松明(ゴミ)
二度もやられたホーンラビットの洞窟ステージの攻略方法を見つけ、無事に次のステージに進めた俺は、イベントステージにて新たなるオーブを獲得した。
その名も“松明の加護”。
正直、これだけではなんの効果があるのか全く分からない。
今後重要なスキルオーブとなるのか、それともクソみたいなゴミを掴まされることになるのか。
どうせ死ぬからいいかと言う考えの元、情報を得るために取ったこのオーブ。
俺は早速その効果を確認し、困り果てる事となった。
「なにこれ。まるで説明になってないじゃん........」
松明の加護の説明はこうであった。
“松明の加護が肉体に宿る”
これだけである。
いや流石に分からんて。その松明の加護とやらが何か知りたいのに、加護の内容がまるで記載されていない。
これはね、流石にやってますよ塔君。
あまりにもアンフェアじゃないか?もう少し情報を寄越せよ馬鹿野郎。
細すぎる使用を長々と説明されるのも理解できなくて困るが、ここまで簡潔すぎる説明はもっと困る。
結局、次のステージで色々と試してみるしかないじゃないか。
「こういう時こそ攻略Wikiが欲しいよな........なんだよ松明の加護を得るって。頭でも燃えんのか?」
何一つ説明してくれない不親切な説明に文句を言いつつ、俺は諦めて次のステージに足を踏み入れる事にした。
分からないのであれば、実験して試してみるしかない。
頑張れ俺。何度死のうが、どうせ死なないのだから残機(無限)を減らして情報を得るのだ。
そんな訳で、俺は次のステージへと向かう。
次のステージはアルマジロンの樹海(エリートステージ)。
第一の試練でも何かと苦戦を強いられた、エリートステージである。
多分ここで俺は死ぬ。
そんな予感が頭の中によぎりながらも、今後のためには必ず超えなければならないステージなので頑張るとしよう。
「やっぱり空は赤黒いんだな。洞窟ステージとかどうなるんだろう?洞窟全体が赤黒くなるのかね?」
第一の試練の時と同じく、空が赤黒くステージ全体が少し見にくくなっている。
視界的なデバフの付与と、魔物の強化。
これがエリートとステージの特徴だ。
とは言っても、視界に関しては慣れればどうということは無い。
俺は槍をグッと握りしめると、ここが自分の死に場所だと覚悟して一歩を踏み出した。
『第六階層第四ステージ“アルマジロンの赤樹海”。クリア条件、全ての敵の殲滅』
赤く染った樹海の中、俺は周囲を警戒しながら歩き始める。
単純な敵の強化なのか、それとも新しい攻撃手段を持った魔物がで来るのか。
そんな不安と期待に駆られながら、俺は先へ先へと進む。
「いた。やっぱり魔物も赤黒いな」
しばらく進むと、赤黒い甲羅を身につけたアルマジロンの姿が現れる。
まだこちらに気がついていない。ならば、先制攻撃を仕掛けさせてもらうとしよう。
六槍の構えは既に発動済み。槍投げを使ってストックを消費しても、すぐに武器の補充はできる。
「槍投げ」
「キュ」
全力投球された槍は、アルマジロンの甲羅を貫かんとその刃を向けるが、強靭な甲羅に守られたアルマジロンにはあまり意味が無い。
しかし、ダメージは多少なりとも入ったはず。
攻撃されたアルマジロンはこちらに気がつくと、素早く体を丸めて突進を開始してきた。
明らかに通常の個体よりも動きが早い。
全体的な能力値の強化がこのエリートステージの内容かな?
「まぁ、多少離れてるから避けるのは簡単なんだけどな」
俺はそう言いつつ、人間でボーリングを始めるアルマジロンの攻撃を回避。
攻撃を避けた後には必ず隙ができる。だから、ここで一撃かましてやろう。
そう思った矢先、アルマジロンの動きが変わった。
バシン!!と地面を叩くような音が聞こえると共に、アルマジロンが直角に曲がって進路を変更。
攻撃を避けたはずの俺の方に向かって再度突進をしてきたのである。
「........は?ゴフッ!!」
「キュ?キュー!!」
通常個体よりも能力値が高いだけだと考えていた俺は、この一撃を避けることが出来なかった。
体の反応が一瞬遅れ、思いっきり身体に衝撃が走る。
当たり所が良かったのか、腹を全力で殴られたような感覚だけで済んだのは僥倖だ。
基本一撃食らったら即死の俺の紙耐久でも耐えられたのは、奇跡と言っても過言では無い。
「ゴホッ、ゴホッ........回復しないと........」
「キュー!!キュー!!」
早く回復しないと死ぬ。
俺はそう思い、回復ポーションを取り出して急いで飲む。
そして、追撃が来てもいいように突撃してきたアルマジロンの姿を確認すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
2発目が来ないとは思っていたが、まさか燃えているとは。
アルマジロンの体が、何故か燃えている。
炎に晒されたアルマジロンはもがき苦しみながら何とか炎を消そうと足掻き、暫くすると炎が消えてアルマジロンはホッとしたような表情を浮かべる。
俺もこの隙に無事回復が完了し、勝負は仕切り直しになった。
「なんで燃えてたんだ?アルマジロンが突撃すると、体が燃える仕組みなのか?」
「キュー!!」
「うん。違いそうだな」
“違ぇよカス”と言わんばかりに突撃してくるアルマジロン。
あの元気の良さを見るに、多分アルマジロンが自ら燃えた訳ではなさそうだ。
となると、俺が原因で燃えたことになる。
あぁ。あれか。
俺には思い当たる節があった。
つい先程のステージで獲得した松明の加護。あれが発動したのだと考えれば辻褄が合う。
おそらく効果は、攻撃を受けた時に相手に炎ダメージを与えるもしくは、火傷を付与するとかそんな感じのものなのだろう。
確率なのか、確定なのかは分からないが、少なくとも攻撃を食らったら相手の身体を燃やすのは間違いなさそうである。
うんうんなるほど。相手の攻撃に対してダメージを受けると反撃ダメージの付与。
使い方次第ではとても化けそうな能力だな。
俺が基本一撃で死ぬという紙耐久である事を除けば。
「使えねぇじゃねぇか!!このクソオーブゥ!!」
「キュー!!」
俺は突撃してくるアルマジロンに八つ当たりをするかのように槍を突き刺しながら、叫ぶ。
使えるわけねーだろ!!この試練はゲームじゃねぇんだよ!!
相手の一撃を貰ったら大体死ぬんだよ!!ゲームオーバーなんだよ!!
万が一の保険にすらならないじゃないか!!今回みたいなラッキーパンチでもない限りは、ほとんどの確率で死ぬしかないんだよそれはよォ!!
「それと、おめェもサラッと方向転換してんじゃねぇよ!!やるにしても緩やかにカーブしてこいや!!ボーリングの玉が直角に曲がったら、それは最早チートなんだよ!!」
「キュ?!」
んな理不尽なと言いたげに声を上げるアルマジロン。
サラッと直角に曲がってきたお前もお前だぞコラ。避ける選択肢が無くなって、迎撃するしかないじゃないか!!
そんなことを思いながらボコスカにアルマジロンを殴り続ける俺。
アルマジロンの突進は、攻撃を当てる事で止まるのは検証済みなので対処できるが、それでも初見時の理不尽さは変わらない。
お前も死んどけ!!使えないオーブを掴まされてこちとら、イラついてんだよ!!
次から取る事は無いだろう。二度と使うもんか。
俺はそう思いながら、このエリートステージの攻略を頑張るのであった。
【松明の加護】
ちょっと特殊なオーブ。イベントでのみ獲得が可能であり、効果は“自身が攻撃を受けた場合、確率(15%)で相手に炎の反撃を与える”というもの。
ぶっちゃけ実用的では無いが、このオーブには秘められた力が存在している。
後書き。
イベントをもう一つ踏むと、真価を発揮するタイプのオーブ。
あるよね。運ゲーイベントの癖に、何故か二つイベントを踏む事を強制してくる奴。
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