体は癒しを求めてる
癒しを求めてペットショップにやってきた俺は、その後魔物達やら動物達と触れ合ってとても癒された。
可愛い。モフモフな子も可愛いし、ウネウネしている蛇の子も可愛い。
フーロが調教しているというのもあって、魔物とは言えど基本的に大人しい子ばかり。
客人が来たと頭で分かっているのか、俺の膝の上に乗ってきてそのまま寝る子もいた。
これだよこれ。これこそが癒しだよ。
ローグライクで疲れた心と体を癒してくれる子。これこそ俺が求めていた子だよ。
是非とも家に来て欲しいが、俺の住んでいる家はシェアハウスであり他の人の許可が必要となる。
残念だが、今日はこれで我慢して帰ることとなった。
「........という訳で、ペットを飼ってもよろしいでしょうか?」
「何が“という訳で”なのか分からんし、なんで敬語なんだよ」
「もふもふ欲しい........」
「分かった。分かったからとりあえず落ち着け。話が見えん」
その日の夜。全員が集まっている場で、俺はエレノワールにお願いしてみる事にした。
ダメだったらその時はその時で考えるとしよう。もういっその事、フーロに金を払って毎日癒されるために通い詰めるとか本気で考えるぞ俺は。
そんなこんなで、俺がペットが欲しいと言う経緯を説明。モフモフが欲しいという事が少し恥ずかしかったが、ここで恥ずかしがっていてはモフモフできない。
モフモフ!!モフモフ!!
「つまり、攻略後の疲れを癒してくれるような子が欲しいと?」
「そういう事になるね」
「んー、別に禁止とかしてないから飼うのはいいけど、私以外にも意見を聞かないとな。みんなはどう?」
「いいと思いますよ。と言うか、私も欲しいです。モフモフじゃなくても家事を手伝ってくれる子とか」
「僕もいいよ。でも、生理的に無理な子とかは勘弁かも」
「俺もいいぞ。つーか、俺も欲しいな。侍にはオオカミだろ」
「何を持ってして“侍にはオオカミ”って言ってるのか知らんが、みんな大丈夫そうだな。と言うか、私も普通に欲しいわ。みんなで飼うか。ペット」
トントン拍子で進んでいく話。
みんなこの頭のおかしい世界に癒しを求めていたのか、既に飼う気満々である。
ところで、なんで誰もペットとか飼おうと思わなかったんだ?
「ペットとか飼った事ないの?」
「んー、この世界に来て最初はそんな余裕がなかったし、余裕が出来てからはあまりそんなことを考えてなかったな。前の世界でもペットとか飼ってなかったし。ツテで世話になったやつはいるけど、そいつから魔物を買うなんてこともなかったな」
「ペット欲しいなんて言い始めたのはローグが最初なんじゃないか?」
「魔物は敵で、殺し殺される仲だと普通は思うからね。僕も考えたことも無かったや」
「私もそうですね」
みんなペットを飼うとかそういう頭が無かったんだ。
まぁ、攻略が楽しいからそっちに重点が置くのは仕方がない。
俺だってバーバラのモフモフを味わってなかったら、こんな事考えもしなかっただろう。
「うし、それじゃ明日みんなで見に行ってみるか。知り合いに調教師が居るんだ」
「フーロでしょ?今日会ったよ。偶然街中でトルンに出会って、案内してもらった」
「お、ということはフーロはローグの事を気に入ったのか。あいつは人の好き嫌いが激しくてな。何故か私は嫌われてる」
「当たり前だろ。六年前に店の1部を吹っ飛ばしてんだから。それで嫌わない奴がいたらそいつは聖人君子の生まれ変わりだ。仏だって顔を真っ赤にするさ」
何してんのこの人。
フーロの店を吹っ飛ばした事があるのか。
相変わらず滅茶苦茶すぎるクランマスターだ。そんなんだから、エレノワールの話をするとみんな苦笑いを浮かべるんだよ。
「あ、あれは........私が悪かったな。実験室を借りて色々やってたら失敗した」
「エレノワールさんらしいですね」
「全くだね。僕達のクランマスターは相変わらずだよ」
反論できず、大人しく自分の非を認めたエレノワールを見て、俺はこんなのがクランマスターで大丈夫なのだろうかと思うのであった。
いやまぁ、ここまでやってこれているんだから大丈夫なんだろうけどさ。
【ホワイトスネーク】
その名の通り、白い蛇の魔物。体調は2~3m程。牙がなく、相手に巻きついて絞め殺し、丸呑みにする。ペットとして扱われることは滅多にないが、その白い姿とつぶらな瞳が一部の層に大ウケ........しているらしい。
ペットとして飼われる程度の危険度しかなく、また人を丸呑みすることも無いので比較的安全な魔物と言えるだろう。
翌日。
俺達はクランメンバー総出でフーロの店にやってきていた。
もちろん稼いだお金は全部持ってきている。
その額、約100万ゼニー。
ローグライクを遊んでいるだけで金が手に入るとか神かよ。やっぱりこの世界は俺にとっての楽園だな。
俺の試練が稼ぎやすいというのもあるだろうが。
「で、なんでもお前まで来てるんだよエレノワール」
「いやー、ローグがペットを飼いたいって言ったら、私も欲しくなっちゃって」
「お前ちゃんと世話はできるのか?魔物とは言えど、命を預かるんだぞ?毎日面倒を見て、優しく接して友人のような関係が築けるのか?」
「オカンかお前は」
エレノワールを見たフーロはあからさまに嫌そうな顔をしつつ、ちゃんとお前に世話ができるのかと聞いてくる。
その言葉は確かに母親のようであった。
アレだ。犬や猫を欲しがる子供に“ちゃんと面倒を見れるの?”と問いかけるやつ。
結局子供は遊ぶだけで面倒を見ず、親が世話をする羽目になるやつである。
俺はそうならないように気をつけないとな。お昼の時間はどうしても居ないから、その分朝と夜にしっかりと面倒を見てあげないと。
「ムサシ、なぜこいつを連れてきた。止めるのはお前の役割だろ?」
「いや、俺もかっこいいオオカミとか飼いたい。侍には狼。そうだろう?」
「何を言ってるんだお前は。リリー、なんとしてくれ」
「家事を手伝ってくれそうな可愛い子っていますか?」
「お前も何を言ってるんだ?ニア、君からもなにか........」
「柔らかくて触り心地のいい子........スライムになるかなぁ?」
「おーい。私の話を聞いてくれ?」
元々攻略者気質な俺達。自分の興味のあることになると、誰も話を聞こうとしない。
あのリリーですら、フーロの話を聞いていなかった。
あれこれ大丈夫か?
「なんかごめんフーロ」
「新入りが一番マシって、どう言うことだよ。客が来てくれるのはありがたいが........ちょっとお引き取り願いたくなるな」
フーロはそう言いつつ、エレノワールから目を離さない。
過去に店を吹っ飛ばされた経験があるからか、かなりエレノワールを警戒していた。
「それで、許可は降りたと考えていいんだな?」
「うん。なんかみんなノリノリなんだよ。みんな飼いたい!!って言い始めちゃった」
「そうかそうか。私は金が貰えて有難いからそれでいいか。おいコラエレノワール。勝手に動き回るんじゃねぇ」
ちょろちょろと動き回るエレノワールの首根っこを掴むフーロ。
エレノワールは少し楽しそうに講義の声を上げる。
「えー、いいじゃん。何もしないって」
「前科が無ければ好きにさせたさ。六年前のこと忘れたとは言わせねぇぞ」
「そんな昔のこと忘れちまえよ。細かい女はモテないぞ」
「........なぁ、やっぱりコイツにだけ売らなくていいか?」
「いいんじゃない?今のはエレノワールが悪いし」
「ごめんごめん。それだけは勘弁して」
こうして、クランメンバー達のペット選びが始まった。
候補が2つあるのだが、悩むなぁ........
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