これがローグライク
ボスを遮蔽にして少し休憩をした後、俺はこちらに向かってピュンピュンレーザーを飛ばしてきているミニボス達の始末に入った。
相手は俺が見えてなくても一定間隔で攻撃してきており、そのタイミングを掴めれば避けるのは簡単である。
近接を仕掛けてくるミニボス達がいると動きが制限されて避けられなかったが、今はそんな邪魔者もいないのだ。
という訳で、レッツゴー。
俺は数体のミニボス達の攻撃が途切れる瞬間を狙って動き始め、一気に距離を詰めていく。
この後第三形態のボスの対策として移動系スキルは残しておかないといけないので、スキルは使わずに走って距離を詰めるのだ。
ジグザグに動きつつ、俺は射程範囲に入るとスキル2破壊縦斬を発動。
強化された一撃は相手を怯ませ、俺はその隙に肉薄する。
「オラァ!!お前らも終わりじゃぁ!!」
大剣の重い一撃が炸裂し、ミニボス達を蹂躙していく。
大剣を使う上で素早さのオーブは割と必須級だな。これがあると無いとで立ち回り方がまるで変わる。
素早さは正義。某黄色いネズミが出てくるゲームでも重視されてた。
俺はそんなことを思いながら、ミニボス達を始末する。
最後の一体を倒し終えた後、俺は素早く盾に篭っていたキメラスライムに視線を移しジグザグに移動を開始。
多分この動きだけで避けられるとは思うのだが、念の為スキルも使っておくぞ。
ボスの周囲を守っていた盾が剥がれ、ゆっくりとボスが起き上がる。
そして、こちらに視線を向けた瞬間俺はスキルを発動した。
「破壊突進!!」
「────!!」
ドゴォォォォン!!
スキルを使うと同時に、つい先程まで俺が居た場所に衝撃が走る。
第三形態に入った瞬間、やつは即死級の一撃を振り下ろしてくる。
前回は初見殺し過ぎて普通にやられてしまったが、分かっていれば避けるのは簡単だ。
初見殺しゲームってのは、タネが分かればある程度簡単にクリア出来るものである。
「スキルは使わなくても良かったかもな。ジグザグに回避行動取ってたら避けられるかも」
俺はそう言いつつ、振り向き様にスキル2と3を使用して遠距離からダメージを稼ぐ。
出来れば強化されて数が増えた飛斬を全て当てたかったが、それをやるには近づく必要があり、立ち回りが崩れる恐れがあるので安牌の行動を選ぶ。
流石にね。ここまで来て負けたくはないんだよ。
負けたらまた最初からやり直しなんだぞ。半日かけてまた登り直し。そりゃ誰だってやりたくは無い。
「────!!」
「うげ、動いてきやがった!!」
と、ここでボスがついに移動を開始。
凄まじい速度で俺の正面に回り込むと、一撃を振り下ろしてくる。
ドゴォォォォン!!
二度目の一撃も俺は何とか避けると、クールが上がったスキル2を撃ってまた逃げ始めた。
「第一形態はその場から動かずに遅い動き攻撃してきていたけど、第3形態は動けるのか!!」
しかもデカイから動きが早ぇ!!
一歩の大きさが違いすぎて、あっという間に追いつかれる。
唯一の救いは、振り下ろしが単調で避けやすい攻撃で有りながら隙もちゃんとあるという事ぐらい。
これで隙もなかったらやばかった。
「─────!!」
「........!!破壊突進!!」
ボスの行動をパターンと攻略法を考えていると、またしても俺の目の前に移動してくるボス。
しかし、その一撃は振り下ろしではなかった。
ピュン!!ドゴォォォォン!!
ウルフの顔から放たれたレーザービーム。
こいつ、今度は移動しながらレーザービームを放つのか!!
目の前に狼の顔を構えられた瞬間は死んだかと思ったぞ。俺の反射神経が若くて助かった。
「っ!!危ねぇ!!」
さらに、レーザービームを放った直後に振り下ろしがやってくる。
俺は徹底していた回避行動に助けられ、紙一重のところで一撃を避けた。
レーザービームの後は直ぐに攻撃してくるのずるいだろ普通に。デカブツの攻撃は基本一発で、一撃が重いってのか鉄則じゃないのか?!
「喰らえ!!」
2連続攻撃をやった後は流石に隙が生まれるだろ。という事で、俺はスキル2を使ってダメージを稼ぎに行く。
農作ビルドだったらもっと火力が出てたんだろうなぁと思いつつ、俺はボスの攻撃を避けたら殴る避けたら殴るを繰り返す。
最初はその一撃の重さと、2連続攻撃にビビったが、慣れればどうということは無い。
こーれ、調子に乗らなければ行けますね。
スタミナ面も今はまだ余裕がある。相手の体力次第だが、ちゃんと削り切れるだろう。
ペチペチと殴り続ける俺と、一撃大逆転を狙うボス。
捕まったら死の鬼ごっこは20分も続いたところで、ようやくボスに疲れが見えた。
明らかに疲れている。疲れているというか、ダメージを受けすぎて動きが鈍っている。
これはチャンス。しかし、ここで欲張って攻撃しすぎてはならない。
ローグライクに限らず、大体のゲームに言えることだが、勝利が見えた時ほど冷静に。
殴れ殴れ殴れ!!と攻撃に移って負けるなんていつもの事だからな。
ちゃんと相手の攻撃を待って、隙ができてから殴るのだ。
「そろそろ死んでもいいんじゃないか?!というか死ね!!俺も疲れてんだよ!!」
「─────!!」
一撃ヒット。しかし、まだボスは倒れない。
ボスの反撃。
レーザービームは貯める時間が居るので、二回ごとに攻撃してくる事は分かっている。
先程は2回攻撃された。つまり、今回は単発攻撃だ。
ボスの振り下ろしを避け、再びスキル2と3を使う。
2発の斬撃がボスに当たったその瞬間、ボスは膝を着いて倒れた。
お?これはもしかして、もしかするのでは?
「勝ったのか?いや、ステージクリアのアナウンスが無い。これはアレか。最後の一撃をかませって事だな?」
俺はそう言うと、一応回避行動を取りながらボスに近く。
近づかれている間、ボスはピクリとも動かなかった。
「終わりだ。また遊びに来るぞ」
トドメは散々お世話になったスキル2破壊縦斬で終わらせるとしよう。
俺は高々と大剣を振り上げると、そのまま思いっきり振り下ろす。
最後の一撃を喰らったボスは、自身の形を崩して液状のスライムとなって息絶えた。
それと同時に、ウィンドウが開く。
『ステージクリア。おめでとうございます。第一の試練、始まりの塔をクリア致しました』
「........ん?」
あれ?報酬画面じゃない?いつもなら、ここで報酬画面が出てきて報酬を選べってくるはずなんだけどな。
報酬がない。つまり、報酬を与える理由がない。
それ即ち、このローグライクのクリアを意味する。
次のステージが無いと言うのに、スキルカードやオーブが必要か?
否。そんなものは必要ないのだ。
だってもう先のステージがないのだから。
「........よ、よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!」
始まりの塔とか今初めて聞いたが、ともかく俺はローグライクをクリアしたのである。
一から五階層にまで連なる塔の試練のひとつを、俺はクリアしたのだ。
ローグライクをやっていて1番達成感のある瞬間である。
これだけ苦戦したステージをクリアした。その達成感は、何事にも変え難い。
上振れを引いた時はアホすぎて楽しいが、これは嬉しいのだ。
やりこみすぎたローグライクで、達成感とかあまり生まれないからな。激ムズ縛りプレイでもしてない限り。
「勝った!!やったぜ!!俺の勝ちだ!!」
勝ったそれ即ち、俺の勝利!!
やったぜヤッタゼやったった!!
リアルに死ぬと言うえげつないデメリットがあるだけに、この勝利への達成感は尋常ではない。
言語すらちょっと怪しくなった俺は、しばらくの間この達成感を噛み締めて喜ぶのであった。
後書き。
大勝利‼︎
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