ベンチの外から見た景色は絶景だった。

@hare_ruya

第1話 戦力外通告

「単刀直入に言う、君はクビだ。」荷物をまとめて、寮を出てから1時間ほどたつのに、その一言が頭から離れない。覚悟はできていた…俺の野球人生も終わりか…。そんな思いを胸に秘めつつ、寮の近くの行きつけのラーメン屋によった。「いらっしゃい!おぉ!契約更改、どうだったんだ?」まさか、戦力外になったなんて、口が裂けても言えない…「…大将、今はちょっとその話はしたくないです…」「…悪かった。」「注文は?」「塩ラーメン、ネギ多めで。」「…戦力外くらったやつってのは、塩ラーメンが食べたくなるもんなのか?」「どうしてそうおもうんですか?」「さっきよぉ、お前と同じく戦力外をくらった小郷江ってやつがお前と全くおんなじ注文してたんだよ」「待ってください、小郷江も戦力外になってたんですか?」「おう、確かお前と同じ高校だっただな。まぁそんなにショックを受けるなよ、お前だけがでクビになったわけじゃない。」仲間がいる、それを知ってほっとした自分に嫌気がさした。別に小郷江が戦力外になったうれしかったわけじゃないけど、“落ちこぼれが自分だけじゃなくてよかった”そんな最低なことを考えてしまった。「すいやせーん!忘れ物しやしたー!ん?あ!平木じゃねぇか!」「どうだったんだ?契約更改。」「…小郷江、お前と同じだよ。」「…マジか。」「で、でもよぉ、俺は育成だったからしょうがねぇけどよぉ、なんでお前が戦力外なんだ?」「将来活躍するビジョンが見えなかったんだとさ、実際、二軍で二割三分しか打ててなかったからな。」「マジかぁ…俺たち、これからどうなるんだろうなぁ…」その一言を聞いて、一気に不安が押し寄せてきた。戦力外を受けたショックでわかんなかったけど、戦力外通告を受けたということは、単にプロの世界で野球ができなくなるだけじゃない、今まで野球にしか心血を注いでこなかった人たちが、何も知らないまま社会に投げ出される。ましてや、育成の小郷江なんかは、貯金も少ないだろうし、すぐに行動しなければ貯金が底をついてしまうだろう。そんな不安を抱えながら、ネギマシマシ塩ラーメンをすする。

「速報です、ウリーグで5位と25ゲーム差をつけられて最下位となったディーアズが球団を売却することを発表しました」「え!?マジ!?」小郷江は思わず腰を抜かしてしまっていた。でも、人々にとってはわかりきっていたことだった。実際、お金がなくて補強ができなくてあのザマだったのだろう。「でも一体どうするんだろうな、仮にどこかが買収したとしてもあれだけ腐った戦力でプレイするのは不可能だろうに。ま、俺らには関係のない話だな。」「そうだな、あ!わりぃ!俺そろそろ実家帰るわ!また一緒にどっか飯行こうぜ!」「おう、またな。」元チームメイトに別れを告げ、最後の人口をすする。「大将、お会計お願いします。」「あぁ~…、そのなんだ、今日は辛いだろうしお代はいいよ。その一杯で、元気出してくれりゃあ俺は満足よ。」「あ、ありがとうございます…」そう言って店を出た。これから俺、どうしよう。そんな不安を抱えて店を出た。

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