天使(安牌)と悪魔(ロマン)
破壊強化のスキルカードを取得し、俺はイベントステージへとやってくる。
ここではスキルカードを一つ取得。出来れば天と地のイベントの方がありがたいが、こればかりは運ゲーなのでどうしようもない。
スキル1のクールダウン減少が取れただけ有難いと思うべきだろう。
そして次のエリートステージにやってきた。
「ウルフの森か。強化されたウルフもワンパン出来たら楽なんだけど、どうだろうか?」
第一階層のエリートは、とにかく相手が強くなるステージ。
一撃で倒せていたはずの敵が倒せなくなるなんて事が良く起こるので、ダメージ計算はしっかりとするべきだ。
が、ダメージ表記とかしてくれないこの塔の試練では、感覚がものを言う。
もう適当に考えながら適当に戦うしかないのだ。取り敢えず、安全マージンだけ取りながらできる限りタイマンに持ち込む戦い方をするのである。
「はいスタート」
という訳で、スタート。
森の中に配置されたエリートウルフの位置をある程度把握すると、俺は単体で行動するウルフを狙って移動する。
ウルフはゴブリンやスライムと違って探知範囲が広い。そこさえ気をつけていれば、戦い方をある程度理解している今は然程驚異とはなりえなかった。
「グルッ!!」
「よォ。狼ちゃん。ぶっ飛べや!!」
俺はエリートウルフがこちらに気がつくと同時にスキル1破壊突進を発動。
エリートウルフに突撃をすると、破壊の効果で周囲にダメージを撒き散らしながらウルフを吹き飛ばす。
が、やはり一撃で殺せる程脆く無い。
という訳で、追撃として通常攻撃を振ってみた。
全力で大剣を担ぎ上げて、力任せの一撃。
動きはスキル2破壊縦斬と同じだが、明らかに通常攻撃の方が威力も速度も遅い。
「グルッ........」
しかし、吹き飛ばされて体勢を崩したウルフに当てるぐらいならなんとでもなる。
ウルフは一刀両断され、その血を森の中にぶちまけた。
「この試練、通常攻撃がかなり大事になってくるよな。スキルの合間に通常攻撃を撃ってダメージを稼ぐ。その練習はしておいた方がいいな」
いつもの戦い方ならば、ここでスキルを二つ消費していただろう。
しかし、通常攻撃を混ぜることでスキルを一つだけ消費して討伐できた。
恐らくだが、片手剣の戦い方はスキルと通常攻撃を混ぜたやり方。
初心者向け武器とか言ってるけど、あれ絶対初心者向きじゃないよ。基礎を知るという点では初心者向きだろうけども。
俺はそう思いながら、残りのエリートウルフも始末していく。
破壊が強化されたスキル2の挙動を把握するために、二体纏まっていたウルフと殴りあったが、恐らく威力と破壊の範囲が大きくなっていたと思われる。
地面に大剣を叩きつけた時にできる地面の亀裂が気持ち大きくなっていた。多分、1メートルぐらい。
これは、破壊脳筋ビルドとか作れそう。遠距離攻撃としても使えるし、何より振り回すだけで範囲攻撃が付与されるとか神かよ。
大剣はこの“破壊”をどれだけ上手く使えるかで攻略難易度が変わりそうだ。
そんな訳でステージクリア。報酬は10ゴールドと、連撃のオーブ(小)そして、破壊強化のスキルカードを選択しておいた。
「これでスキル2の破壊強化が二段階上昇か。ちょっとロマンに走ろうとしている自分がいるね」
破壊を限界まで強化してぶっぱなしたら、気持ちいいんだろうなーとか思い始めてしまったから仕方がない。
俺のローグライクはロマンビルド全振りが基本なのである。
俺の悪い所が出てきてるよ。安牌取るべきなのに、上振れ狙って気持ちよくなろうとする癖があるんだから。
「ゲームであってゲームじゃないんだから、気をつけないとな........」
俺はそう呟きつつ、第一階層最後のステージ商店へとやってきた。
もう第一階層で雑魚死することは無さそうだな。これで塔の外でも安定した金稼ぎが出来そうである。
「お、すばやさのオーブあるじゃん。移動問題が多少解決されるぞ」
片手剣を使っていた時は微妙に役立っていたすばやさのオーブ。
効果はただ早く走れるようになるだけというなんとも言えないものであったが、移動速度が自然と落ちてしまう大剣の場合はかなり有難いものとなる。
しかも(極小)ではなくて(小)。
これは買いだな。
という事ですばやさのオーブを購入。足の速さ問題はこれである程度解決できただろう。
残り13ゴールド。
スキルカードが買えないかなーと思って眺めると、なんとスキル2の破壊強化(小)が二つも並んでいた。
その隣には“飛斬”のカード。
何かと使いやすいスキル3に飛斬を使いするスキルカードである。
「マジかよ。同じスキルカードが並ぶことなんてあるのか」
うわー、破壊強化を滅茶苦茶塔が推してくる。
お前、これ欲しいんだろ?ほらとれよほらほら。って言ってきてる。
なんて奴だ。俺という人間。よく分かっている。
しかも、その隣に片手剣の時は人権レベルで強かった“飛斬”のカードを置いているのも性格が悪い。
塔君、君、友達少ないでしょ。
「買い物ミスったかな........商品全部見ずに脳死で買っちゃった」
ゲームに慣れてきた頃によくやるミス。効果の強いアイテムだけを先に見て買ってしまい、本当に必要そうなやつを買う金がない問題。
久々にこういうやらかしをした気がする。
オーブが強いのはもちろんだが、時としてスキルカードを買った方が強いなんてこともあるのだ。
まぁ今回は、破壊のスキルカードを一つ諦めるだけでいいのだが、俺はロマンローグライカー。
例えクリア出来ていないゲームで知識が足りてなかったとしても、“なんか強そうじゃね?”と言うだけでビルドの構築を歪めてしまったりする。
そして大抵弱くて後悔するまでがワンセットだ。
大体、強いビルドやデッキは既に攻略Wikiに乗ってるからな。それをパクっておけばいいんだよ。
「うーん........うーん........」
迷う。
安牌を摂るなら、飛斬カードだけ取って残った金で回復ポーションとか買った方がいい。
回復ポーション(小)が売ってるし、7ゴールドだからね。
しかし、しかしである。俺の中の
“こんなに破壊カードが出ることはもう無いかもしれないぞ。ここは買っておけ。死んでもどうせ生き返るんだから”と。
死んでも生き返るが、好き好んで死にたい訳では無い。だが、ロマンを追い求めて馬鹿みたいなビルドを作りたい。
頭の中の天使の悪魔が俺に語り掛ける。
“ここは安牌だよ。ローグライクの基本を忘れたの?”
“いーや、ここはロマンに走ろうぜ。安牌な選択をしたって別に勝てるとは限らないだろう?”
“安牌!!”
“ロマン!!”
“安牌!!”
“ロマン!!”
「これ買うか!!」
勝者、
俺は我慢ができない国の人らしい。
どうせ安牌を取ろうが死ぬ時は死ぬのだ。クソみたいな下振れ引いて死ぬぐらいなら、ちょっとロマンを求めて死んだっていいじゃない!!
多分、ここら辺から俺はさらに自分の死に関して興味を無くしたと思う。
四回も死んで精神が壊れなかった異常者なのだ。必然的に、慣れも早い。
それだけ俺は、攻略者としての適性が高かったのである。
俺は後々後悔しそうとは思いながらも、破壊強化のスキルカードを二枚購入。
残金残り1ゴールドとなりながらも、俺は大変満足しながら第二階層へと進むのであった。
もうスキル2ブンブンビルドを目指すぞ。こういうのは吹っ切れた方が強いのだ。
もしかしたら、これが正攻法なのかもしれないしな。
攻略法が分かってないだけに、これが正解と言えないからその分気が楽である。
オラ!!大剣ブンブンビルドにひれ伏せ魔物共!!
後書き。
私は大体悪魔(ロマン)が勝つ。
明日新作を出す予定です。お楽しみに‼︎
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