第3話 身支度の前の段階だ!!
ルーニィからここに居ないかと言われた翌日の朝。
少年は、家の前の井戸で真剣な表情をしていた。
(、、今、、この気温で井戸水かぶって大丈夫か?!、、いや、とりあえず汚れを落とさないと)
少年が決死の覚悟で汲み上げたばかりの水を頭上に振り上げた時だ。
「貴方、、何してるの??」
「!!、ルーニィさっ、、あっつぅうううっ!」
振り返ると同時に手が滑り、桶の中の水を思いっきり被ってしまった。
「まぁ、大変、、大丈夫?」
「、、、だ、大丈夫です!」
(いや、とてつもなく寒い!!)
「こちらにいらっしゃい」
濡れた手を引かれながら、家の左横手にある扉から中へ入る。
(、、ふ、風呂場なのか?)
バスタブに向けられたシャワーから、雫が、落ちていた。
だが、所々カビが生えた床と散乱した入浴具を見るに手入れはされていない。
彼女がバスタブに繋がる蛇口を回すと、少ししてほかほかと湯気を帯びたお湯が出始めた。
「ここで洗うと良いわ、、ごめんなさいね、失念していたわ」
少し申し訳なさそうにルーニィは、笑う。
「いえ、すみません」
「これで拭いてちょうだい、、ちゃんと洗えるかしら?」
「はい!出来ます!!」
元気の良い返事に、彼女は微笑みながら入ったときと別の扉から出ていった。
「、、お湯、、あったのか、、」
少年は、腰に巻いていた汚れた服を取り、頭からお湯を被った。
(久しぶりのお湯、、凄く気持ちいい)
身体と頭を良く洗い流して、バスタブを覗き込んだ。
(、、これは、入れない、)
湯垢と思われる汚れが、バスタブに点在していた。
「こ、、このまま洗おう!」
これは急務だと言わんばかりに借りた布で身体を拭いて、置かれていた服に腕を通す。
デッキブラシとスポンジが片隅に落ちていたのでとりあえず、出きる範囲磨いていった。
バスタブも一度湯を抜いて、水洗いだがしっかり洗い流していく。
自分が着ていたボロボロの服を一度手洗いして、それを雑巾に軽く拭きあげる。
「とりあえず、、こんなもんか、、」
あまり広いスペースではなかった為、自身の入浴と合わせても40分ほどの作業。
完璧ではないが入った時よりずっと綺麗だ。
「よし、ブラシとかはこっちに、、」
コンコンとノックの音がして、ルーニィが声をかけてくる。
「大丈夫かしら?、、具合が悪いとか、、」
「すみません、直ぐに出ます!」
少年は、掃除道具を隅に置いてルーニィがノックしたドアから出ていった。
「あら、、綺麗になったわね」
先ほどはくすんで砂ぼこりがちらついていた黒髪を見つめる。
少年の頭を撫でながらルーニィは、微笑んだ。
「、、ありがとうございます」
「では、私も用意したものがあるから、、こちらへ」
彼女は手を差し伸べそう言った。
暖炉の右端のドアの前だ。
(ん?、、こんなとこにドアなんて)
「ここが貴方のお部屋よ?、、どうかしら?」
カチャッとルーニィが扉を開けると、角部屋の様に窓が二つあり吊り下がりの照明が落ち着いた雰囲気の空間だ。
「、、いいんですか?」
「ええ、この部屋と中の物は、好きに使ってちょうだい」
少年が喜ぶのを見た後で「私は自室にもどるわね」とルーニィは出ていった。
奥の窓の横には、クローゼットの扉があり、中には服が一式入っていた。
(いつの間に?、、)
右手の窓下には、ベッドがありその隣に椅子と机が置かれている。
素朴な部屋という印象だ。
彼は、思わずベッドに倒れ混む。
(、、心地いい)
この世界に来た日から、こんなに心地よい時はあっただろうか。
「、、、沢山役に立とう、、」
(大丈夫!一人暮らしの社会人だったんだ、ちゃんと出きるさ)
少年が「よし」と思ったのも束の間、彼は疲れから深い眠りについた。
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