DIEジェスト 1
このクランはリリーが実質的な権力者であり、例えクランマスターであるエレノワールであろうとそれは覆せないと知った。
リリー、怒らせるの、ダメ絶対。
ちなみに、ニア曰くリリーは普通にしていれば怒ることは無いらしい。
手が滑ってお皿を割ったとか、そういうのがあったとしてもリリーは笑って許してくれるんだとか。
リリーが怒るのは、周囲の人にまで迷惑が及ぶ時が殆どらしく、そこさえ気をつけておけばいいとの事。
俺は基本塔に潜るだけなので、怒られることは無いと思う。
というか、怒られたくない。
あの背中がぞわりとする感覚。何かが俺の背中に張り付く感覚は味わいたくないのだ。
人間の本能に問いかける怖さって存在するんだな。マジで怖かったぞあれ。
そんな事が有りながらも、俺は塔に戻ってくる。
今日の朝食はエレノワールが作ってくれた目玉焼きパン。懐かしさを感じる味だった。
「お、今日も来たな。頑張れよ」
「頑張るよ」
検問の兵士に挨拶をすると、俺は塔に入る。
五階層のボスまで辿り着けたのだ。後はそこをクリアするだけ。
そう思うだろう?普通は。
しかし、この塔の試練はローグライクである。
時に運が味方し、時に運が敵となる。
確実な対処法を知り、しっかりと対策できていれば滅多なことは無いが、それでも事故る事はよくあるのだ。
つまり何が言いたいかと言うと........
「ちょ、待っ!!」
グシャ。
「あ、やべ」
(ポヨン!!)
序盤に素早さのオーブが取れてないにもかかわらず、ヒットアンドアウェイ戦法をして死亡。
スライムが顔に張り付き窒息死。
やはり、窒息死は苦しい。第3階層のエリートでリタイア。
「ちょっ!!それはズルじゃん!!序盤じゃん!!」
「グルゥ!!」
第一階層のエリートステージ、さぁやるぞと思ったらウルフの湧き位置がゴミすぎて死亡。
最序盤でまだ強化もほとんどできていないにもかかわらず、群れステージとほぼ同じことをやらされたらそりゃ勝てない。
どうなってんねんこの試練のリポップは!!せめて対処できるぐらいには留めておけよ!!
という訳で、攻略開始して数十分で生きたまま食われてリアイア。
痛いけど苦しくないだけマシかな。
「あぁ!!クソ!!これの対処法が分かんねぇ!!」
「─────!!」
二回死んだ後、第五階層のボスに挑めたのだが、第二形態の対処法が分からず死亡。
初見の時よりも順調な攻略ができてはいたのだが、ボス戦はギミックゲーだ。ギミックの対処法が分からない時点で割と詰む。
前回と同じ、ミニボスがレーザービームを使ってきたところでリアイア。
今回は先に遠距離持ちを倒そうとしてビームを心臓を貫かれた。
国民的人気漫画で、ビームの殺法を打たれて死んだ主人公の気持ちが少しだけ分かった気がする。
「あ、やったわこれ」
「グギギ!!」
第二階層の通常ステージで立ち回りをミスり、ゴブリンに殴られて死亡。
ゲームに慣れてきた頃が1番ミスを起こしやすい。
普通に立ち回りとスキル管理をミスって、木の影から出てきたゴブリンに殴られ手倒れた所を撲殺された。
これで三回目。なんやかんや撲殺って優しい死に方なんだなと思いつつやっぱり痛いと思いながらリタイア。
みんなも調子に乗るのは辞めておこう。大抵痛い目を見るぞ。
「はいクソー。二度とやらんわこんなクソゲー........ゴフッ」
回復ポーションを買わずに強化に回したら、体力減少のクソイベを引いて弱った所を食われて死亡。
対策は本当に大事だと分からせてくれた。
死ね死ね死ね(知能低下)。
どうして“まぁ出てこないやろ”とか思った時に限ってピンポイントで出てくるんだよ。マジで、塔が俺の思考を読んでるんじゃないかと本気で思う。
その後ウルフに食われてリタイア。
体力管理は最優先でしましょう。
「お?これはいい感じなので─────」
「────!!」
ドガァァァァァン!!
ようやく第五階層のボスの第二形態を突破したと思ったら、第三形態移行時の攻撃を避けきれず死亡。
完全に油断してた。これは俺が悪い。
しかし、第二形態は安定して突破できそうな方法を見つけた。何形態あるのか知らないが、少しだけ前進したなと思いつつリタイア。
「これ踏んじゃダメなエリートだな。大剣と相性が悪すぎる」
「グギギ!!」
「グルゥ!!」
(ポヨン!!)
第五階層のエリートステージ、第五階層のエリートステージは二パターンに別れているらしく、どう見ても近接殺しのステージが用意されていた。
さすがに初見殺しすぎる。敵が全員遠距離攻撃持ちは今の俺じゃ対処できないって。
ステージ名は覚えたので、次からはこのステージを踏まないように気をつけよう。
これも学び。初見の時に事故るのは仕方がない。
そう思いながらリタイア。このステージを踏む時は遠距離主体の武器かスキルカードが引けた時だな。
「だいぶ攻略法が分かってきたな。下手な事故がなければ、安定して第五階層に入れるようになってしきたし」
初見のエリートステージでフルボッコにされ、バーバラに慰めて貰った俺はクランハウスに帰ると自室に引きこもり、ステージのギミックやら攻略法を纏めた紙に色々と書き足す。
最初は頭の中だけで完結させていたが、情報量が多くなりすぎて忘れそうだったので紙に書いておくことにしたのだ。
この世界で俺だけのための攻略Wikiの出来上がりである。
「ゴブリンとかスライムと戦いすぎて、通常ステージだと予備動作が分かるようになってきたのはおもろいな。お陰で体力を消費せずに勝てるようになってきたし、通常攻撃を織り交ぜられるようにもなってきた」
今日分かった事、新しく見たスキルカードやオーブの効果を纏め、俺は満足気に頷くとリビングに戻る。
ビルドも色々と考えてはあるのだが、結局のところ運ゲーが強い。
その時取れたものを使って、最も効率的なビルドを作るのが1番だ。
ロマンに走りたいが、そろそろ本当にボス戦がクリアできそうなので真面目にやる。
「あ、ローグさん。ちょうどいい所に」
「どうしたんだリリー........って、何やってるんだ?」
「ポーカーですよ。テキサスホールデム。知ってますか?」
テキサスホールデムと言えば、自分の手札2枚と場に出た5枚のカードで役を作るポーカーだったか?
そういえば、ポーカーのローグライクゲームもあったよな。あれはゴリゴリのイカサマポーカーだが、億とか言う点数を稼げた時はめっちゃ楽しい。
デッキ構築型のローグライクだから、アクションが苦手な人でもできるし、壊れデッキが組めた時は楽しかったな。フラッシュデッキが組みやすいから、特定のデッキを狙わずにクリアだけを考えるとフラッシュばかりを狙うことになるが。
っと、話が逸れた。
どうやら4人でポーカーをやっているらしく、しかもちゃんとお金を掛けているように見える。
4人仲良くポーカーですか。俺、ハブられてるんだけど。
「みんなでやりませんか?」
「金をかけるのか?」
「レート1ー2ゼニーのクソ安だ。日本円で言えば、1円だぞ。ちなみにMAXベッドは100円だ」
「やっす」
「身内同士での遊びだぞ?このぐらいでちょうどいいんだよ。んで、やるか?というか、やるぞ。ルールは教えてやるからローグも参加しやがれ」
「そうだぞ。扉をノックしても返事がないし、除いたら何か真剣にやってたから声が掛けづらかったし」
「あぁ。悪い。ちょっと攻略のことを纏めてて........」
「そいつは勤勉で結構。でも、人生は遊んだもん勝ちだ。ほら、座れ!!」
こうして、死にまくった後の癒しの時間として俺はポーカーをやるのであった。
尚、16ゼニー負け。
なんとも言えない微妙すぎる負け額となってしまった。次は勝つ。
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