この世界は楽しいな‼︎
Q.ローグライクでステージをクリアしたらどうなる?
A.そのステージで獲得した武器装備及びスキルアイテムを全て失って最初に戻る。
........
........
........
や っ た ぜ 。
遂にステージクリアを果たした俺は、死ぬことも無く塔の外に帰ってきた。
痛みもない、苦しみもない戻り。
なんと素晴らしいのだろうか。生きてるって素晴らしい!!
やはり、死んで戻ってくるよりも生きて戻ってきた方が気分がいい。ゴブリンに頭をかち割られたり、スライムに窒息死させられたり、ウルフに臓物を食いちぎられるよりは断然マシである。
俺はマゾではないのだ。いや、マゾでもここまでの事はしねぇよ。
「おや、今日もやってきたんだね。今回は何で死んだんだ?」
生きてるって素晴らしいと、生の喜びを噛み締めていると、みんな大好きバーバラがやってくる。
毎回死にまくる度にバーバラに優しくしてもらって元気をもらった。
いや、本当にバーバラが居なかったらちょっとメンタルがやられていたかもしれない。
しかし、今回はそんな必要も無い。俺は勝ったのだ!!
「フッフッフ。いつも俺が死んでばかりだと思うなよ?なんと!!今日は死んでおりません!!」
「お、やるじゃないか。攻略途中で抜けてきたのか?前にそんなことを言ってたよな?」
「フハハハハ!!さらにその上さ!!」
「お?ということは、攻略したのか?」
「そう!!遂に攻略したのさ!!塔の試練の1つをね!!」
胸を張る俺と、それを微笑ましそうに眺めるバーバラ。
バーバラはニコニコと笑顔を見せると、いつものように優しく俺の頭に手を置いてくれた。
もふもふ!!もふもふだ!!
「やるじゃないか。この世界に来て2週間。毎日塔に挑んだ成果が出たんだな。おめでとう」
「ありがとう。一つ攻略するだけで12~3回死んでるけどね........撲殺、溺死、食われて死ぬ。この3つを基本繰り返すのは辛かったよ」
「いや、割と楽しそうにしてたけどね?大体死んでここにやってくる攻略者達は顔が死んでるんだが、お前はどこか楽しそうだったし。お前は生粋の攻略者だよ。そうだ。攻略者証を見てみるといい。0が1になっていると思うぞ」
そういえば、攻略者証にはその人の塔の攻略情報が乗ってたんだったな。
攻略した階層を示してくれるものであり、俺は今まで0であった。
エレノワールが13とかだったはずである。
今まで全く気にしてなかったから、完全に忘れてた。
俺は早速ポーチから攻略者証を取り出し、自分がどれだけの階層を攻略したのかを見てみる事にした。
「あ、5って書いてある」
「5?!第五階層まで攻略したのか?!」
何気なく呟いた一言に、バーバラが驚きの顔をする。
そんなに驚くようなことか?一応第五階層までクリアはしているし、何もおかしいところは無いと思うのだが。
というか、最後までクリアしないとこの攻略者証には反映されないんだな。
第一階層を突破した時とか0の表記のままだったし。
「ちょ、ちょっと見せてくれないか?マナー違反なのは分かっているんだが........」
「ん、いいよ。バーバラにはお世話になってるしね」
俺の行ったことが信じられなかったのか、攻略者証を見せてくれと言うバーバラ。
ギルド職員(正確には受付の人)や塔の検問をしている人でもない限り、相手の攻略者証を見ようとするのはマナー違反とされている。
一応個人情報として扱われているので、当たり前と言えば当たり前だ。
しかし、バーバラにはお世話になっているし、特に悪用もできないので見せても構わない。
うちのクランマスターなんて、人を煽るためにわざわざ攻略者証を見せてる時もあるらしいからな。
“え?9階層を攻略したの?!すごいじゃん!!私は13階層までしか攻略できてないよ〜”
とか普通に言う人なので。と言うか、ムサシに対して似たようなことを言ってたので。
リリーが怖くてキレなかったが、アレ殺されても文句は言えないと思うんだ。
「ほ、本当に第五階層まで攻略したことになってる........初めて見たぞ、いきなり第五階層まで攻略したやつは」
「そうなの?」
「そうだな。一気に二つ駆け上がるやつも稀に見るが、基本的に塔の試練は一つ登ってその日はおしまいが殆どだ。精神的に疲れるし、何より気分よく終わりたいだろ?」
確かに。
一つ階層を攻略して、達成感を味わった後に死にたくはないわな。
俺の場合はそもそもの選択肢すら用意されてないのだが。
第三階層まで登り続けないと行けないんですけど。あれ?俺の試練、もしかして割とクソゲーか?
「どんな試練なのかはさすがに聞かないが、おそらく第五階層を攻略するまでおわれない試練なんだろうな。そりゃ朝っぱらから潜ってなかなか出てこないわけだ。エレノワールが言ってたぞ、家に帰ってくるのが遅いってな」
「あー、確かに朝イチに塔に入って、帰ってくるのは俺がいちばん遅いかも」
「そりゃ遅いわけだ。エレノワールはあぁ見えて心配性でな。あまりに遅い時は私のところに確認しに来たりもする。あまり心配かけてやるなよ」
「分かったよ。でも途中でやめれないし、死んだら最初からだから寄り道せずに帰るようにするさ」
知らなかった。
エレノワール、あんな滅茶苦茶な感じなのにちゃんと俺の事を心配してくれてたんだな。
お姉さんと言うか、お袋なんだけど。
今度からエレノワールママって呼ぶか。絶対嫌がられるだろうが。
「どんな試練なのか想像もつかないな........一気に第五階層まで駆け上がる試練か」
「楽しいけど、運が悪いとクソだよ。1回それで酷い目にあった。マジで塔を破壊してやろうかと思ったよ」
「ハハハ!!攻略者ならば誰もが思うことだな!!運が絡む試練ももちろんあるから、運が悪い時はいつも塔に殺意が湧くさ」
バーバラも似たような経験があるためか、大きな声で笑いながらポンポンと俺の頭に手を置く。
........やっぱりモフモフっていいな。お金もそれなりに溜まってるし、ペットでも買って見ようかな........
一応、この世界には猫や犬のような動物も存在している。奴隷文化はこの国には無いので、獣人を買ってハーレムだ!!なんてことは出来ない。
と言うか、ハーレムとか絶対に面倒だからやらない。
俺は純愛派だ。
「しかし、いきなり第五階層まで攻略したとなると攻略者ギルドから仕事が来るかもしれん。あまり遠くに出ることは無いだろうが、準備はしておいた方がいいぞ」
「え?そうなの?」
なにそれ聞いてない初耳なんだけど。
俺が固まっていると、バーバラが説明してくれる。
「攻略者には、この階層を超えたら一人前みたいなラインがあってな。それが第三階層なんだ。そこを超えると、ギルドは一つ二つ仕事を任せることが多い。主に、その人の人格や強さを確認するためにな。難しい依頼は出てこないだろうから、そこまで身構えなくてもいいが、二日三日は外に出ると覚悟しておいた方がいいぞ」
へぇ。ギルドも色々と考えてんるだな。
緊急時に仕事を割り振ったりするために、その人の能力を見ておきたいという事なのだろうか?
とりあえず、近いうちにギルドから仕事が入るかもしれないと思っておいた方がいいな。
「ま、詳しい話はエレノワール辺りに聞いてくれ。あいつの方が攻略者関係については詳しいしな」
「分かったよ。ありがとうバーバラ」
「改めて、おめでとうローグ。よく頑張ったな」
「ありがと」
俺はそう言うと、横にあった莫大な報酬を持って機嫌よく今日を終えるのであった。
もちろん、エレノワールにその話をしたら大盛り上がり。
その日はまたしてもパーティーとなり、俺はこの世界を心の底から楽しむのであった。
この世界はイカれてるが、クソ楽しいな!!
後書き。
第二章、完。
いつも沢山のコメントありがとうございます。全部読んでるよ。
ローグライクは初めてクリアした時の達成感が凄い。
さて、次の章は外の世界へ‼︎...ではなく攻略を続けます。槍を試したら外に出る仕事もさせようかな。なので、次は槍ビルドで新しい試練を登る回です。
面白い‼︎続きが読みたい‼︎と思った方は是非★をよろしくお願いします。モチベにつながるので。
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