モス
ペットが欲しいと言ったら、みんなペットが欲しくなってクランメンバー総出でフーロの店にやってきた。
前の世界ではペットを飼った事がないだけに、俺はちょっとペットを飼うのが楽しみである。
ちゃんと面倒を見てやらないとな。
「それで、ローグはどの子にするんだ?」
「昨日色々と話して二つに候補を搾ったよ。俺は攻略者だから、お世話が簡単でモフモフな子を選ぼうと思ってね」
「攻略者がペットを飼うとなると、どうしても世話をする時間が短くなるからな。いい判断だと思うぞ。それで、どの子が候補なんだ?」
「モフットとモスだね。どっちも可愛いし」
「おー、定番系からは大きく逸れるが、一部の層からは熱狂的に愛されている子達だな。確かにお世話もそこまで必要ないし、攻略者にとっては世話をしやすい子だと言える。後、触り心地が神」
「分かる」
俺が候補に上げたのは2種類。
一つはノソノソと動く丸々とした魔物モフット。
マリモのような見た目をした魔物であり、大きさはだいたい60cmほど。重さも大して重たく無く、抱き抱えてあげるととてもモフモフで気持ちがいい。
緑色の毛は森の中で保護色となり、身を隠せる。
雑食でなんでも食べるらしいが、フーロが調教した子は人を襲わないように草食を好んで食べる子になっているそうだ。
排泄はそもそもしないタイプの子であり、餌を与えておけば基本はOKらしい。
好む環境は自分のおなじ緑色が溢れている場所。どうやら自分が隠れていると言う安心感が欲しいらしく、緑色の所に行くと落ち着くらしい。
そして、もう一体の候補がモスという魔物。
この子は蚕の成虫を大きくしたような見た目をしており、モフットと同じく丸々としている。
意外と活発的な子であり、気に入った相手には積極的に甘える行動を取るそうだ。
昨日もフーロの近くに行っては、可愛らしく手を広げて甘えてしたしな。
俺も何故か気に入られたのか、近くにやってきて背中に張り付く子がいた。
大きさはだいたい30~40cmほど。モフットよりも少し小さいが、その分モフモフ感が凄く、顔を埋めるといい匂いと共にそのモフモフが味わえる。
モフモフというか、モスモス。
モフッよりもモスッって感じ。
え?違いが分からない?まだまだだね。
この子も排泄をしないタイプの魔物であり、そこら辺の草を食べさせるだけでいいと言うお手軽ペットである。
変わりに環境だけは用意してやらないとダメで、落ち着く場所を作ってやらないといけない。
モスの場合はこの落ち着く場所と言うのが個体によって大きく異なるらしく、好みをつけるのがかなり難しいそう。
しかし、一度好みを見つければ後は簡単なので、それまでは色々と試してあげるのがいいそうだ。
「どっちがいいんだ?」
「どっちもいいんだよねぇ。でも、いきなり二匹も飼うのは無理だし、悩んでる最中」
「そっか。ならしっかり悩むといい。なんなら、裏で触れ合うか?」
「いいの?!」
「いいぞ。ローグはどっかのバカと違って店を吹っ飛ばしたりしないからな」
普通は店を吹っ飛ばしたりしないんだよ。
比べる対象がいくら何でも酷すぎる。俺とあのテロリスト予備軍を一緒にしないでくれ。
「何?ふれあい広場とかあるのか?」
と、俺とフーロが話しているとエレノワールが会話に入ってくる。
エレノワールは前科がある為か、下手に動き回らないようにフーロに首根っこを掴まれていた。
「あるぞ。と言うよりは、室内でこの子達が遊べるような場所を作ってあると言うのが正しいけどな。魔物や動物にもストレスはあるんだ。それを発散させてやるのも、調教師の仕事なんだよ」
「それ、可愛い子たちに癒されているだけでは?」
「そうとも言う。ほぼ私の癒しでしかない」
「私も行っていい?普通に楽しそう」
「少しでも妙な真似をしたらたたき出すからな」
新しい家族を探すため、俺達は昨日訪れた遊び場に移動。
エレノワールが“かわい子ちゃんたちと遊びたい人ー!!”と言ったら、全員付いてきてしまった。
「........(モス)」
「お、お前は昨日の........」
「........(モス)」
楽園に入ると早速、昨日俺の背中に張り付いていたモスの子が俺の所までやって来る。
なんかこの子、俺に懐いているっぽいんだよな。
モスは基本的に白色なのだか、この子は灰色の毛を持っている。ほかのモスとは違う見た目のため、俺の印象によく残っていた。
そしてこの子は、あまり人に懐かないらしい。調教師であるフーロにも甘えないような子で、いつも一人でいるそうだ。
「昨日もなんか懐いてたな。あまり人に懐かない子な上に、魔物達の中でも孤立気味な子だから良く面倒を見てたんだが........珍しいな」
「アレだろ。引きこもりゲーマーとシンパシーでも感じたんだろ。ほら、ボッチ同士は惹かれ合うみたいな」
「エレノワール?普通に失礼だからなそれ。殴るぞ」
握りこぶしを作りつつエレノワールに笑顔を向ける俺。
失礼にも程があるだろ。確かに友達はかなり少なかったし、この世界に来る前の夏休みなんて家にひきこもって一日中ローグライクで遊んでたけどさ。
いやでも友達はいたし?別にぼっちでは無いし?
「目に見えて動揺してるな。ローグ........そうかお前も大変だったんだな」
「ムサシ?なんでこういう時はエレノワールに乗るんだよ。乗らなくていいんだよ。俺にも友達は居たって」
「大丈夫ですよローグさん。私も友達とかいませんでしたし。なんなら大人達ですら私を避けるような人達ばかりでしたから」
「リリー、ちょっと突っ込みづらい話はやめて?色々と困るから」
「大丈夫だよローグ。僕も友達はほぼ居なかったから。友達だと思ってた子がイジメの主犯格だった時とかあるよね」
「深いよ闇が。ロリショタ組の闇が深すぎるよ」
あのすいません。ボケるにしても突っ込みやすいボケにしてもらいません?
大人も避けてたとか、友達が実はいじめの主犯格でしたとか言われると突っ込みづらすぎるって。
地球の頃の話しにくくなるって。
ロリショタ組の闇が深い。
大人よりも純粋な子供の方が残酷とは聞くが、人間関係にも現れるんだろうな。ともかく、この話は絶対に地雷なのであまり触れない方向で行くとしよう。
俺は地雷原でタップダンスを踊る趣味は無いのである。
「........(モス)」
「で、お前は俺が気に入ったのか?」
モスは俺の胸に張り付くと、少し首を傾げた後に服の下に入り込む。
そして胸元からひょっこりと顔を出すと、ここが正位置と言わんばかりにすっぽりと納まった。
こいつ、自分が可愛いことを理解して1番可愛く見える事をやってやがる........!!なんて頭の良い奴なんだ........!!
モスモスだし、可愛いし、愛嬌もある。
もうお前が完璧で究極のアイドルだよ。一番星の生まれ変わりだよ。
「可愛い........モスモスだし、マジでいいわこの子」
「その子にするかい?調教師として言わせてもらうと、馬の会うやつを選んだ方が後々楽だぞ。モスは結構賢いしな。魔物の中では戦闘力もかなり低いが、その分知恵で戦うタイプだし」
「エレノワール........」
「私はいいぞ。ほかのみんなは?」
「僕は大丈夫ですよ。全人類の敵でもありませんし」
「可愛いじゃないですか。私も反対しませんよ」
「いいんじゃないか?ところで、狼はどこ?」
皆から賛同を得られた。ならば、俺はこの子を家族に迎えるとしよう。
攻略に疲れた時に癒してくれ。できる限りの環境は作ってやるからな。
「お前、家に来るか?」
「........(モス)」
俺の言葉が分かったのか、何となく察したのか、胸元から顔を出していたモスは片手を上げて“もちろん”と言わんばかりの仕草をするのであった。
後書き。
先に言っておくと、特に塔の攻略とかには関わりません。ただただモスモスしてるだけの、癒し枠です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます