ガラボット探索

 地上の原因のいくつかは、遥か彼方の遠方にある。遠方の原因の探索者は、その対象をどこまで理解しているのだろうか。近所で老婆が死んだ。死因は謎とされている。私は、老婆の死因を調べるうちに、知りすぎた老婆が命を狙われたのだと考えた。あの老婆は国家と戦って死んだのだろうか。

 私の推測はそんなに単純ではない。あの老婆の知りすぎた知識は、明らかに人外の領域についてのものだった。人外の現象を調べつづけた老婆が何者かに殺されたのだ。自然死ではない。病気でもない。いったいどのように死んだのか。私にはわからない。私は老婆が死んだ場面を見ていたわけではないのだ。

 私は、老婆の残した「遠方における死因」と題の付けられたノート数冊をもとに、老婆の知りすぎた知識を理解しようとしていた。

 かつて、この国にはたくさんの外なる神がやってきたことがあった。それを私は「外々古典」によって知っている。日本の古墳時代に成立したこの文書群は、難解な万葉仮名で書かれつつも、その内容はあまりにも常軌を逸し、簡単には信じられない内容だった。この国の古墳時代を外なる神が支配していたとは。

 だから、この国の古文書には、外なる神についてたくさんの記述がある。八世紀に書かれた古事記に天船が記述されている国だ。この国はその頃から、天空の方向の探索をたくさん行ってきたのだ。それは、天空を遥かに超越した宇宙の外にまで及んだのだ。「外々古典」は、外なる神の故郷を調べようとした研究の痕跡である。そして、二十一世紀に老婆が「遠方における死因」を記述して死んだのだ。

 老婆によれば、人類の死因のいくつかは、宇宙の外の遠方にある。地上の死因から遠方の領域を探る難しい分析をあの老婆はやりきった。「遠方における死因」は、外なる神の移動地点<ガラボット>を書き記そうとした直前で終わっている。

 遠方に潜む遠方の中の究極を伝えている証言は存在する。遠方は宇宙の外にまで至る。その遠方の究極を探し出した者がいたら、それは恐ろしい脅威にさらされることになる。そうだ。気を付けよう。遠方の探索は、遠方の究極を探すか、外なる神の移動地点を探すか、区別して理解しなければならない。遠方の極地点があるとしたら、それはとても重要なことだろう。しかし、遠方の極地点が存在するかどうかはあまりにも未知の世界だ。そこまで探索を広げるのはまだ早い。人類が長年探し求めてきた<ガラボット>は極地点ではない。遠方の極地点より近くにある<ガラボット>を探さなければならない。<ガラボット>は歪んだ時空を超え、物質の存在を超え、我らの世界とは異なる強き生命体の司令部なのだ。

 外なる神に司令部は存在しない。確かにそうなのだ。しかし、<ガラボット>は、外なる神に最も影響力のある位置として、統計的に導き出したものなのだ。

 私もおそらく、<ガラボット>の位置を書き記すことはできないだろう。その位置を書き記す前に、私も遠方の死因に殺される。死んでしまう。

 異次元を、異次元から来た死因によって探索しようとしたあの老婆の研究はなんと素晴らしいことか。

 今、私は血を吐いた。身体が痛んでいる。やはり、知られてしまったのだ。書き記すことはできそうにない。頭が激しく混乱する。遠方から死の誘いがやってきたようだ。私はもうここまでだ。どうか、せめてもの希望を地球の生命に。

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