ギルドからのお呼び出し
エレノワールが連れてきた新たなモス、モーちゃんが家族に加わり、クランはさらに騒がしくなった。
モーちゃんもかなり賢いらしく、更には超コミュ強。
相手に合わせて自分の性格や態度を変えると言う素晴らしい才能の持ち主であり、あっという間にこのクランに馴染んでしまった。
モスモスしてみたかったけど、ハイちゃんはあまりモスモスさせてくれない。
となると、結果的にモーちゃんに人気が集まりのは仕方がないと言えた。
「........(モス)」
「こうして見ると、本当に可愛いな。ハイちゃんの時も思ったが、モスって凄いんだな」
「分かる。でも、僕はハイちゃんの方が好きかも。静かに撫でさせてくれるから、落ち着くんだよね。モーちゃんは楽しいって感じかな」
「私はモーちゃんもハイちゃんも好きですね。どちらも可愛くて微笑ましいです」
モーちゃんがクランに来たことによって、他のクランメンバー達も自分を癒してくれるペットが欲しいと思い始めたのか、甘え上手なモーちゃんをみんなでモスモスしながら、ペットのカタログを眺めている。
既にペットを手にしていた俺とエレノワールはその様子を見ながら、“その気持ちはわかるよー”とウンウンと頷いていた。
「ローグに感謝だな。1日過ごしてみて分かったけど、癒しって大事だわ」
「だろ?ゲームだろうが現実だろうが、癒しってのは必要なんだよ。人間、死んでばかりじゃストレスが溜まるもんだ」
「いや、普通は死なないんだけどね?この世界がおかしいだけで」
それはそう。地球では死んだら終わりだからね。
死者蘇生術なんて地球には存在しない。死んだら終わりの1度きりの世界だ。
地球とこの世界の最も大きな違いは、誰しもが一度は死を経験したことがあるという事だろう。
この世界における死と言う概念は、割と緩い気がする。
そりゃ、死にすぎて塔の中と外の区別がつかなくなるわけだ。
特に俺のように命を無限残機と考え始めているやつは、気をつけなければならない。
「........(モスッモスッ)」
「ハイちゃん、随分と機嫌がいいな」
「俺が朝起きた後にちょっとブラッシングをしてあげたからね。ハイちゃん、ブラッシングをすると滅茶苦茶機嫌が良くなるんだよ」
「私がやったら........」
「嫌いな奴に触られて気分が良くなるやつが居ると思うのか?」
「ですよねー」
そして、朝から機嫌がとても良いハイちゃん。
週に二三回ほど、俺はハイちゃんのブラッシングをしてあげている。
これはちゃんとしたお世話であり、モスのモスモスな体を維持するために必要な事なのだ。
モスの毛は割と絡まりやすく、放置しているとゴワゴワな毛玉が出来上がってしまう。
野生のモスも、木の枝などを使ってブラッシングをするらしく、意外と綺麗好きな一面があるそうだ。
ハイちゃんはブラッシングされるのがとても好きであり、この日をかなり楽しみにしている。
毎日してあげてもいいのだが、毎日やるとそれはそれでストレスになるらしいので辞めておいた。
「........(モスー!!)」
「あはは!!機嫌がよくて何よりだよ。俺はそろそろ塔に行くけど、それが終わったらまた遊ぼうな」
「........(モス!!)」
“分かった!!”と機嫌よく腕を上げるハイちゃん。
一人暮らしをし、仕事に追われる現代人に伝えたい。
ペットはいいぞと。
でも、犬や猫はお世話が面倒になりがちで、逆にストレスとかになったりするのかな?
俺は初めてペットを飼ったのがモスだったからこそ、良かったのかもしれん。
「今日か明日には家族が増えてそうだな。この感じだと」
「オオカミ系の魔物は絶対に増えるだろうね。ムサシは侍にはオオカミって言う謎の拘りがあるし」
「........そこは鷹とかじゃないの?」
「私に言われても知らんよ。ムサシが勝手にそう思っているだけの話なんだからな」
サムライを現代で目指した男ムサシ。
彼のこだわりはよく分からない。
サムライにオオカミなの?俺の中のイメージだと、鷹とかそういう鳥のイメージが強いんだけど。
まぁ、結局は本人の自由だ。ハイちゃんやモーちゃん達と仲良くやって行ける子なら大歓迎である。
「さて、それじゃ俺は行ってくるよ。ハイちゃんにちょっかいをかけるなよ」
「分かってるよ。流石にこれ以上嫌われたくないしね」
「ハイちゃん、また後でね。いい子にして待ってるんだよ」
「........(モス!!)」
こうして俺は、ハイちゃんの元気な“行ってらっしゃい”に見送られながら、今日も塔の攻略に挑むのであった。
まぁ、この日は結果的に塔には挑むことは出来なかったのだが。
【モーちゃん】
ハイちゃんと同じくモスの魔物。性格は相手に合わせられるコミュ強であり、エレノワールに気に入られて飼われた。
モス本来の白い体を持ち、典型的なモスである。好きな事はイタズラ。エレノワールによくイタズラをするが、ちゃんと空気が読める子なのでやってはならない時には大人しくしている。賢い。
朝から機嫌の良いハイちゃんに見送られ、俺はいつものように塔へとやってくる。
毎日のように通い過ぎた為か、俺がよく使う道に屋台を構えているおっちゃんがよく挨拶をさるようになっていたり、果物屋のおばちゃんに話しかけられる事が増えていた。
少しづつこの世界に馴染めているんだなと思いつつ、塔の入口、門番がいるところまでやってくると、門番は俺を見つけて話しかけてくる。
「よぉ、ローグ。調子はどうだ?」
「いつも通りだよ。今から死ぬのかと思うと、気が滅入る」
「ハッハッハ!!そんな楽しそうな顔をされても説得力の欠けらも無いな。それはさておき、今日は塔の攻略は諦めた方がいい」
「え?なんで?」
「攻略者ギルドから連絡があってな。もしローグが塔にやって来たら、塔に入らずにギルドへ来るように伝えておいてくれと言われてるんだ」
攻略者ギルド。
俺は換金場所兼飯屋としてしか使ってないが、エレノワールの異世界チュートリアルでこの世界において無くてはならない組織であると聞いている。
素材の買取はもちろん、頭の狂った攻略者たちを取り纏める組織であり、真昼間から女を取り合って剣を抜く頭のぶっ飛んだ奴らを相手にしているある意味すごい組織だ。
もちろん、俺も所属しているし、身分証の代わりとなっている攻略者証は攻略者ギルドから発行されたものである。
「呼び出しってことか?」
「そういう事だな。なにか悪いことでもしたか?」
「まさか。俺ほど健全に生きている人間もそうはいないよ。きっと品行方正に生きてきた俺へ、賞状を贈る為の呼び出しなんじゃないか?」
「馬鹿言え。そんなくだらない事のために、ギルドが態々手間をかけるかよ。まぁ、ローグは頭がおかしいとは言っても他人に迷惑をかける訳じゃない。恐らく、仕事の依頼とかじゃないか?」
「だろうな。俺もそう思う」
と、ここで俺はバーバラが言っていた事を思い出した。
第五階層を攻略した者に対して仕事を割り振るみたいなことを言ってたっけ。その個人の実力とか、依頼をちゃんと遂行できるのかとかを確認するって言ってたよな。
攻略者ギルドとしては、その実力を把握さておきたいのだろう。
「取り敢えず行ってみるよ」
「おうよ。悪いな。態々来てもらったのに」
「お前が悪いわけじゃないさ。謝るなよ」
俺はそう言うと、今日の攻略は無理そうだなと思いつつ攻略者ギルドに向かって歩き始めるのであった。
一応、武器とか持っていくべきなのかな?まぁいいか。必要になったら取りに帰ろう。
後書き。
星1000突破‼︎ありがとうございます‼︎
一人でもローグライクに興味を持って触ってくれたら、私の勝ち。
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