vsクソデカスライム


 第三階層のボス戦“青き試練”。


 ホブゴブリンとは違うボスが出てくるとは思っていたが、人間サイズのスライムが出てくるとは思ってなかった。


 ボスだからって大きくすればいいって話じゃないんだぞ。もっと捻って来いよ塔の試練。


 俺はそう思いながら、大剣を担ぐ。


 初見ステージ。相手はスライム。


 とりあえず顔に取り付かれないように気をつけながら立ち回ることが必要であり、窒息死だけは避けなければならない。


「平原ステージなのは有難いが、スライムの数が多くないか?」


 ボススライムを囲むスライム達の数がやけに多い。


 パッと見ただけでも20体近くのスライムがいる。


 これ、範囲攻撃系の技を持ってない武器とかだったらやばいんじゃないかな?


 ギミックは分からないが、多分ザコ敵を全員倒さないとボスと戦えないタイプだろ。


「取り巻きのスライムの強さによって難易度が変わりそうだな。よし、行くか」


 兎にも角にも、殴ってみないことには敵の強さは分からない。


 見た感じ遠距離攻撃持ちのスライムは居なさそうなので、俺は走ってスライムの群れに接近した。


(((ポヨヨン!!)))

「破壊縦斬!!」


 こちらに気がついたスライム達。


 迎撃のために俺の体に体当をしてこようとするが、今回は片手剣ではなく破壊力の大剣ビルドを装備しているのだ。


 片手剣なら一つ一つ処理しているが、大剣ならば吹っ飛ばせばそれでよし。


 俺は早速スキル2破壊縦斬を使うと、周辺のスライム達も巻き込んで全部吹っ飛ばす。


「ん?あまり強くないな?もしかして、当たりのボス戦か?」


 俺が強くなりすぎたと言うよりは、なんかスライム達が弱い。


 一撃で葬り去られたスライム達。その後もぺしぺしと殴ると、あっという間に取り巻きが溶けていく。


 もしかしてイージーゲームか?


 偶にはデレてくれてもええんやで。


 取り巻きを倒し尽くし、残るはボススライムのみ。


 このまま楽勝勝ちさせてもらうかと思ったが、流石にそこまで現実は甘くはなかった。


(ボヨン)

「........あっ(察し)」


 ボススライム、取り巻きスライムを量産。


 あ、これウェーブ形式のボス戦ですか。


 とりあえず取り巻きのスライムが動き始める前に通常攻撃でボススライムを殴ってみるが、ぽよぽよのスライムボディに跳ね返されてしまう。


 あの上で寝たら気持ちよさそうだなと思いつつ、ボススライムにダメージらしいダメージが入ってないことを確認した俺は即座に背を向けて走り出した。


「ウェーブ形式のボス戦か。全部倒してからじゃないとダメージを与えられなさそうだな」


 ウェーブ。


 敵が波のように襲ってくる形式のことを指すゲーム用語であり、プレイヤーは一定のウェーブを生き残ることを目標に戦う。


 基本的にウェーブ毎に敵が強くなっていく仕様で、最初は楽に敵を倒せても終盤は地獄のような苦しみの中を耐える事となる。


 流石に第三階層にでてきたスライム達よりも強いスライムが出てくるとは思いたくないが、ワンチャン普通に負けそう。


 何が厄介って、ウェーブ処理をした後に攻撃するタイミングが生まれるとかそういうのでは無さそうという事だ。


「踏み倒しとかできないのはダルすぎる。ちゃんと全部のウェーブに対処しなきゃならんのか」


 俺はそう言いつつ、生み出されたスライム達と交戦。


 スキルの管理さえしっかりしておけば、まず負けることは無い。


 多少強くはなっていたが、今はまだワンパンレベル。


 数が20から40ほどに増えている気がするが、一発で沈んでくれるなら誤差だ誤差。


 スキル回しだけ気をつけながら、丁寧にスライムたちを処理していく。


 魔力はまだ余裕があるが、あと2~3ウェーブ来たら分からんぞ。


 一応通常攻撃も混ぜて頑張ってはいるが、いつかは限界が来そうだ。


(ボヨン)

「第三ウェーブか........つーか数多くね?」

((((ポヨン!!))))


 第三ウェーブ突入。


 60体近くのスライム達が生み出され、俺は先ほど以上に立ち回りとスキル管理を迫られる。


 先程はスキル管理だけで何とかなったが、今度は更に立ち回りまで要求される。


 囲まれないようにスキル1破壊突進でちょくちょく場所を変えながら、大剣を振り下ろしてスライムを処理。


 しかも、先程までのウェーブとは違い、スライム達が一撃で死んでくれない。


 最低でも2発必要なのがキツイ。


「クソッ、厄介すぎる!!数も多いし、普通にタフだぞ!!」

(ポヨン!!)


 幸い、遠距離攻撃持ちは出てきていない。これで、遠距離攻撃持ちまで出てきていたら、俺は今頃溶かされてベッドの上に寝ていた事だろう。


 これ、片手剣だとクリアするの難しくね?遠距離でちまちまやるにしても限界があるぞ。


 大剣で確定2発って事は、火力が低い片手剣だと3発はいることになる。下手をしたら4発だ。


 あれ?片手剣弱くね?


「オラァ!!」


 ドゴォン!!と地面に大剣を叩きつけて周囲のスライム達を吹っ飛ばす。


 スキル2の破壊を強化しまくったおかげで何とかなっているが、ジリ貧になれば俺が不利。


 主に体力面が心配だ。


 それから10分という長い時間をかけ、俺は何とかスライムの軍団を処理する。


 被弾ゼロ。初見の相手に1ダメも喰らわず戦えているのが奇跡に近い。


「ハァハァハァ........つ、疲れる」

(ボヨン........ボヨン........)


 第四ウェーブが来たら絶対に死ぬ。


 俺はもう勘弁してくれと思いながらクソデカスライムを見ていると、どうも動きがおかしい。


 なんと言うか、弱ってね?


 これ、もしかして今がチャンスじゃね?


「うをぉぉぉぉぉぉ!!ぶん殴れ!!」


 そうと分かればぶん殴りにGO!!


 もしこれが演技で、第四ウェーブとか始まったら泣く。


 そう思いながらボススライムに向かってスキル4破壊大回転を放つ。


 飛斬効果の乗った一撃を喰らいな!!


(ボヨヨン!!)

「はっ!!まともに食らったな!!ここで終わらせるぞ!!」


 体は疲れ切っていたが、それでもここで倒さないと俺が負ける。


 俺の肉体は後の事なんか知るかと言わんばかりに動き、そしてボススライムをタコ殴りにしていった。


 ボススライムはほぼ抵抗もなく、あっという間に撃沈する。


 これあれだな。HPが強制で1残ってトドメの一撃をやらせるタイプのボスだ。


 真のボスはウェーブ。


 一気にスライムをぶっ飛ばすのは気持ちよかったが、さすがに最後のウェーブはキツかった。


 あれを一撃で倒せるようなビルド構成をしていたら、めっちゃ楽しいボス戦になった事だろう。


 最後の一撃がボススライムを撃破する。


 これで、このステージはクリア。ボス戦、未だ負け無しだぜ。


『ステージクリア。14ゴールド獲得。回復ポーション(中)を獲得。吸血のオーブ(極小)を獲得、スキルカード報酬をお選び下さい』


 ボス戦をクリアしたため、報酬が手に入る。


 回復ポーションは助かる。これで下ブレをまた引いた時のリカバリーとなるだろう。


 だからと言って引いていい訳では無いが。


 引くな。二度と出てくるんじゃねぇ。


 そして、吸血のオーブ。


 これはもうなんとなく効果が分かってしまう。


「攻撃成功時、ダメージに応じて自身の体力を回復。予想通りだな。これも保険になるか」


 吸血。


 大体なゲームにある、攻撃回復の手段。


 大抵使い勝手がよく、そして何より体力管理がとてもしやすくなる神効果。


 まぁ、ぶっ壊れになるとやばいから効果が抑え目に作られている事が常なのだが、これがあると無いとでは攻略の難易度がグッと変わることもある。


 塔の試練の場合はどっちなんだろうな。倍率を出して欲しいよ本当に。


「ま、体力管理はやりやすくなったな。一撃貰っても立て直せる保険が手に入ったと思えば、かなりいいかもしれん」


 俺はそう言いながら、スキルカード報酬を見るのであった。






 後書き。

 多分今後出てくるボス達の中で一番優しく、一番可愛い子。

 めっちゃ眷属出したら、疲れちゃってポヨポヨしてるの可愛くない?可愛いよね。

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