状態です、そのため、常時相馬様の脳波と心拍数を測っています。 そのため、その問いに答えを出すと、生命活動に支障がないと言えます。


「それなら私はどうして話せるの? 私の体は...."


-ここは仮想現実、現実での状態がどうであれ関係ありません。

簡単に言えば、ここは一種の脳内部の精神的な空間。

そのため、体とは関係なく脳だけが生きていれば、現実での体の状態がどうであれ自由に動いて話すことができ、疎通することが可能です。


「仮想現実だっど?」


そんなことができるというのか?

仮想現実なら、私が生まれる前に月を改造して作った巨大スーパーコンピューターを基盤にした技術だとあやめに聞いたことを覚えている。

しかし同時に、ある事件によって70年前の月とともに歴史から消えた技術だと聞いた。

ところで、なぜ今このタイミングでその技術が復活したと言うのか?

とにかくそれよりも私は今この状況に到底ついていけなかった。

今日、病院で追い出されて死ぬ予定だった私が、どうして今仮想現実にいるのかということだ。

そうでなければ、実はこのすべてが夢あるいは実験かもしれない。

私はもう死んで、病院が私の脳を利用したシミュレーションをしているのかもしれないことだった。


「君が生きようとするなら、今度は自ら…」


そろそろ理性を失って極端な想像の中に理性が飛躍しようとした瞬間。

突然死神から聞いた言葉が頭の中に浮かんだ。


待ってよ、そう、そうだよ、あの男は誰だ?

医者でなければ、あの男は一体何だったんだ?

そういえば、頭に何か噛まれるのをぼんやりと感じた。

そして手にも何か注射された。

ということは、この状況はすべてあの男が主体したことだということか?

分からない。

すべてが推測であり、何一つ明確なものがなかった。

しかし、少なくともあの男が私をこの状況に押し込んだことは明らかだった。

それなら私はあの男に会わなければならない!

会って問わなければならない。

私を生かすという理由が何なのかについて。

なぜ私を仮想現実空間に送ったのかについて!

理由もなく捨てられて死んでいく私にこのような事情の良い機会を提供するはずがなかった。


そういえば、あの男は一ヶ月後にまた会おうと言ったよね?

機会をつかめるとしたら?

機会?

仮想現実が機会だと?


もし来月病院から追い出されずに生き残ることが機会をつかむことだとしたら、あの男が私に何かを試しているのなら!

何か方法があるはずだ。

この状況を超えて病院から追い出されない何かの方法が!

それならまず来月まで30万円。

今私が準備しなければならない最優先事項がそれだった。

率直に言って、まだ現実性が見えていない。

ゲーム。

仮想現実。

お金。

個人的な見解を言えば、横になってゲームばかりするのに30万円なんて、そんなことが現実的に可能なのか?

果たしてゲームがそのような大金につながるのか、正直に言って全く分からなかった。


あやめはゲームの話はあまりしなかったから···


分からない。

何もわからない。

少なくとも今はまだ何も分からない。

でも、それでも....!

もしこれが本当に機会だとしたら、何かの方法が存在するとしたら!

私はやるしかない!

もう一度あやめに会うためならそれが何と言っても私はやらなきゃいけない!

そう、あやめ。

あやめにもう一度会うためなら、この薄い機会の線を、いつ切れるかもわからない出所不明の薄い糸であっても掴み上げるしかない!

これが神が与えてくれた生命の縄であろうが、悪魔が吊るしておいた腐っていく釣り糸であろうが関係ない!

ぶら下がってやる!

あやめのそばにあと1秒でも長くいられたら私は何でもできる!

どうせ引き下がる所などない。

おとなしく死ぬのか、それとも死ぬその瞬間まで惨めにもがくのか?

その中から一つを選ぶとしたら···

答えはすでに決まっていた。


それならやってみるしかない!

この仮想現実ゲームというやつを!


「フライデーって言ったっけ?」


-セラデーです。


「私は何も知らない。だから助けて。 私は何をすればいい?」


-難しいことはありません、まず最初にされるのはニックネームの設定です。

しかし、できるだけ正常な名前にすることをお勧めします。

仮想現実でのNPCは、実際の人々と同じように心と思考能力を持っています。

そのため、ニックネームを「パンツ見せてください」とか「胸を触らせてあげる」などと設定すると非常に不利な待遇を受けることもあるので、この点事前にお知らせします。


…そんなことをしたやつらがいるというのか?

どうやらこの世の中にはあやめが教えてくれたことよりもっと狂氣に満ちた奴らがたくさんいるということをこの時悟った。


ニックネームか?


長く悩むこともなく、私の頭の中に一つの単語が浮かんだ。


「シャル」


今では使われていない古代の韓国語で「糸」という意味を持つ単語。

以前、あやめが語感がいいと言ってその単語を教えてくれたことを思い出した。

そして何より、今の自分に何よりも似合う名前だと思った。

絶対どんなに薄くても絶対手放してはいけない私の生命の糸。

あやめにつながるただ一つの糸。

そのような意味が込められた糸がまさに「シャル」だ。


-確認できました、次にアバター作成プロセスに移行します。


すると突然、目の前に半透明のスクリーンが現れた。

そしてそこには私がいた。

10年間ベッドで動かずに生きてきた私、そまがいた。

髪の毛一本なしに奇形的に乾燥し、ミイラのような腕と脚。

衰弱した顔は今にも飢え死にしそうにやつれていた。

肌は真っ白だったが、それはまるで太陽の光を見ない吸血鬼のように血色がなく青白かった。

生きていること自体が不自然なビジュアル。

それが私の姿を見た私自身の概観的な見解だった。


私はずっとこんな姿で生きてきたんだ···


気の毒をこえて全身に身の毛がよだつ。

こんなおぞましい姿でずっと生きようともがいてきたんだな。

ひどく、惨めで、おぞましいものだった。

それでもそれがまだ生きようとする私自身であることを誰よりもよく知っていた。

髪を伸ばした。

黒髪。

東洋人なら誰かにとっては特別なことのない平凡な黒髪だが、私にとっては何よりも特別な髪の毛。

奇形的に痩せていた体型も、やや健康美があるほど肉付けをした。

すると、生き埋めにされたミイラのようだった姿は、ある程度健康な人間の形に変わった。


もし病気がなかったら私はこんな姿に成長したのかな?


現実の私とはあまりにも違うその姿に私も知らないうちに少し泣きそうになった。

しかし、そのような感傷に浸っている余裕はなかった。

あと1カ月で30万円稼ぐためには1分1秒も無駄にすることができなかった。

私はすぐに作業を完了し、次の過程に来た。


-次は種族を選択してください。


その音声と同時に目の前に数多くのリストが現れた。

基本的な人間から始めてエルフやドワーフ、数多くの種族が書かれたスクロールを下ろすと、「獸人」という文句も存在した。

しかし私は別に悩まずに人間を選んだ。

その後は、すべての設定を完了し、一度選択を完了すれば、これ以上外見と種族を変更することはできないというメッセージが現れた。 そして同時にこれに同意するのかと尋ねるメッセージが現れた。

私はためらうことなく「分かった」と答えた。

すると、今まで虚空をさまよっていた数多くのメッセージとスクリーンが、テレビが消えるように一瞬にして消えた。


-ありがとうございました、これで、仮想現実ゲーム、「アナザー」に向けて出発するすべての準備が完了しました。

今からワープを始めます。


「待って!私はまだ何も知らない。何でもいい。この仮想現実の世界について教えて!」


-それを直接分かって行くのがもっと楽しいと思います。

ですから、シャルさん、どうか良い旅行になりますよう心からお祈りします。


その言葉が終わると同時に、私の視野は再びぼやけて暗くなった。

体が光の粒子に割れるのを感じた。

しかし、不思議なことに、辛くはなかった。

正直、まだ不安だった。

心臓が気持ち悪く震えるのを感じた。

当惑し、混乱し、恐ろしかった。

率直に言って、まだこの全てが夢ではないかという疑いもあるほど現実感がなかった。

でももしこの全てが奇跡の一部で私に本当に機会ができたのなら。

捕まえてみたい。

今度は私の手で直接。

もう誰にも頼らず、迷惑もかけず、この手で、自分の力で。

そんな誓いとともに目を閉じた。

そして光と共に再び目を覚ました時。

私は'シャル'になっていた。

手を握る感覚はいわば10年ぶりだった。

10年ぶりに初めて両手と会い、そして地面と会い、持ち上げた峠。

私はその世界と出会った。

色とりどりの光でいっぱいでまぶしい新世界!

アナザーを!


チジッ···!チジッ!


「そ...に...か.....の?」


またもや頭の中に何かの声が聞こえてきたが、すぐに私はその声の存在を完全に忘れるようになった。


「そこに誰かいるの?」


「私の名は......」


それは出所の分からない男性の声だった。


□■□



----------

後記.

----------

遅くなり、申し訳ありません。 思ったよりアイデアがうまく集まらなくて、かなり遅れてしまいました。 作成してみると話がずいぶん長くなってSay3は三つのパートに分かれるようになりました。 現在一生懸命翻訳中ですので、少々お待ちください! すいません.

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