うさぎ×洞窟=死
はい。ウサギ如きに敗北したクソザコナメクジことローグ君ですよ。
いや、洞窟ステージが普通に理不尽だろこれ。運が悪いと普通に死ねるんだが?
ホーンラビットの洞窟ステージで爆速で死を遂げた俺は、ハイちゃんをモスモスした翌日塔の世界に足を踏み入れていた。
ステージはまたしても同じホーンラビットの洞窟。
リベンジマッチだこのやろう。俺はウサギより強い........多分。
洞窟ステージは踏まずに進む方法も考えるには考えたが、苦手を作っておくと後々後悔するのは火を見るより明らか。
ローグライクに限らず、ゲームは勉強とさほど変わらないのだ。
知識を身につけ、実践し、できる限りの苦手を無くしてあらゆる状況に対応できるようにする。
これが出来るのとできないのとでは、クリア率ももちろん変わってくる。
エリートステージならばともかく、通常ステージで苦手を作るのは最早ローグライクをクリアする気が無いと言われても仕方がないのだ。
「一応ポイントを振って素早さをひとつ上げておいたけど、多分爆速で殺されるんだろうなぁ........普通にホーンラビットが強いし、何より挟み撃ちされたらきつい」
塔に入る前。俺は前回の攻略で得た強化ポイントを素早さに割り振り、素早さLv1を獲得しておいた。
確かに気持ち足が早くなった気がするが、Lv1程度で世界が変わるほどのものでは無い。
が、割り振らないよりはマシだろう。
このポイントの割り振りも性格が出るよな。満遍なく取る人と、ひとつに絞って上げまくる人で別れる。
俺は、ポイントが安いうちは全部を満遍なくあげておいて、ポイントがきつくなり始めたら1つに絞るタイプだ。
この塔の試練は攻略Wikiなんてものは無いので、正解はないだろう。
どうせ最終的に全部取得するしな。
「キュー!!」
「おいでなすった。昨日はよくも俺の腹に穴を開けてくれたなコノヤロウ。自分の腹を覗いたら、向こう側が見えたのは初めてだぞ」
若干足場の悪い洞窟の中を歩いていると、昨日俺を殺してくれたホーンラビットが姿を現す。
ホーンラビット。
額に一本の角を生やしたウサギであり、大きさはウサギよりも少し大きい程度。
見た目は確かに可愛いのだが、その見た目に惑わされてはならない。
強靭な足から放たれる突進は、アルマジロンの転がりとは比べ物にならないほど早く、タイミングを合わせて攻撃を仕掛けるなんてことは普通に無理なのだ。
昨日、初見で戦った時はその素早さに驚いたものだ。避けるのが精一杯で、反撃も上手くいかず、モタモタとしている間に挟まれてぶっ殺されたのである。
痛かったなぁ........胃に穴があく(物理)を体験するとは思いもしなかった。
強すぎだろこのウサギ。
「キュっ!!」
「っ!!危ねぇ!!」
ホーンラビットの突進。
俺はその一撃をギリギリの所で躱すと、素早く後ろを向いてスキル1刺突を放つ。
かなり素早い動きで捕らえずらいホーンラビットだが、明確な隙を晒すタイミングがある。
それが、角で突進した後。
いわゆる、攻撃の後隙である。
某モンスターをハントするゲームなんかではよく聞く単語だが、攻撃したあとは必ず後隙が生まれる。
その隙を狙って殴れ。それが戦いの基本だ。
ゴブリンやスライムとやり合っていた時も、できる限り後隙には攻撃していたしね。
ありがとうモ〇ハン。狩り基礎はお前で学んだよ。
槍の先端がホーンラビットに突き刺さる。
しかし、この程度で死ぬほどこの魔物はヤワじゃない。
お尻を突かれたホーンラビットは、“キュっ!!”と痛みに跳ね上がったあと即座に反転して俺の体に穴を開けようとしてきた。
「これが厄介なんだよ!!攻撃までの間が早い!!」
俺は突いた槍を素早く引き戻しつつ、身体を傾けてホーンラビットの一撃を躱す。
そして、今度はスキル2扇を放って確実にホーンラビットにダメージを与えた。
ホーンラビットの最も厄介な点は、この攻撃速度。
一発でも攻撃を食らったら即死するようなクソゲーにおいて、このとにかく攻撃間隔が早いというのは脅威以外の何物でもない。
ちょっとでも油断すればあら不思議。俺のお腹にトンネルが開通してしまうのである。
強すぎるだろこの魔物。正直、オークやアルマジロンよりもやりづらい。
それどころか、第一の試練にでてきた中ボスよりもやりづらい。
素早さは正義。速さこそが勝負を決める。
「槍投げ!!」
「キュー!!」
三度目の攻防。
俺は槍を投げてホーンラビットのお尻を突き刺し、ホーンラビットが悲鳴をあげながら絶命する。
ホーンラビットの唯一の弱い点はその耐久力。速さを求めるがあまり、肉体はそこまで頑丈ではないのだ。
大体スキルを3つぐらい当てたら勝てる。
強化しまくったらその内一撃で倒せそうだな。
「フゥ。ホーンラビットが1番やりづらいな。今の所1番やりやすいのはアルマジロンだわ。あいつは隙も大きくて攻撃も避けやすい。優良魔物だな。オークは........武器を奪ってくるやらゴミだ」
ウサギよりも、オークよりも、アルマジロの方が戦いやすい。
こんな事を言ってんのは世界で俺だけだろ。
そう思いながら、俺は先に進もうとしてドン!!と背中に衝撃が走る。
........昨日もやったぞこれ。あぁくそっ、最悪だ。
「ゴフッ........」
「キュー!!」
胸の辺りに視線を落とすと、そこには何やら尖ったものが生えている。
角だ。
ホーンラビットの持つ鋭い角だ。
背中をぶっ刺し、胸を貫通して角がコンニチハしてきている。
昨日も似たような死に方をした。少しは学べよ俺。
洞窟ステージの最も驚異となる点。それは、入り組んだ道でありながら、背後を取られやすいという点にある。
多分、ステージ全体がそこまで大きくないのだろう。適当に動いているだけで、相手の背後を取れてしまう。
樹海ステージを見習えバカが。あっちのステージは滅茶苦茶広いし、何より道が固定されてないから自由に移動出来て接敵しにくいんだぞ。
樹海よりも狭く、決められた道しか進めない洞窟ステージ。
しかも、遺跡と違って背後を取りやすい。
さらに、攻撃速度が早いホーンラビットが合わせると慣れてない俺がこうもあっさりと死んでしまうのだ。
「........く、そ........が」
段々と手足の感覚がなくなっくる。血がボタボタとこぼれ落ち、気がつけば俺の足元には血の池が形成されていた。
力が入らない。痛い、苦しい。
あぁ。そろそろ死ぬ。
こうして、俺はかなりあっさりと死ぬのであった。
ほんま、覚えとけよクソうさぎ。
お前の攻略法が分かったら、とっ捕まえてそのお尻をペシペシしてやるからな。
【オーク】
ゴブリンに並ぶ異世界の定番魔物。太っているため動きが鈍いと思われがちだが、その肉の殆どが筋肉であるため想像以上に足が早い。
太ってデカくなっただけのゴブリンなんて言うものも居るが、そんなことを言うやつはオークで死んだことがないんだなと初心者として見られる。
ローグのペットとなった癒し枠事ハイ。
彼女はモスの中では異質な灰色の毛並みを持った姿をしている。
そんな彼女は主人であるローグ以外にも、面倒を見てくれる者がいる。
爆殺魔エレノワール、侍ムサシ、恐怖の呪縛リリー、大剣少女ニア。
ローグのクランメンバー達は、ハイの可愛さにやられてとにかくハイと触れ合ってみたかった。
「ハイちゃーん。ほら、ご飯ですよー」
「........(モスゥ)」
「すっごい嫌そうな顔をしてますね........」
「凄いな。ここまであからさまに嫌そうな顔ができるんだな」
「エレノワール、ハイちゃんが嫌がってるよ」
その中でも特にハイの事を可愛いと思っているエレノワール。
彼女はハイにご飯をあげようとするのだが、心の底から嫌そうな顔をされてしまう。
ハイは人に懐かない。唯一懐いたのは、あのローグだけなのだ。
「........私、そんなに嫌われるような事した?結構本気でショックなんだけど」
「ま、まぁ。魔物にも向き不向きがあるんだろ。そんな落ち込むなよ」
「そ、そうですよ。ちょっと相性が悪いだけですって」
「泣きそうな顔をしないでエレノワール」
そして、毎回ガチ凹みする。いつもならば煽るムサシですら、気を使ってフォローに回る程には、エレノワールは凹んでいた。
これがローグの居ないクランハウスの日常であった。
後書き。
ウサギに2回も負けるクソ雑魚ナメクジローグ君(ウサギは普通に強い模様
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