第2話 世代ナンバーワン野手

将来に対する不安をもって、行きつけのラーメン屋を出た。そのときだった「やっと見つけた…ここにいたのか、キャプテン」「お前は…小野寺…チームを優勝に導いた世代ナンバーワン野手のホームラン王様が一体何の用だ?」「お前、戦力外受けたんだってな。」「そうだよ、まぁ俺の中でいったん、野球にあきらめがついたかな」「ほんとにそうかよ、俺にはまだ、あきらめきれないって顔に書いてあるように見えるけど。」「お前に何がわかるんだよ…!俺らの高校で唯一ドラ一で、ずっと一軍で結果出してきたお前に、落ちこぼれの俺たちの気持ちがわかるか…!もう野球はあきらめたんだ、引き留めても無駄だぞ。」「そうかよ。俺はまだ、お前と一緒に一軍でプレイするの、諦めてないからな。ずっと待ってる。」そう言われた途端、急に自分が情けなくなってきた。年齢は一緒なのに、成績も、年収も、天と地ほどの差があるこいつが、せっかく引き留めてくれてるのに、それに対してむかついてしまう自分が情けなかった。「もういいんだ…だいたい、俺なんか甲子園優勝校のキャプテンだったからドラ4だっただけで、甲子園に導いたのもお前だし、本当はドラフトに指名されるレベルの選手じゃなかったんだ…」「…あっそ。そこまで言うなら引き留めはしねぇよ。でも、俺はお前とプレイがしたい。それだけは変わらねぇ。」「俺、待ってるから!育成でもいい、ほかのチームでもいいから、這い上がってこい!」そんな言葉を背中に受け、俺は逃げるようにアイツから離れた。なんだか自分がものすごく惨めに感じた。本当に「落ちこぼれ」になってしまったのかもしれない。こんな俺を見て、お母さんはどう思うだろうか、そう思いながら実家へと歩みを進めた。そんな時だった(プルルルル)誰だろう、お母さんかな。「平木小平くん…だね?」「はい、そうですが…セールスなr…」「君、まだやきゅうしたいか~い?」「…?どういうことですか?」「さっきディーアズが球団売却したのは知ってるよね?僕、あの球団買い取ったんだ~」「は、はぁ…」「それでね~!単刀直入に言うと、僕たちのチームに来てよ~!」「え、えぇぇぇ…」「OKってことだね!じゃあ三日後に契約する前に説明会するから会場の住所送っとくね~!」「いいなんて言ってな…」(ツー…ツー…ツー…)切りやがった…どうしよう…野球はあきらめたのに…「俺、待ってるから!育成でもいい、ほかのチームでもいいから、這い上がってこい!」そんなアイツの言葉が脳裏をよぎった…説明会くらい、行ってみるか…

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ベンチの外から見た景色は絶景だった。 @hare_ruya

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