対策は大事
久々に戻ってきた塔の世界で、俺はローグライクを思いっきり楽しんでいた。
外の冒険も悪くは無いのだが、やはりルート選択をしてリスク管理をし、自分のできる範囲で最大限のリターンを得ると言う行為はとても楽しい。
脳死でやると途中で絶対に詰むからこそ、その時の適切な判断が必要となるわけだ。
外での冒険にはそれがない。ただ敵を倒して、強くなるだけ。
どちらかと言うと、ランダム要素の強いRPGをやっている気分になる。
昔ながらのローグライク(伝説的なローグライク)が好きな人はそっちの方が性に合うんだろうな。だが、俺は現代っ子で、本格的すぎるローグライクは少し苦手意識があるのだ。
個人的には、ある程度気軽に再挑戦できるローグライトの方が好き。もっと言えば、カード同士のシナジーを考えてデッキを構築するタイプのゲームが好きである。
デッキ構築型ローグが多分1番やりこんでたしね。アクション系も悪くはなかったけど。
そう言えば、カードとか言うよく分からん武器種もあったよな。
まだ触ってないので分からないが、デッキ構築型のタイプだったら永遠にそれだけ触ってる自信があるぞ。
「はいおしまい。攻略法は分かってるし、立ち回り方もかなり改善されたからか、余裕を持ってクリア出来たな」
「キュー........」
ローグライクはやはり神ゲー。そんな事を思いつつ、俺はこのステージ最後のアルマジロンを倒す。
アルマジロンの攻略法は単純。躱して殴れ。それだけである。
上から降ってくる攻撃は隙が大きいので、俺としてはかなりやりやすい部類なのだ。
少なくともミノタウロスとか言う、突撃牛よりも断然マシ。
『ステージクリア。4ゴールドを獲得。回復ポーション(中)を獲得。スキルカード報酬をお選びください』
そしていつもの報酬画面。
ローグライクをやっている時、これを見るのが1番の楽しみである。
やっぱりね、報酬を貰う時がいちばん楽しいんだよ。
「お!!ようやく飛斬スキル来た。これで遠距離攻撃の手段を得られたな」
スキル1刺突に飛斬効果を付与。
この塔のローグライクにおいて、何気に重要な飛び道具系のスキルカードを引けた俺は、迷いなく飛斬を選ぶ。
近距離戦は危険が危ない。やはり遠距離チクチクがどうしても強くなりがちである。
特に、一撃くらったら終わりのこの試練では。
俺は所詮人間でしかないからね。オークの持っているあのクソデカ棍棒で殴られれば、鼻から脳を吹き出して死ぬのだ。
「そして、第七階層突破!!やったぜ!!」
スキル厳選もかなりした上に、ポイントによる強化もかなり施していただけあって、ついに俺は第七階層の突破に成功。
まだまだ強化できる部分は多いのだが、大抵の場合はちょこっと強化したらクリア出来ちゃったみたいなことが起こるのがローグライクだ。
この塔の試練は強化が前提になっているところがあるものの、歴戦のローグライカーの手にかかればどうってことは無い。
.......多分中ボスか最終ボス辺りで絶対に詰むだろうけど。
塔くん、もう少し難易度を落としてくれてもええんやで?高難易度のローグライクも好きといえば好きだが、適度に無双して気軽に遊べる方が俺は好きなのだ。
「難易度が上がることはあっても下がることは無いんだろうなぁ........世知辛い」
今どき初心者救済措置をつけてないだなんて、時代遅れにも程がある。頭を使うゲームなのはいいけど、初心者も楽しめるゲームを作るのが今の時代ってもんでしょーが。
初心者お断りゲーは困るよ!!みんなが楽しめるゲームを作るのが、塔くんの仕事でしょ?!
と、塔が“何言ってんだお前”と思いそうなことを愚痴りつつ、俺は第八階層へと向かう。
ルート選択。
やはりと言うべきか、三階層事に中ボスが用意されているらしく、第八階層最後のステージには中ボスアイコンが表示されていた。
「ま、だわな。むしろ、ここでボスが出てこなくても困るし。んで、今回は........エリートルートで行くか」
今回もエリートステージを通れるルートを選んだ俺は、早速最初のステージへと向かう。
最初のステージは“兎と豚の樹海”だ。
いや、名前。
急に呼び方が雑になるじゃん。ちゃんと“ホーンラビットとオークの樹海”って書いてあげようよ。
流石に可哀想だよ。
名前からして、ホーンラビットとオークが出てくるのは明白。しかし、“兎と豚”はあんまりだろう。
基本俺を殺すために存在する魔物でしかなく、敵以外の何物でもない彼らだが、塔の扱いが急に雑になれば多少なりとも同情はしてしまう。
いや間違ってはないんだけどね?ホーンラビットは兎だし、オークは別名“豚人”と呼ばれているから。
間違ってはないんだけど、名前があるんだからそっちで呼んであげようよ........
俺は少しばかり魔物たちに同情しつつ、ステージに入る。
そこはいつもと変わらない樹海。しかし、そこには2種類の魔物が存在している。
「グヲォォォォォ!!」
「キュー!!」
「早速か!!」
ステージ開始と同時に現れたホーンラビットとオーク。
幸い、目の前にリスポーンした訳ではなく、少し離れた場所に現れてくれたお陰で俺は迎撃準備が整えられる。
助かるね。準備時間があるのはいいことだ。
「刺突」
「キュッ?!」
先ずは突っ込んでくる二匹の内1匹を止めて、擬似的な一対一を作り出す。
数多くの魔物と戦ってきた俺が学んだこの塔の攻略法の一つ“瞬間的でもいいから1VS1の構図を作れ”を実践するのだ。
数秒でもいいから、一対一の状況に持込れば、その間は目の前の一体だけに集中すればいい。
各個撃破がやりやすくなるし、槍のスキル的にも集団戦よりはタイマンの方が強いのだ。
対応できない訳では無いが。
「槍投げ、扇、槍投げ。からの刺突」
「グヲッ?!」
そして、オークとタイマンの状況を作り出せばあとはやることは変わらない。
ホーンラビットが復帰してくるまでの間に、適切にスキルを吐いてオークを仕留めつつ戻ってくるホーンラビットに備えるだけだ。
六槍の構えもかなり使っていた為か、扇を使って上手く二段階攻撃を当てるなんて芸当もできるようになってきた。
ダメージ効率の上昇は、結果的に勝利繋がるものである。
「オーク討伐完了。後はお前だけだぞホーンラビット」
「キュー!!」
オークを爆速で処理した俺は、突っ込んでくるホーンラビットの攻撃を避ける。
馬鹿め。俺は既に木を背にしてお前の攻撃を誘っているのだ!!
体に染み付いているんだよ!!何回もお前に殺されたお陰でなぁ?!
「ムキュッ!!」
「ハッハッハ!!馬鹿め!!自分から木に突っ込んで抜けなくなっちまったな!!オラァ!!おしりペンペンの時間じゃぁ!!」
「キュー?!」
俺の心を射止めた(物理)罪は重い。
俺の心臓を二回も貫いてくれたお礼は、同種のお前達に全て還元してやるんだよォ!!
そんなわけで、槍でおしりペンペンする攻撃開始。
スキルを適度に使っておしりをシバけば、ホーンラビットはあっという間に倒れてしまう。
む、火力が上がっているからか、ちょっと倒れるのが早いな。
「対策は大事。古事記にもそう書かれてた」
俺はそう言うと、ステージクリアのために進むのであった。
1回ぐらいおしりペンペンをせずに、あのモフモフした毛皮を触ってみたいのだが、それで死にましたとか笑えないんだよなぁ。
モフモフのために命を犠牲にするのか、それともモフモフを我慢するのか。
世界は難しい二択の連続だな。いやほんと。
後書き。
ちょいちょい忘れている人がいるので、塔の仕様について。
塔の外で得たスキルカードなどは、塔の挑戦の際に持ち込めないぞ‼︎
あと、外で得たカードは塔の中で死ぬとリセットされるぞ‼︎
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