第六階層爆速攻略


 ムサシという男が如何に頭のぶっ飛んだ存在であったのか理解した翌日。


 俺はハイちゃんを思いっきりモスモスしてから、再び塔の世界へと向かう。


 それにしてもムサシって、この世界に来る前から頭のネジが飛んじゃった奴だったんだな。


 現代日本において電気わ水道を使わずに原始的な生活をしつつ、本物の侍を目指した犯罪者。


 人を切ってないだけマシだが、やってる事はガッツリ犯罪なのがそのヤバさを醸し出している。


 何気にムサシとニアの試練の報酬には武器が落ちると言う情報があったのに、それを忘れるぐらいには衝撃的や話であった。


 他のみんな同じように頭がおかしい生活をしていたのか?と思い、それとなく聞こうかと思ったが、リリーは大人達からも無視され、ニアは友人がいじめの主犯格であったと言っていたのを思い出してこの話をするのはやめておいた。


 あまりにも地雷すぎる。


 踏んだ瞬間、月の裏側まで吹っ飛ぶような地雷を踏む気にはさすがになれなかった。


 ならエレノワールなら行けるだろと思ったのだが、エレノワールはこっそりハイちゃんを撫でようとして手を叩かれていたらしく、シュンとして元気がまるでなかったので話しかけづらかった。


 何してんねん。


 どんだけハイちゃんに触れてみたいんだとは思うが、ハイちゃんは可愛いからね。仕方がないね。


 尚、触られそうになったハイちゃんはプリプリに怒り、俺の服の中に入って完全ガード体制を取っていたので俺としては役得だったりする。


 モスモス〜。


 可愛すぎて抱きしめちゃうよね。本当にハイちゃんを飼って良かったと思っている。


 心の底から安らげる存在というのが、ここまで素晴らしいものだとは思ってなかった。


「お、今回は3ポイント獲得してるな。やっぱり進めばその分貰えるポイントも多いのか」


 そんなこんなで戻ってきた塔の世界。


 俺は早速攻略を始めようとする前に、強化ポイントがどれほど貰えたのか確認をしていた。


 第六階層を突破した為か、貰えているポイントが多くなっている。


 今までは1か0だったのが、3ポイントまで増えていた。


 これで先に進めば進むほど貰えるポイントが多くなることが証明されたな。


 貰えるポイントは全部同じだから、死んでリセマラじゃ!!とか言う気の狂った事をやらなくて済むのは助かる。


「でも、やって見た感じ多分この強化“前提”なんだよな。強化前提の難易度だから、周回しなきゃならんのは辛いぞ」


 多分、上手くやればクリアはできるのだろう。


 しかし、それはある程度上振れを引いた上でステージの特性と魔物の特徴を理解し、武器の理解度が高く立ち回りが分かってないと無理だ。


 つまり、初見でやるなら強化は必須という事である。


「とりあえずは進めるところまで進んで、厳しくなってきたら、効率のいいところを周回するか。一周回で命一つ........安いな(感覚麻痺)!!」


 段々と命の価値が薄くなっていく。


 一回死ねばポイントが貰えるんだろ?安い安い。死んでも生き返るんだし、問題ないな!!


 エレノワールが、攻略者は自分の命を軽く見ていると言った理由がよくわかる。


 1回死ぬぐらいどうってことは無いと本気で思えてしまうぐらいには、俺の価値観と心は壊れていた。


 俺が死にたくないなと思う瞬間は、多分いい感じに攻略が進んできてからだ。


 とんでもない上振れを引いた時や、初見攻略が順調な時は命に重みが出るだろう。


 それ以外はどうなのかって?


 ただのポイント製造機だよ。


 残機無限なんだから、死にまくって頑張れ(無慈悲)。


 そんなわけで、俺は攻撃をLv2に強化。


 3ポイントがあっという間に無くなったが、これも必要経費なので仕方が無い。どうせ全部レベルMAXにまであげるんだから、深く考えても無駄無駄。


 段々と自分が壊れていく中で、俺は攻略を開始。


 最初はオークの樹海であった。


「タイマンならもう負けねぇよ。運悪く複数体を相手にでもしない限りはな」

「グヲォ........」


 オーク、撃沈。


 俺の片足をぶっ潰してくれたオークであったが、流石に慣れれば負けることは無い。


 タイマンならばという前提条件が着くが、第六階層で死ぬことはほぼないだろう。


 事故死以外。


「槍投げ槍投げ槍投げ。刺突、扇」

「ブモォォォ!!」


 オークへの対処法と、槍に対する理解度が高まったお陰で俺はかなり火力を出せるようになっていた。


 槍はとにかく槍投げをどれだけ上手く回しつつ、近距離スキルを当てられるかの勝負。


 六槍の構えを維持しつつ、上手くスキルを回せるようになってくると槍を使うのが楽しくなってくる。


 いいよね。武器やキャラへの理解度が高くなって、目に見えて火力が上がり始めた時とかちょっとテンション上がる。


 あぁ。俺は今成長しているのかというのか、ひしひしと感じられるのだ。


「はいおつかれ。ステージクリアだ」


『ステージクリア。4ゴールド獲得。素早さのポーション(小)を獲得。スキルカード報酬を選んでください』


 お、今回は運が良かったのか、ポーションまで落ちたな。


 素早さのポーション。


 その名の通り、素早さを上げるポーションだ。


 持続時間があるらしく、大体5分ほど効果が続くらしい。


 あれ?攻略中は永続で今日されるオーブの方が強くね?と思うかもしれないが、序盤のビルドが何も整ってない時には割と重宝したりする。


 まぁ、使ったことないから知らんけど。


 少なくとも、俺がやってたゲームでは、序盤のポーションバフ正義であったと言っておこう。


 ビルドが整ってない時は、アイテムの力で乗り切る。それもローグライクの数ある攻略法の一つだ。


「事前に飲んでおかないといけないのは使いづらいけど、まぁ悪くは無いな。よし次」


 俺はスキルカード報酬でスキル3の攻撃強化(小)を選択して次へと進む。


 これで槍投げのパワーがさらに上がることだろう。瞬間火力が大きくなるはずだ。


 次、アルマジロンの樹海。


 同じ樹海ステージを連続で引いたが、やることは変わらない。


 アルマジロンの動きはパターン化されているので、見間違えるとかいう馬鹿な真似をしなければ(そもそもこのステージは基本タイマン)、負ける要素などない。


「ほい」

「キュイ?!」


 アルマジロン、撃破。


 一回樹海の段差に足をひっかけて転んだが、幸いアルマジロんが居なかったので良かった。


 多少は慣れたつもりでいたが、気を抜くと転んだり突っかかったりするな。こればかりは経験でどうにかするしかない。


 どうせ何回も遊びに来るんだし、慣れる慣れる。


 というわけで次。


 報酬?普通だったよ。


「イベントは........あぁ。無難だな。下ブレないだけマシか」


 第三ステージはイベントステージ固定。ここで何が出てくるかで今後のコウリャク(考える必要があるのだが、今回は無難なスキルカードとオーブの選択であった。


 ここはオーブを選択。


 貰ったのは守りのオーブ(キングオブゴミ)であったので、とりあえず八つ当たりとして近くの木に槍をぶん投げた。


 こいつ、使い道がほぼ無いんじゃ。使えるような相乗効果を生み出すスキルカードかオーブを出してから出てこいゴミめ........ゴミめ!!(2回目)


 次、エリートステージ。


 今回は前回と同じアルマジロンのエリートステージだったので、難なくクリア。


 直角に曲がってくることさえ知っていれば、負けることは無い。


 報酬はスキル攻撃強化のオーブ(小)が引けたので、ルンルンである。


 守りのオーブと合わせたらプラマイゼロかな。


 そしてお買い物。今回も武器が売られていたので、とりあえず買っておく。


 今後重要になる。絶対に。


 その他は適当なスキルカードを買っておいた。


 スキル1のクールダウン減少(中)。これで突きが早く出せる。


 こうして、俺は爆速で第六階層を攻略するのであった。


 また第七階層で死ぬんだろうなーと思いながら。




 後書き。

 ローグ君。自分の命をポイント引換券だと思い始める。間違ってはない。

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