外の世界(塔で見た)
エレノワールが俺に気を使ってくれたのか、みんなでピクニックに出かけようと言うので、俺は今日の攻略を諦めてエレノワール達と行動を共にすることにした。
先ずは武器の問題があるのだが、これはあっさり解決。
エレノワールが既に武器屋に話をつけていて、ある程度の武器を用意してあったのだ。
俺はとりあえず片手剣を選択。
塔の試練で与えられる武器とは違って、若干手に馴染まないが、普通に戦う分には問題ないだろう。
スキルが使えるのかとか、スキルの強化ができるのかとか調べたいな。
ちなみに、武器代はエレノワール持ちである。ありがてぇ。
一応、昨日第三階層を攻略した時の報酬を滅茶苦茶貰って結構稼いだのだが、“転移祝いだ”と言ってエレノワールが俺に金を出させるのを嫌がった。
俺は今のところ、エレノワールが面倒見のいい姉御としてしか見れてないのだが、いつの日かそのイカレ具合を見る日が来るのだろうか。
そんなことを思いながら、南門を出る。
この街の南側には森があるらしく、多くの攻略者達が金稼ぎのためにそこへと通うらしい。
「おー、これが街の外か」
「どうだ?異世界初めての街の外は」
「塔で見たね。正直に言うと、感動が薄い」
平原マップと同じように、所々に木が生えた光景。唯一違うのは、街道がしっかりと整備されているぐらいだろうか。
この世界に来た瞬間に見た。なんなら、一番最初に見た世界だよ。
俺が正直に感想を言うと、エレノワールは手のひらで目を覆う。
「そうだった。塔の世界はあまりにもネタバレが多かったわ。私が初めてこの世界に来た時も、同じような感想を抱いてたのを忘れてた」
「俺は試練が違ったらあまりだな」
「僕もそうですね」
「私も違いましたね」
へぇ。やはりと言うべきか、予想通りと言うべきか、試練の内容は人によって違うらしいな。
それもそうか。俺の試練はローグライクが基盤となって作り上げられているが、それは俺の才能、秀では能力がローグライクだからこそ出来る話し。
ほかの才能を持った人には、その才能に合った試練が用意されている事だろう。
ちなみに、この世界で相手の才能を聞くことは基本的にご法度である。仲のいい友人や、肉親などには伝えてもいいが、それ以外はマナー違反らしい。
この世界において、塔から授けられた才能はある種の個人情報。
職業や仕事場で何となく才能が分かったとしても、聞かない知らないフリがマナーなのだ。
「塔がネタバレしてくれやがったが、まぁいいや。それじゃ行こうか。ローグ君初めての冒険だな!!」
「なぁムサシ、塔のゴブリンとこっちの世界のゴブリンって違うのか?」
「試練によるな。まぁそれは実際に目にしてから話すとしよう。聞くよりも見た方が早いと思うぞ」
「試練によってゴブリンに対する感覚もかなり違うよね。あー頭をかち割られた感覚を思い出したら気分悪くなってきちゃった」
「ここで吐かないでくださいねニア。ゴブリン........私はあまり見ないんですよねぇ」
エレノワールの掛け声に誰一人として反応しない俺達。
そんな俺達を見て、エレノワールは少し寂しそうな顔をする。
何となく、このクランのノリが分かってきたかも。
「あの、ちょっとは反応してくれない?みんなノリが悪いよ?ほら、おー!!ってやろうよ。それじゃ私がただ一人で盛り上がってるだけじゃん」
「「「そうだが(ですよ)?」」」
「よし、おまえら全員吹っ飛ばす。ほら、ケツ出せケツ!!思いっきりぶっ飛ばしてやるよ!!」
「え、俺何も言ってないんだが?」
「空気が読め無かったのでローグも
「んな理不尽な」
「おい待て!!そんなもんぶっ刺したらケツが二つに割れちまうよ!!」
「元からふたつに割れてんだろうが!!今から四つに割ってやるからなぁ!!」
こうして、俺は初めての外の世界を観光........する余裕などあるはずもなく、エレノワールから走って逃げるのであった。
捕まりそうになったから、スキル1シールドバッシュを使ってみたが問題なく使えた。
まさか鬼ごっこでスキルの確認をさせられるとは........このクラン、あまりにもうるさ過ぎるよ。楽しいけども。
【武器スキル】
それぞれの武器を装備している際に使えるスキル。10種類の武器にそれぞれ4種類(カードを除く)のスキルが存在しており、このスキルは塔の外でも発動することが可能(対応する装備を装着時のみ)。
塔の攻略は、如何にこのスキルを上手く使い強化しつつ攻略できるかが鍵となる。
エレノワールに追いかけ回されながらやってきたのは、The森であった。
森だな。森以外に言うことがない。
そしてこれも塔で見た。もしかして、塔のステージは実在する場所を写しているのでは?
そんなちょっとした考察をしつつも、おふざけはこの辺にする。
流石に死んだら終わりのこの状況で、これ以上遊ぶのは命取りだ。
「はぁはぁ........戦う前から疲れたんだけど........」
「おいおい。困難でバテてちゃ先が思いやられるぜ?ウチの中では1番体力のないリリーですらまだまだ元気だってのに」
「ほぼ全力疾走で10分以上も走ってたんだぞ。そりゃ疲れるだろ」
「地球ならそうかもしれんが、ここは異世界だぜローグ。私達は今や超人さ。なんだってできる」
10分以上も走っていたからか、俺は既に体力が無くなっていた。
疲れた。やはりランニングはするべきだな。せめて塔とクランハウスの間だけでも走ろう。
塔の攻略時はちょこちょこ休めたからまだ何とかなってたことを思い知らされた俺は、トレーニングをしようと心に決める。
なんやかんや昨日もやろうと思ってサボったし、今日から頑張ろう。
「ちょっとローグがダウンしちゃったし、ここで水分補給でもするか。それと、初めて森のはいるであろうローグに色々と教えてやらないとね」
「金稼ぎは塔で問題ないと言っていたが、ギルドから仕事を押し付けられることもあるからな。ギルドに属している以上、それは逃れらない定めだ。今のうちに色々と経験しておけよ」
「攻略者ギルドって偶に面倒な仕事を押し付けてきますよね........あれさえなければ過ごしやすい組織なんですが」
「え?僕はなかったけど........」
「ニアは可愛いからね。しょうがないね。それとまだ1年ちょっとしか経ってないからね」
ギルドから依頼を押し付けられることもあるのか。ギルドに属している以上、厄介な仕事や難易度の高い仕事はそれに見合った人に割り振るってことなのかな。
そして、ギルドに所属している俺たちに拒否権は無いと。
世知辛い世の中だ。
「この世界には魔物が存在する。そして魔物の特性として、魔力が空気中に濃く存在していればしているほどその場所を好む傾向にある。森は木々が生み出した僅かな魔力が溜まるんだ。そしてそこに魔物の生態系が生み出される。ここまではリリーに説明してもらったな?」
「急に解説を始めるね。確かにそんなことを習ったけども」
「慣れろ。ウチはこういうクランだからな。んで、森や洞窟なんかは奥に行くほど強い魔物が出やすい。なんともまぁ、私たちにはありがたいご都合主義的なシステムだな。一応ちゃんとした理由があるらしいが、そこまで詳しく知らなくてもいい。そういうもんだとして覚えておけ」
「分かった。要はもしはぐれても森の奥に行くなって事だね?」
「分かってるじゃねぇか。どこぞのバカ侍よりもよっぽど賢い。そんなわけで、迷っても奥に行こうとせずその場でじっとしてろ。迎えに行ってやるからな。っていうか、手を繋ぐか?迷子にならないように」
流石にそれは恥ずかしいんで勘弁願いたいっす。
俺はその提案を拒否すると、森へと入るのであった。
塔以外の魔物か。強いのか弱いのかそして、俺の才能であるローグライクの力はこの世界で通用するのか。
気になるね。
後書き。
ネタバレする塔君。塔君からしたら難癖もいいところ。
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