第二の試練へと挑む俺は、片手剣と大剣以外の武器種を試してみようと言うことで、残りの8つの中からどれがいいのか悩んでいた。


 武器種は全部で10種類。


 片手剣と大剣を除けば、残っているのは双剣、槍、鎌、メリケン、弓、杖、拳銃、カードである。


「遠距離攻撃系も使いたいけど、なんか難易度が高いんだよなぁ。無難に使いやすいっておすすめされているやつから使っていくのが無難なのかな?」


 片手剣と大剣は、この塔におすすめされて使っていた武器種である。


 実際、癖もなくかなり使いやすい武器であったのは間違いない。片手剣に関しては通常攻撃込みでの火力を想定しているのか、若干火力不足が目立ったが。


 そして、この二つの武器種と同じくオススメされていた武器がある。


 それが槍だ。


 とりあえずおすすめを使ってみて、手に馴染まなかったら諦めればいいか。


 どうせ暫くは捨て回になるだろうし。


 という訳で、俺は槍を選択し、そのスキルを確認する。


 槍のスキルはこんな感じになっていた。


 ─────────


 槍


 リーチと攻撃範囲(前方向)に優れた武器。片手剣同様使いやすいが、狭い場所だと最大限の力を使えず移動スキルが無い。


 スキル1 刺突

 魔力消費極小

 クールタイム極小

 貫通力が高い突き。前方向に強いが他がカバーできない。


 スキル2 扇

 魔力消費極小

 クールタイム小

 扇状に槍を薙ぎ払う。


 スキル3 槍投げ

 魔力消費なし

 クールタイムなし

 槍を投げる。投げた槍は敵を貫通し突き刺さり、自分で回収しなければならない。


 スキル4 六槍の構え

 魔力消費極大

 クールタイム大

 5本の槍を出現さる。対応したスキルに連動する。スキル3を使用した場合、槍の本数を減らすことで補充可能。


 ─────────


 随分と大きくスキルの中身が変わったな。


 片手剣と大剣は似たようなスキル構成になっていたが、槍はこのふたつの武器種とはスキル構成がかなり大きく違っている。


 特に目を引くのは、スキル4の“六槍の構え”だろう。


 5本の槍を出現させ、対応したスキルに連動する。


 正直、どのような挙動になるのか分からない。


 出現した5本の槍は俺が持たないといけないのか?


 俺は背中から腕が生やせるような星の人じゃないんだけど。


「ここら辺は使ってみれば分かるか。それよりも、ブリンクスキルが無いのが意外と困るかもな........」


 そしてもう1つ槍のスキル構成で特徴的なのが、ブリンクスキルが無いという事である。


 ブリンク。要は移動。


 大剣や片手剣のスキル1に設定されていたシールドバッシュや破壊突進のようなスキルの事を、ブリンクスキルと呼ぶ。


 攻めにも逃げにも使える優秀なスキルであり、立ち回りをミスってもある程度のカバーが効いていたのはこのスキルのお陰と言っても過言では無い。


 それが無くなると言う事は、更に立ち回りは意識して戦う必要があるという事だ。


「ブリンクスキルに慣れすぎてるとヤバいかもな。ほかの武器種にも移動系スキルがないやつは絶対にあるだろうし、早めに慣れておくと言う意味でも大切か」


 暗に塔が“ブリンクスキルに頼りすぎてんじゃねーぞ”と言っている気がする。


 はい。すいません。確かにブリンクスキルに死ぬほど頼ってました。


 今からでもこれは改善した方がいい。ブリンクに慣れすぎると、それ前提の立ち回りを無意識にしてしまって痛い目を見る。


「よし、スキルの確認おしまい。要は、突いて、薙ぎ払って、投げて、なんか増えるって事だな」


 俺はある程度スキルの確認を終えると、第一ステージを始める。


『第六階層第一ステージ“アルマジロンの祠”。クリア条件、全ての敵の殲滅』


 へぇ、ここは第六階層扱いになるのか。って事は、この第二の試練を攻略したら10階層を突破したということになるのかな?


 そんなとこを思いつつ、俺は敵の配置を確認。


 取り敢えず視界に魔物は居ないな。初動事故死とかは無さそうだ。


 場所は人の手が入った石造りのような建物であり、そこそこの広さがある。


 そして、廊下のようなものがいくつか見えるので、その先を行けという事なのだろう。


 第一の試練のように、青空の元で暴れるのではなく、完全に室内での戦闘であった。


 逃げ回りながら戦うのも難しそうだな。逃げる道を間違えて袋ネズミになり、タコられる未来が見える見える。


 これ、祠のステージもランダム生成なのかな?だとしたら、記憶ゲーが始まるんだけど。


 そんな事を思いつつ、俺は一旦武器とスキルの確認に入る。


 まだ敵が来ていない内に色々と確認しておかないとね。


「槍って意外と重いんだな........でもその分射程は長い。飛斬系のスキルカード無しでもこの射程が出るのは魅力的だ」


 槍は大体2m程であり、かなり大きめの槍となっている。振り回すのにそこそこの筋力がいるが、大剣ほどでは無い。


 上から下に叩きつけるだけでも相当な威力が出るだろう。戦国時代よりもさらに昔から、槍の有用性は認められている。


 上から下に振り下ろすだけで人を殺せる武器。それが槍なのだ。


「刺突!!」


 俺は試しにスキルを使ってみる。


 スキル1刺突を使ってみると、熟練の兵士のような鋭い突きが放たれた。


 おぉ!!やっぱり初めて使うスキルはちょっと興奮するな。


「扇!!」


 次にスキル2扇。


 扇状に薙ぎ払う動きと共に、槍が風を切る。


 凄まじい速度の一撃だ。少なくとも、スキル補正無しに俺が同じ動きをしても絶対にこんな威力は出ない。


「槍投げ!!」


 スキル3槍投げ。


 槍の中央部を持ち、思いっきり投げ飛ばすスキル。


 威力はもちろん、その速度も一級品。凄まじい速度で飛んで行った槍は、なんと石の壁に突き刺さった。


「なるほど。それで使用した槍は自分で回収しましょうねって事か。自動で戻ってくる機能はついてないんだな」


 説明にあった通り、投げた槍は自分で取りに行かないといけない。


 しかし、槍を投げて相手にダメージを与えられる遠距離スキルがあるのは結構嬉しい。


 今まではスキルカードで取得する以外に手段がなかったからなぁ........


 これで少しは遠距離攻撃持ちの敵に対して強く出られるようになったわけだ。


 残弾一つしかないけど。


 俺は槍を回収すると、最後のスキルを使う。


「六槍の構え!!」


 ごっそり魔力が持っていかれる感覚が身体を襲いつつ、スキルが発動される。


 すると、俺の後ろに光輪のように五本の槍が現れた。


 空中に浮かぶ槍。槍は俺の後ろを追従して動き、決して離れることは無い。


 色々な動きをしてみたが、槍が置いていかれることは無かった。


「良かった、俺が全部手に持って使うタイプだったら困ってたよ。んで、これがスキルと連動するって話だよな?」


 という訳で、刺突を使ってみる。


 ビュッ!!と鋭い突きが放たれるが、最初に使った刺突とは大きく異なる部分がある。


 それは、俺の後ろに着いてきていた槍もいつも間にか一緒になって突きを繰り出しているのだ。


 横一列に並んでの突き。なるほど?何となく使い方が分かってきたぞ。


「扇」


 スキル2を発動。


 すると、またしても槍は俺の横に並び、全てが扇状に槍を振るう。


「槍投げ」


 槍を投げてみる。


 しかし、投げれた槍は俺が持っていた槍一つのみ。その変わり、俺の背中にあった槍の1つが消えて俺の手の中に収まっていた。


 はいはい。なるほど。なるほどね?


 この状態になると、攻撃範囲が広くなる上に、槍投げのデメリットを消せるわけだ。


「........つまり、どれだけこの六槍の構えを維持しながら戦えるかと言うのが大事になってくるって訳だな?ところで、この構えに時間制限とかあるの?」


 俺はそう言いつつ、早く槍を使ってみたくてワクワクとするのであった。




 後書き。

 ストック管理系の武器の中では簡単だから、初心者枠。尚、ちゃんと火力を出そうとすると結構むずい。

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