大剣を持って
さて、ゴブリンの村を滅ぼし、その原因が何なのかを探った俺達は攻略者ギルドに報告に行った。
原因はゴブリンの中に統率者が現れた事によって、ゴブリン達が団結し知能を得たと言う結論となり、再発する可能性は低いとして依頼は無事に達成。
その日の夕飯は攻略者ギルドであれこれ食べまくった。
この世界では成人が十五歳とのことで、俺はこの日初めて酒を飲んだのだが、二度と飲むことはないだろう。
だって気分悪くなるし、アルコールの味が好きではなかった。
まぁ、これも経験だ。酒が俺の体には合わないという事が分かっただけ十分である。
翌日。
昨日は楽しかったなと思いつつ俺は、再び塔の世界へとやってきた。
いい感じに攻略できていたと言うのに、2連続で下振れのイベントを引いて即死。
あるあると言えばあるあるだが、やられた側は溜まったものでは無い。
あー、思い出したらイライラしてきたぞ。マジで許さんからな強制体力減少イベント。
どれを選んでも体力が減るイベントとかクソだ。その分の強化を得られたとしても、体力が減って死ねば意味が無い。
これがあるから、イベントマスはできる限り踏みたくないんだよ。
対策の為に回復ポーションは多めに持っておいた方がいいな。前回の攻略でも持っていたし使ったのだが、2連チャンは聞いてない。
ここまで下振れる事は稀だろうから、保険で一つだけ確保しておけばいいか。
「お、今日も来たな。昨日はエレノワールに連れていかれたんだろ?」
「おはよう。兵士さん。うちのクランマスターは滅茶苦茶だね。気がつけば全部吹っ飛んでる」
「ハッハッハ!!それがエレノワールさ!!休日に騒ぎを起こされた日には殺したくなるぞ。娘と買い物に行く約束をおしゃかにされた時は本気で殺してやろうかと思ったな」
塔に入る前にいつも少しだけ話す兵士。
どうやら彼は娘がいるらしく、エレノワールの被害によってその日のデートを邪魔されたらしい。
そりゃ怒るわ。休日をダメにされただけではなく、更には娘とのデートを邪魔されたんだから。
「エレノワールは自業自得だけど、それで俺達も恨まないでね。俺は何もやってない」
「安心しろ。あのバカは死んでも死なんし、あいつが居なくてもお前達のクランは手が出せない。この街の中でも馬鹿げた強さの連中なんだよ。特にリリーがヤバいな。怖い」
「あぁ........怖いな」
雑巾絞り!!とか言ってホブゴブリンを捻り潰す様な子だ。そりゃ怖ぇよ。
「ま、頑張りな。応援してるぜルーキー」
「どうも。また今度娘さんの話でも聞かせてくれよ」
俺はそう言うと、兵士と別れて塔の中へと入っていく。
今回は水と食料を持ち込んでいる。それに、既に強化しているスキルも持って。
スキル強化が塔の中でも有効だったら、色々と考えることが出てくる。
それは勘弁して欲しいかもと思いつつも、俺は見慣れた青く半透明なウィンドウに目を通した。
「ん、最初からちゃんと書いてあるじゃん。助かるね。どうやら、スキル強化は全部リセットされるらしい」
目の前に映し出されたウィンドウ。そこには、“塔の外で得たスキルカードは適応されません。塔の内部で死んだ場合、それらのスキルカードもロストします”と書かれていた。
つまり、塔の外で強くなっても意味は無いし、それらの強化は塔の中で死ねばリセットされてしまうという事である。
当たり前だわな。それが出来たら難易度がめっちゃ下がるし。
「何気に塔の中で死ねば、外で得たスキルカードもリセットできるのは有難いな。スキルカードの効果を見るために色々と試して塔の中で死んでを繰り返せるわけだ」
あれこれ、塔の外でもローグライクできるじゃん。神かよこの世界。
俺はそう思いながら、今回の攻略に挑む。
スキルカードが引き継がれたら片手剣で挑もうと思っていたが、どうやら違うようなので別の武器種も試してみるとしよう。
『貴方は塔の試練を1つ乗り越えた。しかし、歩みを止めてはならない。
1.スキルカードを一つ獲得(ランダム)
2.ポーションの獲得(ランダム)
3.現在のゴールドを全て失い、スキルオーブを獲得(ランダム)
4.銀の鍵を獲得』
お、最初の選択が少し変わっている。
ボス戦に勝ったからだろうか?四つ目の選択肢が銅の鍵から銀の鍵にグレードアップしていた。
個人的には銅の鍵のままでも良かったのだが、ここは銀の鍵を選ぶとしよう。
鉄の鍵はスキルオーブをひとつ獲得できた事を考えれば、それよりも豪華なはずだ。
という訳で銀の鍵ゲット。
そして、その後ルート選択に移る。
今回は新しい武器種を試すが、攻略方法は変わらない。
エリートステージがあればそこを優先し、できる限り戦闘が多くなるように考えるのだ。
「スライムの平原から行くか。ゴブリンは見飽きたし」
ゴブリンの森とスライムの平原がエリートステージを踏めるのだが、ゴブリンは昨日も見た。
正直もう大分見飽きたので、今回はスライムと戦うことにしよう。
ステージを選び、武器の選択に入る。
今回は片手剣以外の武器種を試すつもりだ。
片手剣を続けてもいいのだが、折角10種類も武器を用意してくれたのだから、全部触ってみたい。
その中から自分に合う、もしくはそのステージ攻略において強い武器を選ばないとね。
「片手剣、大剣、双剣、槍、鎌、メリケン、カード、弓、拳銃、杖........確か初心者向けとして塔がおすすめしてたのは、片手剣と大剣と槍だったな」
使いやすい武器として紹介されていたし、使いやすい武器から使っていくとしよう。
というわけで、今回は大剣を選択。
そして、スキルの効果を読んでいく。
大剣のスキルはこんな感じだ。
─────────
大剣
一撃が重い代わりに、隙が大きい。全てのスキルに“破壊”の特性が付与されている。
スキル1 破壊突進
魔力消費極小
クールタイム小
大剣を盾のようにして突っ込み、周囲にダメージを与える。
スキル2 破壊縦斬
魔力消費小
クールタイム中
大剣を思いっきり振り下ろし、周囲にダメージを与える。
スキル3 破壊横斬
魔力消費小
クールタイム中
横に思いっきり振り払い、周囲にダメージを与える。
スキル4 破壊大回転
魔力消費大
クールタイム中
グルグルと回って周囲の敵を薙ぎ払い、周囲にダメージを与える。
───────────
うーん。片手剣で見た。
スキル構成が全く同じ。違うのは、“破壊”と呼ばれる特性を持っている事と、全体的にクールタイムが長い事ぐらいだろう。
スキル1は片手剣で言うシールドバッシュだし、スキル2は振り下ろし、スキル3はなぎ払いで、スキル4は大回転。
何が違うんだよと言いたくなるぐらい、同じスキルである。
しかも、こっちの方がクールタイムが長い。その分威力が高いと思うけど。
そして何より、この大剣、かなり重い。
片手剣の時は割と普通に走れていたのだが、これを持って走るのはかなりキツイかもしれない。
「走れるだけ温情なのか?普通、こんなクソでかい鉄の塊を持って振り回すのなんて無理だし」
大剣の大きさは、俺の身長程もある。
大体160cmぐらいの大きさの大剣。そんなものを現実で振り回せるわけが無い。
そう考えれば、まだ優しい方か。今ブンブンと振ってみているが、一応振れているだけマシである。
剣を振るうと言うよりは、剣に振り回されている感じだけど。
「ま、使いやすいって書いてあったし、最低限の戦いは行けるだろ。知らんけど」
でぇじょうぶだ。死んでもどうせ生きけぇる。
俺はそう思うと、スライムの平原のステージを始めるのであった、
さて、大剣は俺の手に馴染むかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます