お前も肥料になるんだよ‼︎


 破壊カードの強化が施された時点で、このゲームはぶっ壊れた。


 多分と言うか、ほぼ間違いなく上振れを引いている気がするが、それは後で考えるとして今はひと時の無双タイムを楽しむべきである。


 第四階層第二ステージ“青色の森”。


 名前からして強化版スライム達が襲いかかってくるステージであり、常に後ろを警戒しながら遠距離攻撃を避けつつ相手の数を減らすステージなのだが、そんなこと関係ない。


 今の俺は最強格。


 どれほどの上振れを引いていたのか知らないが、上振れた俺に敵なんて居ない。


「フハハ!!ぶっ飛べや!!」


 ドゴォォォン!!と、凄まじい音が響き渡り周囲が吹っ飛んでいく。


 これだよこれ!!運ゲーを乗り越えた先にある無双ゲーが楽しいのさ!!


 第二階層でも同じような事をやっていたが、それ以上に強化されてブンブンと大剣を振り回せる今となっては快感度が違う。


 一撃地面を叩けば周囲の魔物たちが死んでいくとか言うバカゲー。


 これがデフォルトのゲームだったら、絶対売れてないだろうなと思うクソゲーの始まりだ。


 はい地面を叩く!!


 ドゴォォォン!!


 もういっちょ!!


 ドゴォォォン!!


 さらにもう1回!!


 ドゴォォォン!!


 最初の頃はタイマンを意識して殴りあっていたのに、今となっては囲まれようが地面を殴るだけで片がつく。


 アレだな。毎ターン真空斬りの巻物を使ってるような感じだ。もっと分かりやすく言うと、スライム相手にイオ〇ズン使ってる感じだ。持ってるの大剣だけど。


 明らかにオーバーキル。


「あはは!!バカゲー最高!!」


 1度ぶっ壊れたローグライクは、大体その後もぶっ壊れる。


 俺は爆速で第二ステージをクリアした後、そのまま調子よく第四階層を突破した。


 畑を耕すかのように大剣を地面に打ち付けて周囲をぶっ壊すだけの簡単なお仕事。


 スキル2の破壊縦斬を強化して行うから、破壊ビルドっていうか農作ビルドの方がしっくりくる。


 畑を耕し作物を得る地面を壊し魔物を殺す


 うーん。なんて素晴らしい響きなんだ。


 よし、このビルドを“農作ビルド”と名付けよう。大剣を振り下ろして畑仕事だぜ。


 ちなみに、第四階層はボスステージがなかったので、初見殺しで死ぬこともない。


 余裕だな。


 そんな訳で、第四階層を突破。


 そしてやってきましたは第五階層。


 早速ルートを見ていると、ボスステージを見つける。


「ボスステージがあるな。俺の予想ではここが最後だと思うんだが、どうなんだろうか?」


 この塔の試練のローグライクは、俺が初めてハマった某ウサギの魔王が出てくるソシャゲのローグライクにとても似ている。


 そのゲームでは、全五階層。そして、第三階層と第五階層の最後にボス戦が用意されているのだ。


 俺の予想が正しければ、ここが最後の階層である。


「でも違う時は違うからな。取り敢えずボスステージを拝めるように頑張るか」


 ルート選択となったが、今回はあえてエリートステージを選ばないルートを通ることにした。


 今回のマップには商店も無いので、エリートを通るべきなのだが、ここまで来るとボスステージを一回見ておきたい。


 エリートステージは確かに報酬が美味しく、できる限り通った方がいいのだが、事故が起きやすいためにあえて通らない選択肢も言うのもあるのだ。


 決められた定石を守るだけがローグライクじゃない。その時のステージや、目的に応じてルートを変えるのも攻略のカギである。


 そんな訳で第五階層第一ステージ“黒と青の平原”へと足を踏み入れる。


 もう名前からして何が出てくるのかわかるな。


 どうせスライムとウルフだろ。


「はい。正解」


 ステージが始まると同時に、スライムとウルフが姿を現す。


 予想通りすぎる。まぁ、名前からどんなステージか何も分からないよりはマシだが。


「さて、攻撃が通用するかな?」


 第四階層ではバカゲーと化したこのビルド、しかし、ローグライクは敵が強くなっていくため後々になると厳しい戦いを強いられることもある。


 もちろん、そのままずっと無双してる気持ちよくなれる時も多々あるが。


 第四階層でのスキルカードの引きは悪くなかった。


 破壊のスキルカードを1枚さらに追加できたし、消費魔力減少のオーブ(小)も獲得している。


 火力が足りていればまだまだ無双できそうだが........果たして。


「突っ込んで気持ちよく吹っ飛ばしたいけど、初見ステージだしな。安全に行くか」


 俺はそう言いながら、大きく迂回してウルフ達の背後を取る。


 今回はウルフとスライムの混合軍が相手であり、四つの群れに別れている。


 それぞれ10体づつの群れ。


 つまり、合計40体の始末がクリア条件だ。


「遠距離持ちが四体。面倒だな」


 と、ここで気配察知に優れているウルフ達がこちらに気がついてしまった。


 探知範囲も広がってんのか。第三階層前のウルフならこの距離で気がつくことは無かったのに。


 俺は“チッ”と舌打ちしながら、大剣を担いでウルフ達に向かっていく。


 遠距離攻撃持ちの4体が牽制してくるが、直線的でこちらの移動に合わせた射撃をしてこない限り当たることは無い。


 斜めにジグザグに移動しながら遠距離攻撃を避けつつ、大きく大剣を振りかぶって、農作ビルドの一撃を食らわせてやった。


「お前も肥料になるんだよ!!」

「ギャン!!」

(ポヨン!!)


 農作ビルド、炸裂。


 大剣の重い一撃は的確に相手にダメージを与え、そして一撃で絶命させる。


 これ、やっぱりカード強化が悪さしすぎだろ。破壊カードを集めまくったとは言えど、ここまでぶっ壊れたら修正が入りそうで怖いぞ。


「塔の試練って修正とか入るのかな........やべぇ、ちょっと心配になってきた」


 ゲームバランスを崩すとして下方修正ナーフされた日には泣くぞ。


 塔の試練に修正とかが無いことを祈るばかりである。


「でも、一撃で処せたな。これならまだまだ暴れられそうだ」


 立ち回りさえミスら無ければ、まだまだ無双できる。


 一撃ドカーンはやはり気持ちがいいねぇ!!


 俺はぶっ壊れた“農作ビルド”で片っ端から敵を殲滅して行った。


 大剣を地面に叩きつけるだけの簡単なお仕事。これがまかり通るから、自由度の高いローグライクは面白い。


 まだ9種類も武器があるってマジ?一生遊べそうだな。


「はい、終わりっと」


『ステージクリア。4ゴールド獲得。スキルカード報酬をお選び下さい』


 気持ちのいい時間が終わり、報酬タイムへとうつる。


 暫くはこの無双感を味わうだけよ作業になるな。クソ楽しいからいいけど。


 俺はスキル1のクールダウン減少を選び、少しだけ休憩することにした。


 時刻は既に昼過ぎの2時。朝っぱらから入って色々とやっているため、既に6時間が経過している。


「ゲームと違って時間がかかりすぎたろ........忙しい現代人の敵だな」


 今どきはサクサクできるゲームが好まれる。古き良きローグライクが徐々に簡略化されてローグライトと呼ばれるようになった理由も何となくわかる気がした。


 何度もやり直すことが前提のゲームで、一周の時間が長かったら疲れるよな。


 俺は慣れてるからいいけども。


 中断セーブがあるとは言っても、死んだらすべて一からやり直し。


 せっかく育てたキャラが死んで最初からはだるいわな。一周に掛かる時間が長いなら尚更。


 しかし、それが面白い。毎回違った攻略法で挑んだりもできるのだから。


「毎回RPGを最初から遊ぶようなもんだし、もっと流行ってもいい気がするんだけどなぁ。日本人の気質なのかねぇ」


 俺は、もう戻れることの無い故郷でローグライクがあまり流行らないことを嘆きながら、ある程度の休憩を終えると攻略を再開するのであった。




 後書き。

 ぶっ壊れた時のローグライクはバカゲー。滅茶苦茶気持ちいいし、クソ楽しい。

 毎回違う出会いがあるからこそ、余計に楽しいよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る