第三階層


 所持金が56ゴールドとなり、かなりウキウキで第三階層へと入る。


 ここからは完全初見だ。知らないことが命取りになる可能性も高い。しかし、やらなければならない。


 というか、どこまで進んだらクリアになるんだよ。


「次のルートは........お?ボス戦っぽいのがあるな」


 新しい階層に入ったのならば、先ずやる事はルート選択。


 お金がかなり潤沢にあるので、出来れば商店を通りつつ報酬が美味しいルートを通りたいなと思いながら眺めていると、最後のステージがどのルートからでも同じ場所に行き着くようになっていた。


 そしてらそこには“BOSS”の文字。


 なんで英語が普通に使われているんだよと言うツッコミはさておき、ついにボス戦に挑める階層へとやってきたらしい。


「どんなボスが出てくるんだろうな?そこまで強くはないだろうけど」


 初めてのボス。ローグライクに触れたことがないプレイヤーならば、ここがクリアの条件だと思ってしまうだろう。


 しかし、ローグライクをやりこんだローグライカーからすれば、ここで終わりだと思うはずがない。


 絶対中ボス。少なくともここは中ボスで間違いない。


 ゲームにもよるが、ローグライクのボス戦は一回で終わりではない。そのステージ毎に用意されていたり、クリアまでに二回戦うようになっていたりと様々だ。


 一応、一回で終わるゲームもあるにはあるのだが、今までのこの塔の試練の仕様を見ているとおそらく違うと思われる。


「多分某有名カードゲームローグライク辺りが参考になってるよな。1番近いのだと、ソシャゲのローグか。3つ目のステージでボス戦、第一階層の最後に商店。だいぶ既視感がある」


 俺がローグライクを初めて触ったのは、某ウサギの魔王が病気と戦うソシャゲであった。


 当時は報酬のためにやっていたが、気がつけば毎日やるようになり、そこからハマったものである。


 もしかして、塔はそれを知った上でこの仕様を?


 そんなどうでもいいことを考えながら、ルート選択を終えると俺は早速第三階層に挑むこととした。


 のんびりしていてもやることは変わらない。今いい感じで進めているのだから、この流れを断ち切りたくは無いのだ。


「最初は平原の魔物か........パッと見、ステージはあの平原ステージと同じだな」


 第三階層第一ステージ“平原の魔物”。


 今回のステージは平原らしく、もう何度も見慣れたステージが俺を出迎えてくれる。


 だが、どんな魔物が出てくるのか分からない。今までは出てくる魔物達を表記していてくれたのに、不親切になったものだ。


『第三階層第一ステージ。平原の魔物。クリア条件、全ての敵の殲滅』


 俺が一歩踏み出すと、ステージが始まる。


 そこに現れたのは、今まで戦ってきたゴブリン、スライム、ウルフのオールスターであった。


 わぁ、夢の共演。全く盛り上がらないし嬉しくねぇ。


 ゴブリン5匹、スライム5匹、ウルフ5匹の計15体。


 出現場所は種族ごとにバラバラであるが、必ず五体で固まっている。


 しかも、その中に見覚えのある魔物が存在していた。


 弓を持ったゴブリンと、色が少し異なるスライム........うわぁ、遠距離攻撃持ちだよ。


「ダリィ........マジでだるいな。これ、各種族に一体づつ遠距離持ちが出るようになったのか。ウルフの遠距離攻撃は知らんけど、最初の時みたいに突っ込んで殴るのは絶対に無理だな」


 ここに来て一気に難易度が上がった。俺は未だに遠距離に対する明確な回答を持っていない。


 とりあえずこちらも遠距離で殴ればおkと思って、スキルをぶん回しているだけなのだ。


 しかも、その個体の強さも多分引き上げられているだろ?かなり面倒な上に難しい。


「まぁ、やるけどさ。これ飛斬引けてなかった時やばくね?」


 片手剣の攻略において、以下に飛斬スキルが大事なのかを認識した俺。


 このスキルがなかったら今頃死んでるだろうしな。片手剣で挑む時は、飛斬が絶対に必要だ。


 俺はそう思いながら、まずはウルフの始末に向かう。


 ウルフは経験上、探知する範囲が広く感じる。ゴブリンやスライムとやり合っている時に気づかれて参戦されると負けるので、俺は先にいちばん厄介なところなら削り取りに行くのだ。


「グルぅ!!」

「こいや!!遠距離攻撃舐めんじゃねぇぞ!!」


 スキル2とスキル3をとにかく連発して、ウルフ達を近づけさせずに排除していく。


 狙うはほかのウルフたちよりも毛並みが灰色に近い遠距離持ち。こいつだけ他のウルフに比べて見た目が違うので、見分けは付きやすかった。


 遠距離攻撃をされる前に爆速で灰色ウルフを撃破。


 そのあと、俺はシールドバッシュで距離をとって、逃げながらスキルを連発していく。


 魔力?連撃(魔)のオーブが回復してくれるんですわぁ。


「よし。遠距離持ちは先に倒すに限るな!!」

「キュー........」


 ウルフ、始末完了。


 この調子で他の魔物たちも始末するぜ!!


 という訳で、ゴブリンとスライムも、遠距離持ちを先に始末する戦法で無事に撃破。


 数が少ない内は、この方法で対処できるだろう。さらに数が多くなったら知らん。


 さて、お楽しみの報酬タイム。何が出るかな♪何が出るかな♪


「4ゴールドと、スキルカード。それと........宝箱?」


 また知らないものが来た。


 今回報酬で得られたのは、いつものお金とスキルカード、そして宝箱である。


 これは一体何なのか。中に何が入っているのだろうか。


 報酬画面から宝箱を受け取ると、小さな箱(両手で持てるぐらいの大きさ)が現れる。


 見た目は、コテコテの宝箱であり、鍵穴までご丁寧に用意されているのだからいやでもわかる。


「ここで鍵を使えってことか」


 何度か手に入れていた“鍵”。


 今まで使い道がなくて困っていたが、どうやらこの宝箱に対して使うらしい。


 俺は早速鉄の鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んでゆっくりと回す。


 銅の鍵を使っても良かったのだが、比較的手に入りやすそうな鉄の鍵から見た方が得られる情報は多いという判断だ。


 カチャリと鍵が開く音が聞こえる。俺はこれでいいのか?と首を傾げながら宝箱の蓋を開けると、そこにはスキルオーブがひとつ入っていた。


 お?15ゴールドのスキルオーブが6ゴールドの鉄の鍵で手に入ったのか。9ゴールド分お得と考えれば、悪くないのでは?


「手に入れたオーブは........お、知らないのが来たな。バリアのオーブ(極小)?」


 手に入れたのはバリアのオーブ(極小)。


 一体どんな効果なのか、早速説明を見てみよう。


「えーと、その戦闘につき一度まで全ての攻撃を防ぐバリアを獲得する。か。“その戦闘”がどのことを指しているのかによって評価が別れそうだな」


 と言うか、これもまたかなり強いのでは?


 要は1度ミスっても生き残れる保険を手に入れたのだ。全ての攻撃の無効化(一度きり)を手に入れたと考えると、滅茶苦茶心強い。


 問題は、“その戦闘”の定義について。


 普通に読めば、ステージのことを指していると考えられる。


 一ステージに一度だけ、全ての攻撃を無効化。おそらくイベントにまでその効果が適応されるとぶっ壊れになるので“その戦闘”と書かれていると推測できる。


 しかし、たまにあるのだ。どう考えてもそう解釈しかできないはずなのに、謎に効果が違うアイテムやらスキルが。


 だから、この攻略中一度きりなんてことも普通に有り得る。


 諸君、ローグライクの説明を信じることなかれ。


 特にデッキ構築系のローグライクに多いイメージだな。某HA☆NA☆SEなカードゲームと同じく、独自の言語を使ってくることがあるから侮れない。


「塔が未知の言語を作り出してなければいいけど........」


 俺はそう言いながらも、ひとつ保険を手に入れたとして純粋に喜ぶのであった。


 鍵も攻略にあたって重要なアイテムになりそうだ。管理をしっかりとしないとな。







後書き。

お気付きの方もいると思いますが、この塔のローグライクは超有名デッキ構築型ローグライク(sts)や、アークなソシャゲのローグをモデルとして書いています。

イメージが湧かない‼︎という方は、stsの攻略動画をチラッと見てみると、分かりやすいかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る