ぶっ壊れ(かも?)
塔で初めての報酬を受け取り、初めて自分でお金を稼いだ経験をした翌日。
俺は再び塔へとやってきた。
昨日はエレノワール達にこれでもかという程に祝われ、兎にも角にもどんちゃん騒ぎであった。
なんかよくわかんない美味しい食べ物は出てくるは、みんなでちょっとしたゲーム(大富豪)をして遊ぶわでかなり楽しめただろう。
正直、家に引きこもってゲームしかしてなかった生粋のローグライカーには、楽しすぎてちょっと疲れた。
友達と遊ぶってこんな感じなのかな?
「ん?今日も挑むのか?」
「もちろん。負け続きは悔しいからね」
「昨日も二回は死んでるはずなのに元気なこった。久々に生粋の攻略者が現れたな。まぁ、頑張れよ」
「頑張るよ」
塔の入口を守る兵士に攻略者証を見せて、今日もやってしましたは第一階層。
ローグライクはひとつのステージを攻略したからと言って、次のステージからゲームが始まる訳では無い。
死んだら全部最初から。そしてランダム要素に殺されるまでがワンセットである。
尚、塔の第一階層を一応はクリアしたので、俺の攻略者証の階級は上がったのか?と思ったが、そんなことは無かった。
多分、こっちもちゃんとクリアしないとダメなのだろう。あれ?そうしたら、俺は全部の階層をクリアするまで永遠に0の階級になるのでは?
というか、そもそもこの塔、何階層あるのかもハッキリと分かってはいない。
終わりが見えない戦いをしなければならないのか........
まぁ、楽しいからやりますけども。
「はいはい最初のイベントね........お?鍵が追加されてるな。第二階層に到達したから選択肢が増えたのか」
そしていつものイベント開始。
だが、その内容が少し違っている。
『あなたは一つ階段を登り地へ落ちた。次に望むものは?
1.ランダムなスキルカードを一つ取得
2.ランダムなポーションを一つ取得
3.全ての所持金を失い、ランダムなスキルオーブを一つ取得
4.銅の鍵を一つ取得』
上三つの選択肢は前と変わらない。しかし、四つめの選択肢がさらに増えるとは。
前回の攻略で、第一階層を攻略したから選択肢が増えたのだろう。こういう“一定のラインまでゲームを進めた場合に出る報酬”と言うのもローグライクにおいては割とあるあるだ。
毎度の事ながら、ゲームによるけど。
最初からこういうイベントのないゲームもあるからな。同じなのはランダム要素ぐらいで、中身は全くの別物なのだ。
「んじゃ、今回は鍵にしてみるか。どこで使うのか分からんけど」
今回も情報収集が目的のため、とりあえず鍵をひとつ持っておく。
ゴールドのことを考えると、ポーションか鍵が効率がいいのかな?
銅の鍵は店で買うと8ゴールド。スキルカードは6ゴールド。
スキルオーブは15ゴールドだが、最初に10ゴールドを払うので実質5ゴールド。
ポーションはそのものによって値段が異なるためギャンブルになる。
ポーションを除けば、一番のアドバンテージを稼げる訳だ。
ゴールドを重く見るか、最初の強化を施して序盤を安定させるか、ポーションとか言うギャンブルをするか。
ここも攻略者次第で意見が分かれることろだ。尚、勝てばそれでいいから正解はない。
「んじゃ、ルート選択してレッツゴー!!」
銅の鍵を手に入れた俺は、早速ルート選択をして攻略を開始する。
最初はお前だゴブリン。昨日タコ殴りにされたリベンジだオラァ!!
【イベントステージ】
様々なイベントが用意されているステージ。時にはメリットを時にはデメリットをばらまく。上振れを引いたら強いが、下振れを引いた時がキツイので攻略においては優先度が低め。大体来て欲しいイベントは来ないし、クソみたいなイベントだけを押し付けてくる。ふざけんなよマジで。
第一階層のステージはあらかた理解している。
ランダムなステージにランダムに配置された魔物。場所は異なるが、大体の場合は固まっていないので慎重に各個撃破すれば比較的安全にクリア出来るのだ。
攻略方法を見つければ、そこからは作業。
そして、お楽しみの報酬タイムを楽しむだけのステージとなる。
あ、今回も武器は片手剣だ。取り敢えずこれでいける所までは行きたいし、今武器を変えても絶対に慣れてなくて死ぬだろうしな。
「はい終わり」
「グギャ!!」
昨日の撲殺された恨みと言わんばかりにゴブリンをフルボッコにした俺は、ちょっとスッキリしながらも報酬画面を開く。
『4ゴールド獲得。スキルカード報酬をお選びください
1.スキル4の攻撃力上昇(極小)
2.スキル1の攻撃範囲上昇(小)
3.スキル2に“飛斬”を追加』
はい。3番目の報酬でお願いします。
俺は迷うこと無く3つ目の報酬を受け取る。
近接手段しかない片手剣に、遠距離攻撃を付与できるスキルカードが弱いわけもない。
遠距離攻撃をしてくる相手への対策にもなるし、今の所最重要スキルカードだと思っている。
最初に引けたのは運が良かったな。最悪商店で祈るはめになってた。
「幸先いいな。次はエリートステージだし、スライム相手に楽しく行きますか」
第一階層の相手は各個撃破が基本。それさえ守っていればなんとでもなる。
という訳で、次のステージへGO。
第二ステージはスライムの森(エリート)。
いつもよりも強いスライムを相手にしなければならず、さらには森ということで視界もあまり宜しくない。
だが、しかし。こちらには遠距離攻撃手段もあれば森での戦い方もある程度理解しつつある。
「ほい」
(ポヨヨン!!)
エリートステージとは言えど、所詮は第一階層の敵だ。ちょっと強化されたぐらいでは、戦い方を理解した俺の敵では無い。
これだよこれ。ローグライクは慣れてくると序盤は雑に勝てるようになるから成長を感じられて楽しい。
力は同じ。しかし、知識と経験が確実に強さとなる。
敵を倒す時間が早くなったり、仕様を理解してピンチに陥らずに戦えるようになったり。
この自分の成長を楽しむのも、ローグライクの醍醐味のひとつだと俺は思っている。
「スキルオーブは........お?スキル強化のオーブ(小)?なんだこれ」
エリートステージを難なくクリアした俺へのご褒美は、見たことの無いスキルオーブであった。
スキル強化のオーブ(小)。
名前だけでは分からないので、効果も見てみよう。
「えーと、全てのスキルに攻撃強化(小)を付与........はぁ?!全てのスキルに?!」
おいおいおい。とんでもねぇスキルオーブ引いたって。
全てのスキルに攻撃強化(小)を付与。それ即ち、全てのスキルの威力が上がるということ。
書いてあることヤバすぎだろ。誰がどう見てもぶっ壊れてるでしょこれ。
実質4枚のスキルカードを得たのと同じだ。しかも、連撃のオーブのように条件によって発動する訳でもない。
しかも、(極小)ではなく(小)。
急に塔君デレ出したぞ。
「ゴールド換算で24ゴールド?とんでもねぇスキルオーブもあったもんだな。これ1つで今後のビルド内容を変える必要があるレベルだぞこれ」
しかし、騙されては行けない。
あからさまに強いことしか書いてないはずなのに、内部処理やステージによってクソザコナメクジとなる強化は死ぬほど見てきた。
後、単純な攻撃強化がこの塔の試練において有効的かどうかも分からない。
この(小)の倍率がスキルカードとスキルオーブによって異なりますとかだったらキレるぞマジで。
頼むから数値化して欲しい。数値化してくれていれば、どれだけ強いのかもなんとなる分かるのにさぁ........
しかし、少なくともクソザコではないはず。
俺はそう信じて、いや、信じるしかないのだ。
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