第二階層


 商店で己の欲に負けてしまった俺は、素早さのオーブ(自身の移動速度上昇(極小))を手にいてれついに第一階層を突破した。


 第一階層最後のステージは商店。では、そこをクリアしたらどうなるのか?


 答えは簡単、次のステージに進むである。


 ちなみに先に言っておくと、第一階層を突破したからと言って第二階層で死ねばまた最初(第一階層)からやり直しだ。


 これは検証しなくてもわかる。だってボスとか出てきてないし。


 そう。ローグライクに途中から始めるなんて言うものは存在しない。そのステージをクリアするか、死ぬかの二択しか用意しれていないのだ。


 まぁ、正確に言えば、装備やアイテムの一部保存をしてくれたりとか、恒久的にステータスが上がるとかそう言う要素もあるんだけどさ(ゲームによる)。


 さて、そんなわけでやってきた第二階層。


 俺は第一階層と同じようにルート選択から入ることにした。


「........お?どうやら第二階層からは全部ランダムっぽいな。ステージも増えてる」


 第一階層とは違い、第二階層はこれと言った規則性が見られなかった。


 三つ目とステージが絶対にイベントステージということも無く、片方はイベントステージだが、もう片方は戦闘ステージだったりもする。


 一気にローグライクらしくなってきたでは無いか。これでルート選択も捗るというものだぜ。


「エリートを出来れば通りたいなぁ。運が良ければポーションを獲得できるし、スキルオーブは欲しい。あと金も欲しい。欲を言えば全部欲しい」


 思えば第一階層は、こんな感じの試練だよと言う簡単なチュートリアルだったのだろう。何もかも説明されてないから、チュートリアルかどうかかなり怪しいが。


 第二階層から、ようやくスタート。そんな気がしてならなかった。


 えーと、このエリートステージを通れるルートは........この下のルートと真ん中のルートか。


 出来れば戦闘ステージも多い方がいい。お金大事、稼ぎたい。


 後、イベントステージで下振れイベントとか踏みたくないから、できる限りイベントも避けたい。


 この階層のステージには商店が無いので、そこは考えなくてよし。


 色々と迷った末に、俺は下ルートを選択。


 こっちの方が戦闘が多いし、エリートステージに行くまでの間に強化ができる。


「えーと次のステージは“ゴブリンの群れ”か。暫くはコイツらの相手をする事になるのかね?」


 俺はそう言いながら、第二階層第一ステージへと入る。


 そこは、第一階層で見た平原のステージであった。


『第二階層第一ステージ。ゴブリンの群れ。クリア条件、全ての敵の殲滅』


 俺が一歩踏み出すと、ステージが始まる。


 出てきたゴブリン達。彼らは、数が多くそして固まっていた。


「グギャギャ!!」

「グギャー!!」

「........なるほど?ゴブリンの平野とゴブリンの群れの違いは、数と連携だな?」


 基本的にステージが進む度に敵キャラは強くなるし、厄介になる。


 第一階層とは違って、第二階層ではちゃんと魔物達が連携や塊となって動くらしい。


 うわぁ........突っ込んでスキル4の広範囲攻撃使って気持ちよくなりてぇ........


 一撃火力で全てをぶっ飛ばすのも好きだが、こういう固まった敵を相手に馬鹿みたいな火力を叩き込んで皆殺し!!みたいなのも俺は好きである。


 俺はとにかく気持ちよくなりたいのだ。最初は硬派で苦労してコツコツと強くなり、最終的に馬鹿みたいな強さでフルボッコにするバカゲーになる。


 そう言うのが好きなのである。


 突っ込んで切り飛ばしたい。が、明らかに火力が足りてないのも明白。


 うぐぐ。ここは我慢だ。我慢して次に気持ちよくなれる機会を探すとしよう。


「シールドバッシュは逃げに使うか。足も早くなってるし、正面から殴り込んで3つスキルを吐いたら逃げよう」


 ある程度の作戦を考え、いざ勝負。


 向こうは既にこちらに気がついており、俺に向かってきている。対する俺も、盾を構えながらゴブリンの群れを迎え撃った。


「グギャギャ!!」

「振り下ろし!!」


 まずは一体目に向かってスキル2振り下ろしを行使、目の前のゴブリンにダメージを与えると同時に次のスキルも即座に使用。


「オラァ!!」


 スキル3なぎ払い。


 連撃のオーブの効果やスキルカードの効果が上乗せされたその一撃は、最初に攻撃を加えたゴブリンを絶命させ、周囲にいたゴブリンも二体ほど切り刻む。


 相手の体力状況なんかを見ることが出来ないから分からないが、おそらく連撃のオーブが役に立っているな。


 同じ相手を連続で攻撃した場合、ダメージアップ。スキルにも適応させるタイプのオーブなのは間違いないから、普通に強い。


 これは当たりの部類かも。お前も見習え守りのオーブ。


 そしてさらにスキル4大回転を行使。ダメージを与えたゴブリン達に更なる追加攻撃を加え、三体のゴブリンを倒した。


 残りは7体。残っているスキルはシールドバッシュのみ。


 俺自身は全く強くないので、通常攻撃で戦うのは不可能。


 となれば........


「逃げるんだよー!!」


 俺は後ろを振り向いてスキル1シールドバッシュを使い、ゴブリン達から距離をとる。


 そしてオーブの効果で上がった足の速さを活かして、猛ダッシュしながらゴブリン達から逃げまくった。


 ........なんというか、俺がよく知る異世界転生物と違う気がする。


 ゴブリンにこんなに苦戦してるやつも今どき珍しいんじゃないか?いや、現実的に考えたら割とこれが当たり前な気もするんだけどさ。


 急に貰った力を使ってバッタバッタ敵をなぎ倒せるやつなんて、そうそういない。日本人は平和な世界で暮らしてきた奴らがほとんど。福岡に住んでるならともかく、それ以外はただの一般人なのだ(福岡への熱い風評被害)。


 そんな一般人がいきなり無双?無理言うな。少なくとも、俺はそんな主人公じゃないんだよ!!


「よし、スキルが戻っただろ。オラァ!!良くも散々追いかけ回してくれたなクソッタレが!!」

「グギャ?!」


 殴って逃げて、スキルが戻ったらまた殴る。


 やはりヒットアンドアウェイは強い。これを徹底しておけば、とりあえずは安全だな。


 ゴブリンからしたら厄介すぎて血管がはち切れることだろう。何せ、自分が強い時だけはイキって殴りまくるのに、弱くなった瞬間即逃走して逃げまくるのだから。


 フハハハハ!!悔しかったら追いつくか、遠距離攻撃でもしてくるんだな!!


 こうして、また三体ほどゴブリンを持っていき、そしてまた逃げるを繰り返すこと3回。


 ようやく全てのゴブリンを始末し、俺は第二階層において初めての勝利を上げる。


 地味な戦闘だが、クリアすることが大切だ。体力を高く保ちつつ、できる限り次に向けた戦い方をしなければならないのである。


「お、貰えるゴールドが少し増えてる........いや、運がいいだけか?」


 報酬は5ゴールドとスキルカード。


 運が悪いだけなのか、それとも仕様なのか、ポーションとかそういう類は余りもらえなさそうだな。


「スキルカードは........お、“飛斬”追加のスキルカードあるじゃん!!しかも、スキル3に適応してくれるとか神かよ!!」


 また“群れ”系のステージに対して強く出られるし、何よりスキル3は攻撃強化もされている。


 連撃のオーブも発動させやすいし、何かと使い勝手がいいのだ。


 そんなスキルが遠距離攻撃手段を得たら?


 そりゃ強いに決まっている。


「次のステージで使えるのが楽しみだな!!」


 俺はそう言うと、早速次のステージでスキル3を試し、難なく突破するのであった。


 第二ステージはスライムの群れ。窒息死した思い出が蘇るが、そんなものはスキルで吹っ飛ばせ。


 飛距離も伸びて比較的安全に戦える“飛斬”って実は滅茶苦茶強いのでは?






 後書き。

 塔の試練で得られるゴールドと、塔の外にあるゴールドは別物で考えてください。アレです。ソシャゲのゲームマネーと現実のリアルマネーの違いです。分かりづらくて申し訳ありません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る