パチンコは正義
ゴブリンに撲殺されるとか言う間抜けな死に方をした俺は、昼飯を食べたあと再び塔に戻って来た。
最初のイベントではスキルオーブを選び、“致命的なオーブ:通常攻撃の致命打率上昇(極小)”を手に入れている。
致命打率。
ゲームに馴染みがない人は聞きなれない言葉だが、要はクリティカル率の事だ。
某RPG風に言うならば会心の一撃。某ポケットなモンスターで言えば、急所。
簡単に言えば、運が良ければめっちゃ強い攻撃を繰り出せる確率を上げるという事である。
致命打率があるってことは、クリティカルダメージ系のスキルオーブもあるのかな?
そんなことを思いながら、第一ステージと第二ステージは割とあっさりクリアした。
今回も選んだのは片手剣。とりあえずはこれを使って、この試練の基礎を知ろうと思っている。
流石に3度目ともなれば、多少は戦い方が分かってくるな。
ローグライクのいい所は、やった分だけ知識がついて上手くなるところだ。決して
今回はエリートステージが第4ステージに存在している為、比較的簡単であった。
俺はイベントステージを選ぶと、今度は違ったイベントがやってくる。
ローグライクのイベントは常にランダムだ。それをちゃんと覚えておくことも、結構重要な要素である。
『天と地の狭間。貴方はどちらに進む?
天:スキルカードを1枚と回復ポーション(中)を獲得
地:体力の30%を消費し、スキルオーブを二つ獲得』
「天以外に選択肢がねぇよバカ」
俺は迷うことなく天を選択。
これがただのゲームだったら、地を選んでいただろう。しかし、この世界における体力減少系のイベントは馬鹿にならない。
体力が20%削られている時点で死にかけているのだ。30%?冗談じゃない。
でも、スキルオーブ二つは魅力的なんだよなぁ........
そんな悩ましいイベントで獲得したのは、スキルカード(スキル1のクールタイム減少(極小))と、回復ポーション(中)であった。
とりあえずスキルカードは助かる。これでもう少しスキル1を乱発できるだろう。
他はスキル3なぎ払いとスキル4大回転の攻撃力強化(極小)だったからね。クールタイム減少はありがたい。
「んで、回復ポーションか。段々と出てくるものが多くなってきたな」
回復ポーション。
毎度の事ながらこの塔の試練は初心者に欠片も優しくないので、説明の一切もない。
よくある赤い液体が小瓶に入っており、動きの邪魔にならないほどの大きさであった。
だが、なんとなくは分かるだろう。
回復ポーションの名前の通り、体力を回復してくれるに違いない。
ポーションは獲得したと同時に俺の腰に装着され、手に取りやすい位置に収まった。
そして、俺は気がつく。
「........もしかして、体力消費イベントはポーションを使って打ち消してねって事か?不親切な設計だなおい」
体力が回復できる。つまり、体力を一種のリソースとして活用出来る。
今回のイベントの場合は、地を選んでスキルオーブを2つ獲得し、減った体力を回復ポーションで回復するなんてこともできるだろう。
このポーション、思っているよりも重要な役割になりそうだ。
「この先絶対戦闘中にポーションを使っちゃって、その後のイベントで欲しいものが引けなくて発狂するぞ........」
ローグライクゲームにおいて、限りのあるアイテムというのは使い方をしっかりと考えなければならない。
序盤に使いまくって、後々欲しいものが引けなくなるなんてのは日常茶飯事であり、アイテムの管理もしっかりと考えなくてはならなかった。
まぁ、貴重なアイテムだ!!ラスボス戦で使おう!!と思ってたら、道中の敵を相手に事故って死ぬとか普通にあるしな。
ローグライクは基本死んだら全部最初からだ。得たアイテムも装備もスキルも、最初からやり直しになるので死んだ時の精神的ダメージは割とでかい。
特に、いい感じに言っている時ほどダメージがでかい。
今回も死ぬ前提で来ているからいいが、必ず発狂する気が来るだろう。
「ま、体力に保険ができたのはありがたいな。取り敢えず次に進もう」
俺はそう言うと、第4ステージ(エリート)へと進む。
今回はウルフの森であった。
視界が切り替わり、俺は森の中に飛ばされる。
視界が悪いな。しかも、木々が多くて移動も少し面倒そうだ。
空はエリートステージの仕様なのか赤黒く、視界の悪さに拍車をかける。これもう一種のデバフだろ。
『第一階層第4ステージ、ウルフの森。クリア条件、全ての敵の殲滅』
「よっしゃ来いや!!」
パン!!と顔を叩き、気合を入れた俺はステージが始まると同時に周囲を見渡して敵の位置を確認する。
左側に一体と正面に二体。残りは木々に隠れて見えないな。
今のところ、一体づつ倒すことで何とか勝てている。今回もゆっくり慎重に戦うとしよう。
幸い、制限時間は無さそうだしな。
俺はかなり警戒しながら森の中をあるき、普段のウルフとは違う赤黒い毛皮を被ったウルフを相手にする。
「グルァ!!」
「振り下ろし!!」
牙を向いて噛み殺そうとしてきたウルフ相手に、俺は真正面からスキル2振り降ろしを使って迎え撃つ。
ウルフの毛皮は切り裂かれたが、強化されたウルフはこの程度では死なない。
俺もそれは分かっているので、続けざまにスキル3なぎ払いを使用しウルフの攻撃が届く前に切り飛ばした。
「よし。地味にスキル3の強化が効いてそうだな。この調子でシバくぞ」
今回は死角となる場所が多い。俺は、できる限り木を背に背負いながら戦う事で、後ろからの奇襲に対しての対策を取る事にした。
スキルを全部吐けば、同時に2体までは安全に対処できる。
コツコツと相手を処理していくが、ここで問題が発生。
森の若干開けた場所に、三体纏まっているウルフがいるのだ。
しかも、動く様子がない。
「スキルを全部吐いて倒せるか?なぎ払いを二体以上に確実に当てないと反撃を貰いそうだな」
スキルだけで戦闘しているものの、今のところ魔力に問題はなし。
体感あと半分近くは残っているので、あと2回ぐらいは全スキルを発動させられる。
時間経過で魔力回復してくれて助かるわ。いやまじで。その仕様がなかったら絶対死んでるよ。
俺は僅かにデレてくれている塔のシステムに感謝しつつ、覚悟を決めてウルフ達の群れに突っ込んだ。
スキル1シールドバッシュで接近。ギリギリ盾が当たらなかったが、関係ない。
俺はスキル3なぎ払いで中央と右のウルフに攻撃を加えると、即座にスキル4大回転を使用。
これにより、中央と右のウルフは死んだ。そして、残すは左側に居たウルフのみ。
ウルフは傷を負いながらも俺を食い殺そうとしてきたが、俺は牙を盾で受け止めてからスキル2振り下ろしで何とか守りきった。
盾の使い方が何となく分かってきたおかげで、無被弾だ。
「よし。確実に上手くなってるな。ハハッ!!さて、俺の予想では後一体のはず─────」
「グルァァァ!!」
残りの一体がどこかにいる。そう思いながら攻略を続けようとしたその時、俺の後ろからウルフが襲いかかる。
チッ!!木の死角で全く見えなかった!!
スキルは全てクールタイム中。そして、即座に防御できる技術は俺にはない。
俺は無我夢中で剣を適当に振り回す通常攻撃しかできなかった。
やばい、死ぬ。
そう思ったその時、乱数の女神は俺に微笑みかける。
「ギャン!!」
「........お?」
なんかいい感じのところに当たって、ウルフが攻撃を中断した。
特に弱点となりそうな所を殴った訳では無いとなると、
「スキルオーブを取っておいて正解だったな!!シールドバッシュ!!」
俺は即座にクールタイムが戻ったスキル1シールドバッシュを使用。
本来ならまだ使えないはずのスキルだが、今このスキルにはクールタイム減少が付いている。
それ即ち、勝利の音色。
そして盾で思いっきり殴りつけたあと、もう一度剣を振り下ろして通常攻撃を加える。
すると、ウルフは沈黙し、完全なる勝利を俺は収めたのであった。
「........やっぱり
クリティカルって正義だわ。俺、
【回復ポーション】
体力を回復するアイテム。飲む事で効果を発揮し、その使用者の傷を癒す。
いつでも使用可能。戦闘中だろうが、イベントステージだろうが使える。ただし、使い切りなので1度使用したらアイテムは消えてしまうので注意。
尚、塔の外でもポーションは存在しており、傷を癒すポーションは治癒のポーションと呼ばれている。
後書き。
クリティカルビルドは正義。
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