あ、ローグライク‼︎


 突如始まった第一階層第一ステージ。


 俺は腰に下げた剣を引き抜きながら、盾を構える。


 当たり前だが、現代日本に生まれてきた俺が殺し合いなんてしたことが無い。


 精々、我々人類の敵であるGや蚊と死闘を繰り広げるぐらいだ。


 しかし、今回の相手はそんな甘っちょろい相手では無い。


 ゴブリン。


 数多のファンタジーにて出現する、スライムと並んで有名なその敵が俺を殺しにくるのである。


 死ぬ気で戦わなければ、間違いなく俺は死ぬだろう。


「全部で数は7体か?少なくともここから見える範囲では、七体が全部みたいだな」


 相手の武器は棍棒。頭に喰らわない限りは、おそらく大丈夫なはずである。


 まだ向こうはこちらに気がついていない。その間に、確認できることだけでもしておかなければ。


 とりあえずスキルの動作確認。使い方も分からない中で戦うのは、流石に危なすぎる。


「えーと、スキルの使い方は?........ダメだ。この画面は操作できねぇ。えーと、振り下ろし!!」


 俺が片手剣のスキル2である“振り下ろし”の名前を叫ぶと、体が勝手に動き剣を縦に振り下ろす。


 どうやらスキルが使えたらしい。


 人生で1度も剣を使ったことがないやつが、素人目に見てもそこそこ威力のありそうな一振ができたと言うのがいい証拠だ。


 声によってスキルを発動することは可能。次は、頭の中で唱えてみよう。


(なぎ払い!!)


 すると、今度は体が勝手に横に剣を振るう。


 頭の中で唱えても問題なし。おそらくだが、使いたいという意思があれば問題なく使えるはずだ。


 そして、二回スキルを使ったためか、身体の中からなにかエネルギーが抜けていく感覚がある。


 これが魔力かな? 数値表記がないから残りの魔力がどれほどあるのか分からないが、少なくとも体内にあるエレルギーを消費してスキルを発動していることはよくわかった。


「これ、魔力管理難しそうだな。クールタイムもよう分からんし」


 とりあえず1つづつ調べていこう。


 そう思っていると、ゴブリン達が俺に気がついてしまう。


 まぁ、割と近くに居たし、そんな近場でブンブン剣を振り回してたらそりゃバレるよな。


 俺に気がついたのは二体。出来ればタイマンで勝負したかったが、七体全部来るよりはマシである。


「グギギ!!」

「よし、やってやるよ!!シールドバッシュ!!」


 覚悟を決め、俺は盾を構えながらスキル1を発動。シールドバッシュは、盾を構えながら相手に突っ込むスキルだ。


 俺は盾を構えながら勇敢にゴブリン二匹に突っ込むと、そのまま片方のゴブリンを盾で殴りつける。


 よし、次!!


「振り下ろし!!」

「グギッ?!」


 シールドバッシュの効果が切れたと同時に、俺はスキル2の“振り降ろし”を発動。


 なんの訓練も積んで居ないへなちょこ男の剣を使うよりも、今はスキルを使った方が圧倒的に強い。


 という訳で、とにかくスキルを使いまくって戦う戦法を取ることにした。


 魔力管理?知らねぇよ。


 発動したスキルは、既にクールタイムが終わっていたのかちゃんと発動してくれる。


 1度使用してから10秒以上は経っていたから、少なくともこのスキルのクールタイムはそれ以下か。


 振り下ろした剣は、しっかりとゴブリンの頭を捉える。鮮血が飛び散り、頭蓋骨を砕いた感覚が手に残るが、ゴブリンはまだ絶命していなかった。


「振り払い!!」


 俺は続けざまに、スキル3である“振り払い”を行使。


 これにより、頭をかち割られたゴブリンは胴体を切り飛ばされて死亡。そして、もう一体のゴブリンにも攻撃がヒットした。


 スキル3は範囲攻撃か。となれば、最後のスキルも範囲攻撃になるのかな?


「大回転!!」


 そして、トドメの一撃。


 スキル4“大回転”を行使、もう一体のゴブリンを思いっきり切り飛ばす。


 真っ二つに切り裂かれたゴブリンは、草原の地面を赤くしながら息絶えていた。


 うへぇ........グロすぎる。


 グチャグチャの臓物が飛び散る様は、映画やゲームでは味わえないリアルすぎるものであり、その見た目はあまりにも吐き気を催すものであった。


 胃液が戻ってきて、喉が痛くなる。


 しかし、俺は頑張って吐くのを我慢した。ここで吐いていては、残りの五匹を殺すことは出来ない。


 引くな、戦え。少なくとも、この場を生き残りたいのなら。


「ふぅ、あと5匹」


 俺は覚悟を決めると、1分ほど待ってスキルが回復したと思った頃にゴブリン達に突っ込むのであった。




【スキル】

 魔力と呼ばれるコストを払って使用出来る強力な攻撃、または補助。スキルには再使用可能時間(クールタイム)が用意されており、その時間内にスキルを使おうとしても使えない。

 武器種:カードを除き、全武器種には4つのスキルが存在している。




 5分後、俺は何とか残り5匹のゴブリンを無傷で倒すことに成功した。


 ゴブリンに突っ込んで全てのスキルを吐いた後、スキルが再使用可能になるまで全力で逃げるとかいうチキン戦法を使って掴み取った勝利である。


 ゲーム風に言うならヒットアンドアウェイ。攻撃を当てたら即逃げろ。


 まさか、現実でも有効的な戦法だったとは。


「はぁはぁはぁ........あー疲れた........」

『第一階層第一ステージクリア。4ゴールドを獲得。スキルカード報酬をお選びください(一つまで)』


 生死を賭けた戦いが行われたと言うのに、淡々と“クリア”だけ伝えてくるこのウィンドウ。


 一回こいつを切ったらどうなるのか気になるが、それよりも気になるものが映し出されていた。


 報酬欄にあるのは、3つの“スキルカード”と呼ばれるもの。正直これはよく分からないが、そこに書いてある内容は分かる。


「えーと、スキル1の攻撃強化(極小)。スキル1の攻撃範囲増加(小)。スキル3の攻撃強化(極小)........?」


 あ、ローグライク!!


 ローグライクで見たぞこれ。


 ゲームによってシステムが異なるが、大抵複数ある報酬からひとつ選んでくださいパターンはローグライクゲームである可能性が高い。


 しかも、ゲーム進行中の時ならば尚更。


 まさか、現実世界にローグライクを臨んだから飛ばされたのか?


 ってことは、死んでもやり直せるって事?!


 怖すぎて試す勇気がまるで出ないが、その可能性は高そうだ。これで報酬を選択した後に、次のステージを選択してくださいとか出たらローグライク確定である。


 俺はとりあえず“スキル3の攻撃強化(極小)”を選択。ローグライクゲームはとりあえず火力さえ積んでおけばなんとかなるって、婆ちゃんが言ってた。


 報酬を選択すると、選んだカード目の前に現れる。


 そして、俺の中に入り込んでどこかへと消えてしまった。


 これでスキル3である“なぎ払い”の攻撃力が強化されたのかな?実際に使ってみないと分からないが、期待しておくとしよう。


『次のステージを選択してください』


 あ、ローグライク!!(2回目)


 はい。ローグライク確定です。


 報酬を選んだ後、画面が切り替わって次のステージ選択画面に来ているのだが、そのステージ選択が3択に別れている。


 しかも、その先のルートも見ることが出来るとなれば、ローグライク系ゲーム以外のゲームジャンルはほぼありえない。


「スライムの丘、ウルフの森、ゴブリンの洞窟の3つか。で、その中からひとつのステージを選んでくださいと」


 ローグライクゲームにおいて、ルート選択は命よりも大事な要素となる。


 ルート選択をミスると、大抵酷いことになるからな。


 まぁ、これは追々話すとしよう。初見のゲームでルート選択もクソもないのは事実だし。


「とりあえず一番弱そうなスライムの丘に行ってみるか?第三ステージは全部同じらしいしな」


 事前知識もない状態では、どのルートを選んでも対して変わらない。


 俺はそう思いながら、何となく弱そうなスライムの丘のステージを選び───


「ゴボッ!!ごぼぼっ!!」


 ────俺は死んだ。




【スキルカード】

 ひとつのステージをクリア(戦闘がある場合のみ)した際に貰える報酬。ランダムに提示された3枚から1つ選び、その選んだカードの効果が適応される。

 今回の場合ならば、スキル3の攻撃強化(極小)。選ばれなかったスキルカードは貰えないので注意。




 後書き。

 今日はここまで。明日は二話更新して、明後日から一話更新になります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る