大きな食事
これからするのは、聞くと後悔する陰鬱な話だ。我々にはなぜ希望がないのか。それについて話したい。気が滅入るのは仕方がない。聞きたいものだけ聞けばいい。聞きたくない者は去るといい。私はこれがどうしても伝えなければならない重要な話だと思って話すのだ。この世界の真実には希望などない。世界は広く、人類より強いものはたくさん存在する。人類が最強の霊長類だなどというのは愚か者のいうことだ。生物の種族ごとの圧倒的な強さの差は、努力して克服できるものではない。あまりにも強い敵に対して、人類の心は恐怖で震え上がってしまう。震え上がらない者は、危機に対して鈍感なのだろう。圧倒的な恐怖に打ち勝つことのできる者は幸いなるかな。人類は圧倒的な強さの敵に恐怖する。それでいて、なおかつ立ち向かうことのできる勇気のある者は讃えられるべきだ。
遥か昔、外なる神が地球にやって来て、大地の神を倒した。我々の故郷の神はすでに倒されてしまった後なのだ。大地の神は我々を守護する者でもあるだろう。しかし、我々の守護者はすでに倒されてしまった。だから、我々は、勝者である外なる神を祭らなければならない。外なる神を讃えて祭りをしなければならない。故郷の大地の神を貶し、外なる神のために祭りをしなければならない。
外なる神は、宇宙の外からやって来た異形の者たちである。外なる神は、この宇宙とは異なる法則に従い生きている。なぜ、存在の法則のちがう我々に外なる神が干渉できるのかはわからない。しかし、外なる神が我々に干渉できるのは確かな事実なのだから、我々は外なる神を恐れなければならない。
そして、話は、アシザワという男についてのことになる。アシザワという男が英雄なのか、それとも人類の敗因なのか、を考えることになる。私はアシザワを英雄だと思っている。しかし、アシザワを人類の敗因だというものも多い。はたしてどちらなのだろう。
アシザワは、この国の岐阜県で生まれた男だ。アシザワの住んでいた町で、固くて大きな物体があるというので、それを掘り出す作業をした。何が埋まっているのだろうかとみんなで不思議がって、大地に埋まった物体を重機を使って掘り出した。
苦労して物体を掘り出してみたら、突然、作業員たちが気絶した。何が原因で気絶したんだろうって話になって、みんなが少しずつ様子がおかしいことに気付いていった。気絶する原因は掘り出した物体にあるんじゃないかって話になって、これは何だってことになった。いったい掘り出した物体が何なのか、みんなさっぱりわからなかったんだ。それで、偉い先生を呼んで解明してもらおうとした。そしたら、物理学者とか、医学者とか、考古学者とか、たくさんの先生がやってきて、それで、その物体は外なる神だってことになったんだ。
外なる神を掘り出してしまったとみんなガタガタ震え出して、いつ動き出すか恐れ始めたんだ。そこにアシザワもいた。
外なる神に接触した瞬間は、人類の運命を決めるとても重要な一瞬だ。その重要な一瞬で、アシザワは太陽の方向へ視線を動かしてしまったんだ。アシザワの視線を追って、外なる神はすぐに太陽の存在に気付いた。そして、確かにあれは美味しそうだなとでも思ったんじゃないかな。
そして、外なる神は宙に浮き、太陽に向かって飛んで行った。
アシザワは、眠りから覚めたばかりの外なる神をうまく地球の外に追いやることができた。だから、アシザワは英雄だと私は考えるのだ。あなたはどう思う。
しかし、そのために、我らが太陽に外なる神が向かってしまった。外なる神は太陽にたどりつき、太陽をムシャムシャと食べている。アシザワは、地球を助けるために太陽を獲物に差し出した。
これから太陽は滅びるだろう。
太陽から滅びた方がよいのか、地球から滅びた方がよいのか、どっちだったんだろうか。太陽が死んでいく。太陽が死んだら、我々も生きてはいられない。だが、地球がすぐに滅びるよりはよかった。
アシザワは英雄だろうか、人類の敗因だろうか。どちらだろうか。太陽を獲物に差し出すことなく戦うべきだったという者たちが多い。アシザワは外なる神と決戦すべき瞬間において対応をまちがえたという者がいるのだ。確かに、太陽が死んでいくこの世界にもはや希望はなくなってしまった。もう我々に希望はない。恐ろしい。恐ろしい。外なる神に対峙するのも怖いが、太陽が死んでいくのも怖い。なぜ、この世界はうまくいかないのだろう。破滅することが決まっていたとでもいうのだろうか。
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