パターン解析


 槍の性能をある程度理解した俺は、槍投げに使った槍を回収してステージ攻略に取り掛かる事にした。


 ちなみに、投げた槍を回収すると、六槍の構えの槍の数が増える。


 やはり、槍はこの構えをどれだけ上手く維持できるのかが大切になってくるのだろう。


 構えに時間制限は無さそうだから、槍投げをどれだけ上手く使えるのかが大切かもしれない。


 何気に槍投げのクールタイムって存在してないしな。


 五連射した後構えで再補充とができると考えると、色々なコンボがありそうだ。


 ストックの維持と管理が重要になる武器種と言える。


 アレかな。同じようにストックが重要になる武器種とかがあって、その中でも槍が1番管理が簡単だから初心者用武器に分類されているのかな?


 そう考えるとこれが使えなかったら、そのほかの武器種もまるで使えないという事になる。


 ちゃんと使いこなせるように頑張らねば。


「意外と明るくて視界が取れてるのは有難いな。廊下も結構広いから、槍も振り回せるし」


 槍の性能確認もそこそこに、ステージ攻略を開始する俺。


 相手はアルマジロンとか言うなんの捻りもない名前をした魔物であったが、俺の想像する魔物と同じなのだろうか?


 そんな事を思いながら歩いていると、廊下の向こう側から勢い良くこちらに向かってくる存在が一つ。


 ボールのように丸まって突っ込んできたそれは、どう見てもアルマジロであった。


「まんまじゃねーか。いや、アルマジロンって名前で他の動物が出てこられても困るんだけどさ」


 大きさは約1m程。凄まじい勢いでこちらに転がってくるアルマジロンは、俺のことが見えているのか少し軌道を変えてこちらに突っ込んでくる。


 なんというか、ボウリングのピンになった気分だな。


 俺を倒せばストライクってか?


「槍の強さ、見せてもらうぜ。刺突!!」

「キュイ!!」


 スキル1刺突でアルマジロンを迎え撃つ俺。


 六槍の構えの状態であるため、ほかの槍も連動して突きが放たれる。


 まぁ、横一列に並んでの突きの為、俺が手に持った槍しか当たってないが。


 槍に貫かれたアルマジロンは思っていた以上に可愛い声を上げながら、丸まった状態を解除。


 四足歩行に戻ると、一旦俺から距離をとる。


「........ゴブリンやスライム見たいに脳死で戦ってくれそうな訳じゃないな。多少は頭を使ってきそうなのが厄介だ」


 俺はそう言うと、槍を構えて静かに相手が突っ込んでくるのを待つ。


 まだ囲まれてないからこうして余裕を持って対処できるが、階が進む事に魔物の数は多くなる。


 囲まれた時がヤバそうだな。波状攻撃とか仕掛けられたら対処がかなり難しそうだ。


 やっぱり、通常攻撃がちゃんと使えるようにならないとダメだよなぁ。


 今度、通常攻撃縛りで第一の試練を攻略してみようかな。それでクリアできるようになったら、大分上手くなると思うんだ。


 そんなことを思っていると、再びアルマジロンが突っ込んでくる。


 転がるしか覚えていないのか、地面を強く蹴ると丸まってこちらに突進を仕掛けてきた。


「クールタイムは上がってんぞ!!刺突!!」


 再び迎撃を試みる。


 先程ならば突っ込んできたその一撃に対して俺も一撃は確実に当たっていた。


 今回も当たると思っていた。


 しかし、この第二の試練からは魔物もかなり学習するらしい。


「キュイ!!」

「はぁ?!そんなのありかよ!!」


 俺の槍がアルマジロンを貫く寸前、アルマジロンはなんと飛び上がってその一撃を回避したのである。


 いや、いやいやいや!!そんなの聞いてないって!!


 俺も攻撃を避けるのだから、魔物だって攻撃を避けてくるのは当然だ。


 しかし、いきなりすぎたその一撃はあまりにも衝撃的であったのは間違いない。


 俺は慌てて横に飛び退くと、つい先程までそこにいた場所にアルマジロンが落ちてくる。


 ドゴォン!!


 一体どんな風に着地したらそんな音が鳴るのか。


 僅かに地面が凹むレベルの攻撃を繰り出してきやがったぞこいつ。


「急に難易度上がりすぎだろ。知能指数高すぎるって」


 俺はそんなことを言いながら、今の攻撃にどう対処するべきなのか考えていると、アルマジロンが四足歩行状態に戻........もど........ん?


「キュ........キュー........」

「えぇ........」


 また突進してくると思って身構えていると、アルマジロンは仰向けになってジタバタとしていた。


 アルマジロン、地面を凹ませてしまったが故にそこにハマってひっくり返れない。


 知能指数が高いとか言ったけど訂正。この子、おバカな子だ。


 背中から落ちた時に考えなかったのかよ........


 ジタバタジタバタと足を動かし、何とか元に戻ろうとするアルマジロン。


 なんだろう。急に可愛く見えてきたぞこいつ。


「これ、優しく戻してあげたら仲間になったりとかしないのかな........いや、多分無いだろうな。塔の中だし」


 なんかちょっと可哀想で、戻してあげようかとも考えたが、ここは塔の中であり試練の最中。


 例えこちらが優しくしてあげたとしても、アルマジロンは俺に敵対してくるだろう。


 と言うか、多分これがアルマジロンの行動パターンなんだろうな。普通に丸まって突っ込んでくる攻撃と、飛び上がって押し潰してくる攻撃。


 後者は隙が大きい代わりに、火力が高いと見た。


「ボス格はともかく、ザコ敵はほぼ同じ攻撃しかしてこなかったから攻撃パターンが用意されている時点で難易度が上がってんな。突進と飛び掛りの二種類か。他には無いのか?」

「キューキュー........キュー!!」


 アルマジロンを観察していると、ようやく仰向け状態から脱出したアルマジロンが再びこちらを見つめる。


 いや、そんなキリッとした目でこっちを見てももう無理があるから。仰向けになっておっちょこちょいな所が赤裸々になってたから。


 復帰するまでに約15秒ほどかかっていたのを見るに、あの攻撃を避けられたら俺の勝ちと考えていいだろう。


 問題は多数に囲まれた時にちゃんと避けられるかだが。


「キュー!!」

「次はどっちだ?」


 3度目の突進。


 どちらの攻撃なのか見極めようと違いを探すが、まるで分からない。


 このまま行くとぶつかるので迎撃させてもらうとしよう。もし避けられた時の対処も一応考えてはいるしな。


「刺突!!」

「キュイ!!」


 ガン!!と槍とアルマジロンがぶつかる。


 お、今回は飛び上がらなかった。


 ここから考えられるのは二つ。


 1つは行動が完全ランダムであると言うこと。


 もう1つはある程度のパターンが決まっているという事。


「検証してみるか。この階層でしばらくお世話になるんだし、お前の挙動を見ておかないとな?囲まれたらやばいけど」

「キュイ!!」


 4度目の突進。


 俺は同じように刺突で迎撃しようとするが、アルマジロンはそれが分かっているかのように飛び上がる。


 俺ももう初見では無いので、冷静にその一撃を避けた。


 ドゴォン。


 そして、背中から着地してひっくり返る。


 ジタバタしてるのなんか可愛いな。見た目もちょっと可愛い部類だから、余計に愛らしさがある。


 はい次。


 突進。


 次。


 飛び掛り。


 次。


 突進。


 次。


 飛び掛り。


 とりあえず10回ほど繰り返して挙動を確認してみたが、ここまで来ればいやでも分かる。


 こいつ、突進と飛び掛りを交互にやってくるな。


 ランダムで動かれてたら厄介だったが、これなら攻撃が予測しやすい。


「扇」

「キュイ!!」


 11回目の攻撃。


 アルマジロンが突っ込んでくるので、俺は扇で薙ぎ払ってアルマジロンを吹き飛ばす。


 挙動は大体わかった。これでアルマジロンにタイマンで負けることは無いだろう。


「それにしても、5回ぐらい殴らないと倒せなかったぞ。固くなりすぎじゃないか?」


 俺はそう言いながら、残りのアルマジロンを探しに祠を歩くのであった。



 後書き。

 アルマジロン、可愛い。ちなみにペットショップにもいる。

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