少しづつされど着実に
第六階層を難なく突破し、やってきたは第七階層。
どうせ今回もここで死ぬんだろうなと思いつつ、俺はルート選択をして先へと進む。
最初のステージはホーンラビット達の樹海。
あのクソ早ホーンラビット達を相手にする上に、足元後悪い場所で戦わなければならないと言う中々に難しいステージだ。
「今回は攻撃力上昇の武器が引けなかったから、素早さの槍を選んだけど、行けるのかなこれ」
商店に並ぶ品物ももちろん全てランダムである。
つまり、狙った武器を意図的に手にする事など不可能。よって、その時に出た武器を吟味して選ぶ事となるのだ。
今回選んだのは、以前取得できなかった“軽い槍”。
効果は、この武器を装備中は素早さに補正が掛かるというものである。
実際に走ってみると、その違いがはっきりと感じられる程には、俺の足が早くなっていた。
おそらく、それなりに補正が大きいものだと思われる。
攻撃強化の槍はそこまで恩恵があったようには見えなかったし、あまり補正が大きくなかったのかもな。
それもそうか。攻撃力があからさまに高くなったら、クリア難易度がガクッと落ちるからな。
その変わり、補助系に関する補正は高くなっているのだろう。
これで鬼ごっこがやりやすくなる。
「よし行くか。3ポイント貰えるのは確定してるし、気楽に行こうぜ」
俺はそう言うと、樹海を一歩踏み出す。
今回は下ブレの配置を引かなかったのか、ステージ攻略が始まった瞬間に魔物が出てきて殺しにくるということは無かった。
と言うか、初動で殺しにくるのは本当に勘弁してくれ。
事故死が一番しょーもないんだから。
敵が強い!!(分かる)
立ち回りをミスった!!(分かる)
クソイベ引いた!!(死ね)
敵の配置後悪すぎて事故った!!(はー、しょーもな)
俺のが死んだ時の感想はこんな感じだ。
敵が強いのは仕方がない。立ち回りをミスして死ぬのも仕方がない。
でも、イベントや配置による下ブレは本当にしょうもない。
イベントはルート選択である程度のリスクは減らせる上に、上振れまくる楽しさが残されているが、事故死は本当に何も無いからしょうもない。
頼むから、初動事故死は勘弁してくれ。イベントステージ以上の運ゲー仕掛けてくるの、辞めてもらっていいですか?
「キュー!!」
「キュキュー!!」
「来やがった!!だがな、こちとらちゃんと対策は考えてあんだよ!!槍投げ!!」
ステージの初期配置に文句を言っていると、ホーンラビット2体が現れる。
見た目は可愛いくせして、全く可愛くない殺し方をしてくるこのクソうさぎへと回答は既に見つけているんだよ!!
俺は近くにあった木に背中を守ってもらいつつ、ホーンラビットを迎撃。
スキル3槍投げを使用して、牽制の一撃を放った。
「キュー!!」
「チッ、コイツら、確率で避けてくるから面倒だな。刺突!!」
動きが素早いためか確率で避けてくるホーンラビット相手に、俺は槍を突き出す。
一発目の攻撃は避けていたホーンラビットだったが、二発目は難なく命中。
俺はこのまま畳かけようとするが、それをもう片方のホーンラビットが許さない。
「キュッ!!」
「チッ、危ねぇな。お前はそこに埋まっとけ!!」
「キュー?!」
角で突撃をしてきたホーンラビットであったが、お前のギミックは知ってんだよ。
あの角、あまりにも鋭すぎて壁すらも貫通してしまうということを。
そして、その貫通した一撃によって身動きが取れなくなる事も。
だから、態々木を背にして攻撃を誘発したのだ。
角が突き刺さって、動けないんだろう?
「お前は後だ。ほら、タイマンだぞ。かかって来いよ」
「キュー!!」
残されたホーンラビットは、怯むこと無く俺に突撃。
動きは確かに早いが、流石に何十回と戦ってきた相手に遅れをとるほど俺も学習しない訳じゃない。
槍投げを使って牽制をしつつ、攻撃を仕掛けられたらカウンター。
これを徹底すれば、ホーンラビット一体程度ならば割と簡単に倒せるのだ。
「よし。これで残りはお前だけだな」
「キュッ?!」
そしてホーンラビットを倒せば残るは木に突き刺さった個体のみ。
そのフリフリとしたお尻にお仕置してやるよ!!
「死んどけや!!」
こうして、俺は無事ホーンラビット達の樹海をクリアするのであった。
第七階層第一ステージ突破。やったぜ。
まぁ、その後の第二ステージで........
「ま、待って!!それはズルじゃん!!四体同時はずるじゃん!!」
「グヲォォォォォォ!!」
オークにフルボッコにされて即死するんですけどね。
守りのオーブを持っていた都合上、少しばかり耐久量が上がって死ぬのに時間がかかったよ。
もうこれ一種の拷問器具だろ。ほんまいい加減にしろよこのゴミオーブめ。
焼却炉に投げ込んでやりた気分だ。
【軽い槍】
その名の通り、軽い槍。軽くなったことで動きやすくなり、移動速度も上昇する。それでいて、攻撃力は初期武器と同じ。
ぶっちゃけ商店で買うほどのものでは無いのだが、イベントやステージ報酬で貰えたら嬉しい武器である。
........
........
........
運ゲーはゴミ!!
目が覚める。
はいクソ。マジでクソ。
オークに追われて逃げながら戦っていたら、まさか目の前に別のオークのペアが現れるとは思ってなかった。
ホンマにクソですわぁこの試練。
敵とエンカウントしている時に乱入してくるんじゃねぇよ。
「お、今日もやってきたな。元気そうでなによりだよローグ」
「おはようバーバラ。最悪の目覚めだ」
「それは何より。攻略者にとって最高の目覚めなんて早々訪れるもんじゃないさ」
バーバラはそう言うと、お疲れ様という意味を込めて俺の頭の上にポンポンと手を乗せる。
バーバラの優しいモフモフとした手は、いつだって暖かくて心地がいい。
これがこの街の医者にして、攻略者達の面倒を見てくれている聖母の力........バーバラって結構攻略者達から人気が高そう。
「今回はどんな死に方をしたんだ?」
「オークに棍棒で殴り殺された。ちょっと体の耐久力が増していたから、死ぬのに時間がかかって最悪だったよ。両手両足の骨は完全に砕けてたね。本能的に手足を丸めてガードしていたんだど、最後にはプランプランしてたし」
「そこまで来ると痛みが麻痺して逆に痛くないよな。そして、いざ歩こうとすると歩けない。懐かしいな。足の骨が砕けてまるで動けなくなった時が。最終的に地べたを這いずり回って死に方を探したもんだ」
バーバラも昔は攻略者として塔の世界に潜っていたと言う。
バーバラもバーバラで苦しい死に方を沢山経験したのだろう。
それこそ、俺とは比にならないぐらいの。
俺は言うてまだ十数回程度。バーバラはその話から少なくとも100回以上は死んでいる。
死に方に関しては俺よりも大先輩だ。
そんな先輩欲しくは無いが。
「どうだ最近は?エレノワールのやつが良く元気を無くしているのは知っているんだが........」
「魔物を飼い始めてね。それが可愛くて仕方がないんだよ。エレノワールはその魔物にえらく嫌われて落ち込んでたね」
「ハッハッハ!!魔物にだって触られる相手を決める権利ぐらいはあるわな!!なるほど。確かにそれは落ち込みもする。エレノワールはあぁ見えて可愛いものとか結構好きだからな」
へぇ。女らしさを欠片も感じないような態度のくせに、可愛いものが好きなんだ。
それは意外だな。
「多分あの様子じゃペットを飼うよ。間違いなく」
「いいんじゃないか?賑やかになって。私も見てみたいものだ。今度見せてくれよ」
「もちろん。バーバラなら大歓迎だよ」
こうして、日常はすぎていく。
少しつづつされど着実に。
俺はこの世界に馴染み、強くなっていくのであった。
後書き。
この章はこれにておしまいです。いつも沢山のコメントありがとうございます。全部読んでるよ。
毎回毎回ボス攻略して章が終わると思うなよ‼︎ローグライクはそんな甘っちょろいゲームじゃねぇんだよ(ゲームによる。マジでゲームによる)
と、今回ローグ君がさほど進展していない事を擁護しつつ...
次回は塔を離れて初めてのお仕事回です。アレだね、ギルドからの依頼だね。頑張れローグ君‼︎
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