いや、無理無理無理‼︎
第二ギミックスタート。
俺は50体ぐらいのミニボス(俺と同じくらいはある)を相手にする羽目になった。
こいつらをガン無視してボスを殴りに行くなんて方法も考えられるが、盾を構えた状態のあのボスはおそらく無敵である。
お供がでてきた上にボスの行動が抑制されている。それ即ち、“こいつらを倒したらまた戦えるよ!!”の合図である。
これでボスも一緒に行動してきていたら、ボスにも攻撃が通ってたな。
「オラァ!!」
ドゴォン!!
農作ビルドの強みは、一対多のような場面でこそ発揮される。
脳死で破壊強化しまくったらどうなるんだろうと思って作ったビルドだが、ちゃんと対策になってたんだな。
もし次このボスに挑むことがあるなら、このミニボス達に対処できるビルドを組むことを意識しよう。
主に広範囲攻撃。
やはり範囲こそ正義。一撃の火力が高い範囲攻撃こそが最強。
その分動きは遅いし、攻撃にディレイが発生するが、そこはプレイヤー脳での見せどころってやつだ。
「ぶっ飛べ!!」
何度も何度も地面を叩き、農作業をするかのように地面を耕す。
この調子で行けば、第2形態も簡単に叩き潰せるだろう。
そう、思っていた。
ここまでは順調であった。ここまでは。
大体ミニボスを半分ほど片付けた辺りだろうか。
できる限り裏を取らせない動きをしながらミニボス達を始末していたその時、ピュン!!と俺の頬をかすりながら何かが通過する。
「........は?」
「──────」
頬から流れ落ちる血。
痛いとか痛くないとかそういうのはどうでもいい。今こいつら、やっちゃ行けないことをやってただろ。
1番後ろに待機していた数体のミニボスに視線を向けると、そこではミニボスがウルフの腕を使って第二射目を構えている最中であった。
いやいやいやいや!!それはダメでしょ!!
これだけの数を相手にしながら、あのぶっ飛んだ遠距離攻撃を避けるとか無理ゲーじゃん!!
無理だよ。さすがに無理だよそれは!!
「いや、無理無理無理!!」
俺、逃走開始。
あの馬鹿げた射程を持ったレーザービームを避けながら、襲いかかってくるミニボス達を相手にするなんて無理がある。
無理があるというか、確実に今の俺の技術では無理だ。
先にあそこにいるヤツらを叩き潰せればいいが、このミニボス達、思っている以上に強い。
最低でも3発は殴らなければ倒れない上に、こちらの射程を理解しているのか、俺が一撃を喰らわせようとすると回避行動を取っている節がある。
破壊カードの強化がされまくっているから無理やりなぎ倒せるが、それらを突破しながら遠距離攻撃を開始したヤツらを殴るのは無理ゲーすぎる。
「いや、ちょ、待って!!待って!!許して!!」
第四、第五階層で無双していたからと言って、ボス戦が勝てる訳では無い。
ボス戦はちゃんとギミックを理解した上で、それに対して適切な対処をしつつ相手を殴る事が求められる。
攻略Wikiでカンニングしていればある程度適切に戦えるが、この世界に塔の攻略法を教えてくれる有識者はいない。
大正義G〇〇gleは使えないのだ。
で、ローグライクとは実に無慈悲である。
初見殺しは当たり前。次に挑む時にちゃんと対策を考えてこいよと言われるのだ。
「........っ!!」
何とか攻撃を避けながらミニボスの数を減らしていた俺だったが、ここに来て遠距離攻撃が左肩を貫く。
くそっ、直線的に逃げないように立ち回ってたが、足止めを食らった隙に一撃を決められた!!
ローグライクならば、ここが画面の向こう側の世界ならば、HPが減っただけで万全に動けただろう。
しかし、この世界のローグライクは現実であってゲームではない。
一撃の被弾が命取り。
痛みに顔を歪め、動きが遅くなった瞬間を奴らは見逃さない。
スキル1はクールタイム中。移動スキルが使えず、移動速度もあまり早くは無い大剣、敵をここで倒そうにも、スキル2もクールタイム中であり、ほかのスキルは全く強化してないので致命的な一撃にはならない。
つまり何が言いたいのかと言うと、“詰んだ”という事である。
「また来るからなぁぁぁぁぁぁ!!」
最後の力を振り絞って、スキル4破壊大回転を使用。
周囲のミニボス達を切るが、まるでダメージも与えられなかった。
こいつら、ダメージトレードしてきてるやんけ。ダメだろ、お前らがそれをしたら。
こちとら一撃くらったら全部致命傷のクソザコナメクジやぞ。一撃食らう覚悟で突っ込まれたら、どうしようもないっての。
こうして、俺の初見ボス攻略という夢は儚く散っていく。
今回の死に方、目玉に剣を突き立てられて脳を抉られた。痛い。
【メガスライム】
第三階層にでてきたボス。人間サイズの大きさであり、子分を量産する。
しかし、何度も子分を量産すると疲れて休憩が必要。本体も弱くなるので、疲れるまで待ってから殴るのが正攻法である。
多分、この塔のボス達の中で一番弱く、そして可愛い。
........
........
........
勝てるわけねぇだろ!!
目が覚める。
あーくそ。初見攻略できなかった。
第2形態を見れたのは良かったが、その後第三形態が確定していただけに、続きが見れなかったのは悔しい。
ちくしょう。攻略法さえ分かってたら無双できてただろうに、これだからローグライクをやる時は攻略Wikiが六法全書並に必要なんだよ。
「やぁ。今日も潜ってたのか?」
「おはようバーバラ。最悪の目覚めだ」
「ハッハッハ!!直前に死んで目覚めがいいやつなんてそうそう居ないさ!!頭の狂った攻略者だって少しは顔色が悪くなる。で?今回は何で死んだんだ?」
「剣を目にぶっ刺されて脳を抉られた。あれ、即死しないんだな。一瞬激痛が来たと思ったら意識が飛んだけど」
「痛いだけならまだ優しいさ。生理的に受け付けない死に方をする奴とかもあるからな」
そんな死に方したくねぇと思いつつ、俺はゆっくりと体を起こす。
いつも死に戻って最初に顔を合わせるのは、このモフモフなバーバラだ。
彼女はいつものように俺の頭を優しく撫でると、ケラケラと笑う。
マジで、このモフモフが無かったらメンタルやられてるかもな。モフモフって最強だわ。
「辛かったら休んでもいいんだぞ?別に塔に挑まずとも生きていく術は沢山ある」
「そんな辛い顔をしていたか?」
「いや?何となく言っただけだ。昔........いや、この話はやめておこう。ともかく、心が疲れたら休むことも大切だぞ。それにしても、すごい量の報酬だな。ローグの試練は金が稼ぎやすそうだ」
あからさまに何かを言いかけて話題を逸らしたバーバラ。その話の続きが気になったが、疲れていた俺はそれ以上の事は聞かずに話題に乗る。
「命を1つ落として貰った報酬だ。このぐらい豪華じゃ........すげぇ量があるな」
「だろう?これだけ売れば、一ヶ月ぐらいは生きていけるぞ。塔の攻略で成金にでもなるか?」
「いや、金を稼ぐのは別にどうでもいいかな。それよりも、塔の攻略をしたい」
「ハッハッハ!!こりゃ生粋の攻略者が生まれちまったねぇ!!ニホンジンってのはみんなそうなのか?狂ったように塔に潜りやがる」
と、バーバラが大声で笑っていると俺のベッドの隣に誰か来たようでバーバラが反応する。
あ、モフモフ........
ちょっと寂しい気もするが、バーバラも仕事がある。
もう少しモフモフを味わいたかったが、残念だな。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!クソが!!なんであそこで気づかれるんだよ!!あいつおかしいだろ!!」
「わぁ、起きてくるなり元気だな。これなら状態を見なくても良さそうだ」
「んだとバーバラ!!お前の仕事なんだから、ちゃんと見やがれ!!あーくそっ、あそこで気が付かれなかったら行けてたのにぃ!!」
「はいはい黙れ。お隣でクランメンバーが聞いてるぞ」
うるさいヤツだなと思ったその声は、我らがクランマスターエレノワールのものであった。
後書き。
攻略wiki無しで初見ボス攻略(中ボスを除く)は無理ゲー。
上振れてても、知らなきゃ勝てないがローグライク。
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