侍を目指した男
第七階層の攻略で敵を見間違えると言うアホすぎる死に方をした俺。
あまりにもアホすぎる死に方で悲しくなってくる。
同じ見た目とは言えど、二体しかいないんだぞ?そんな相手を見間違える程、俺の目は節穴なのか。
ちょっと自分の頭が悪すぎて心配になりつつも、バーバラのモフモフを堪能した俺はその報酬を見てちょっとニヤけていた。
報酬にあったのは、いつもの魔石や魔物の素材。そして武器。
そう。武器である。
なんとこの試練、武器がドロップしてくれるのだ。
「マジかよやったぜ。これで武器を買う手間が省けるな」
現在俺が所持している武器は片手剣のみ。
この片手剣はエレノワールに買って貰ったものであり、ほぼ使わないとは言えど結構大切に保管している。
なんやかんや身内にとても甘いエレノワール。そんな彼女が買ってくれた片手剣は、大切にしたい。
そのため、二日に一回ぐらいは手入れをするのだ。
っと、話が逸れたな。
俺はこの才能の関係上、多くの武器種を使う事になる。片手剣はもちろん、大剣や槍、更には銃やカードなど。
これらは基本的に塔が提供してくれるのだが、死ねば貰えないのが常であった。
外での仕事とかをやる際に手段は多い方がいいとして、いつかは武器を買わないとなとか思っていたのだが、ここで報酬として武器が出現。
結果、俺の金はハイちゃんの為に使えるのである。
やったぜ。
「武器を売らなかったからちょっと少なかったけど、40000ゼニーも貰えれば十分だよな。日給4万って考えたら、かなりの稼ぎだ。ひと月で120万?年収1440万ぐらいか?そう考えると、この世界は夢があるな」
冒険者ギルドで武器以外の素材を売り、無事に換金を済ませた俺は今日の稼ぎをその手に持ちながらクランハウスへと帰る。
オークの素材やアルマジロンの素材は当たり前だがゴブリンやスライムよりも高い。
いつもよりもドロップ率が低かった(報酬が少なかった)とは言えど、以前の稼ぎを優に超える稼ぎが手に入ったのである。
「ただいま」
「あ、おかえりなさいローグさん」
「今日は遅かったな。ココ最近は早かったのに」
「おかえりローグ。ハイちゃんの面倒は見ておいたよー」
「........おかえり」
「........(モスモス)」
俺がクランハウスへと帰ってくると、クランメンバー全員が出迎えてくれる。
今日はみんなでハイちゃんと遊んでたな?
ハイちゃんがこのクランハウスに来てから、メンバーの誰かが家にいることがかなり増えた。
その原因は明白で、我らが偉大なる完璧で究極のアイドルことハイちゃんを可愛がりたいのだ。
基本俺以外には懐かないハイちゃんであるが、一週間以上もこのクランハウスで暮らしているとある程度の事は諦めたのか、リリーやムサシにもそのモスモスを提供するようになったらしい。
あまり撫ですぎるとぺしぺしと叩かれて怒られるらしいが。
尚、ニアきゅんだけは許しているのか、ずっとモスモスしてても許してくれる。
男の娘ことニアきゅん。やはり強い。
可愛いは正義なんだよね。男だろうが、可愛かったら割と許されるところはある。
そして、エレノワールだけは未だに何も許されていない。
一人だけモスモス出来ないので、割とガチ凹みしていた。
さすがに可哀想だが、ハイちゃんが嫌がるなら仕方が無い。
「私決めたよローグ。私もモス飼う........」
「お、おう。いいんじゃないか?ハイちゃんの友達ができるかもしれんし、それが理由でモスモスさせてくれるかもしれんしな」
「うん。頑張る........」
ここまでテンションの低いエレノワール初めて見た。
なんて声を掛けたらいいかわからず、とりあえず適当な返事を返しておく。
やべぇ、“見て!!報酬で武器を手に入れた!!”と自慢したかったのだが、そんな雰囲気じゃねぇな。
「........(モスモス)」
「おー、ハイちゃんただいま。ごめんな。ちょっと帰るのが遅くなっちゃった」
「........(モス)」
“大丈夫。仕方がない”と言わんばかりに俺の頭の上に乗ってその細い腕で頭を撫でてくれるハイちゃん。
ふぁぁぁぁぁ!!ハイちゃんのナデナデ!!これはこれでいい!!
バーバラのように暖かく包み込んでくれるてもいいが、ハイちゃんのように優しく表面を撫でられるのも悪くない。
これがハイちゃんの魔力。自分が何をしたら俺が喜ぶのかを熟知してやがるぞこのモス。
ちなみに、ハイちゃんは本当に賢く、俺が塔の攻略を頑張っている事を知ってそのことに関しては何も言ってこない。
夜にいっぱい構ってくれるなら許すと言った感じなので、俺は夜に沢山ハイちゃんと遊んでいた。
「ところで、その槍はどうしたんだ?」
ハイちゃんのナデナデとか言う金を払っても味わえない極上のご褒美を貰っていると、ムサシがようやく槍に着いて触れる。
フッフッフ。よくぞ聞いてくれました。
遂に!!報酬で武器が落ちたのです!!
「ドロップした。報酬で初めて武器を貰えたよ」
「ほー。業物って訳ではなさそうだが、普段使いには悪くなさそうな槍だな。まぁ、業物ってかなり高いし貴重だがら、使うのを躊躇うもんだしそのぐらいが丁度いいよな」
「凄くわかる。僕もかなりいい感じの大剣とか持ってるけど、貴重すぎて使えないんだよね........壊れたらどうしようとか思っちゃうし」
「あれだな。ラストエリクサー症候群ってやつだな」
「ごめんローグ。僕古いネタは分からない........」
「悪い。俺も日本にいた時は俗世から離れた生活してたからそのネタは拾えねぇ」
わかりやすいネタを出したら、まるで分からないと返されたでござる。
マジかよ。ラストエリクサー症候群をご存知でない?
某興味無いねのファンタジーゲームに出てきたラストエリクサーと言う回復薬があるのだが、入手手段が限られており貴重すぎた為に使わずクリアする人が続出したあのラストエリクサー症候群を知らないだと?!
俺も世代ではないが、流石に言葉と意味ぐらいは知ってるぞ。
「ローグさん。基本そういうネタは私にしか通じませんよ。ニアは多少通じますが、今どきのものでないと無理です。ちなみに、ムサシさんは本当に何も知らないので諦めてください」
そんなことを思っていると、リリーが会話に入ってくる。
リリーは話が通じるから有難いな。と言うか、その歳でなんで今北産業とか知ってんの?
「インターネットが無い世界の住人なの?」
「実際そうですよ。ムサシさんは大分頭がおかしい人でして、この現代日本において山の中で原始的な暮らしをしながら刀を片手に侍を目指した人ですから」
「ごめんなんて?」
「この現代において山の中で原始的な暮らしをしながら、刀を片手に侍を目指した人」
「聞き間違いじゃなかった。何?その現代って江戸時代のことでも指してる?」
「いえ、平成です。そうですよね?」
「そうだな。電気も水道もインターネットもない生活をしてたぞ。飯はイノシシとかぶった斬って食ってた」
ムサシが大分頭のぶっ飛んだやつだという話は何度か聞いていたが、まさか現代日本において電気も水道もない中で生活している奴がいるとは。
しかも刀を持って侍を目指していた?頭どうかしてんじゃないの?
「親の遺産に山と刀があってな。ド田舎だったもんで、そこで侍の暮らしをやってたわけだ。ちなみに、刀は不法所持だったし、狩猟も免許とかいるらしいが、俺は持ってなかったからガッツリ犯罪だな」
「ま、まぁ。一般の人に迷惑をかけてないだけまだマシなのか?」
そりゃ、エレノワールが厨二病が治らなかった可哀想な奴と言う訳だ。
30過ぎで侍を目指してましたとか、ギャグでも笑えねぇよ。
後書き。
武蔵はマジのイカれポンチ。エレノトのこのタイプ。ロリショタ組は、もっと別のタイプ(体質とか人間関係とか)。
ローグ君は単純にゲーマー(ボッチ)...あれ?ローグ君が一番マトモじゃね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます