思ってたんとちゃう
部屋を出たら異世界に飛ばされていた。
そんな普通に生きていて1度も経験するような事のない珍事を経験している俺は、レッツ異世界と最初の1歩を踏み出そうとして見えない壁に邪魔をされた。
そして、目の前に浮かぶ半透明で青い板と黒い文字。
まさかスタートを邪魔されるとは思ってなかった俺は、おでこを擦りながらその文字を読む。
「えーと、なになに........武器の選択をしてください?なんじゃそりゃ」
武器って俺はなんの武器も持ってないだが?
いや、だからこの先に進めないんだろうけどさ。
漫画でよく見るゲームの画面にも似たウィンドウ。俺は、ここでこの世界のことを何となく察する。
ははーん。さては、この世界ゲームタイプの異世界か?あれか?“ステータスオープン”とさ叫んだら、レベルとかそういうのが表記されたステータス画面が出てくるのか?
今時そっち系の異世界は流行らんぞ。今の流行は悪役転生とかそこら辺じゃないのか?
そんなことを思いながら、俺は定番の儀式を始める。
出てよ、俺のステータス!!
「ステータスオープン!!」
........
........
........
あ、あれ?何も出てこない。
違うのか?こういうウィンドウが出てくるタイプの異世界って自分のステータスも確認出来るわけじゃないのか?
俺は分かった気になっていたことが少し恥ずかしくなり、顔を熱くしながら困り果てる。
何をしたらいいのかさっぱり分からん。チュートリアルぐらい用意しておいてくれよ異世界さんよぉ。
俺は困った果てに、青い画面に触れてみた。
「お?こっちは操作できるっぽいな」
すると、警告文が消えて、武器の選択画面が映し出される。
どうやら、正解を引いたらしい。
「武器は........すごい数だな。片手剣、大剣、双剣、槍、鎌、メリケンサック、弓、杖、拳銃、カードの10種類か。なんか変なのが混ざってるけど、一旦それは置いておくとしよう」
なんでメリケンサックとか拳銃とかカードとか色物まであるんだよとは思うが、とりあえず俺が選べる武器の選択はこの10種類らしい。
これから武器を選べばいいのかな?
未だにこの世界のルールがよくわかってない俺。これ、1度選んだら二度と変えられないのかな?
........拳銃とかすごいチートアイテムな気がするが、何も分からない現状ではいちばん無難そうなものを選ぶとしよう。
あ、使いやすさとか書いてある。えーと、1番使いやすいのは片手剣か大剣、そして槍か。とりあえずスタンダードっぽい片手剣を選んでみようかな。
「ポチッとな........おぉ?」
片手剣を選択すると、俺の左腕に丸い盾、右腰に剣が装備される。
重さをしっかりと感じるし、質感もかなり本物に近い。
「すげぇ。これが片手剣か。なん言うか........某ハンティングゲームを思い出させるな」
これ、まともに振る事とかできるのだろうか?
俺の体は貧弱なんですけど。
そんな心配をしながら、俺は片手剣に対する説明を読む。
ここまでは完全にゲームだ。ゲームの中に異世界転移してしまったパターンなのか?でも、そういう時って基本やってたゲームに転移するはずなんだけどなぁ。
「えーと、スキルも存在してますよと。スキルは魔力を消費して行える強力な攻撃、又は補助です。スキルは各武器種(カード以外)1~4まで存在し、使用する度に魔力を消費します。そして、
簡単に言えば、スキルとはコストを払って強い攻撃ができるよ。でも、連続では使えないよ。という説明だな。
ところで魔力なんて知らないんだけど、俺にもあるのか?あと、使用の仕方も教えてよ。
しかし、残念ながらスキルに関する説明はそこでおしまい。なんと初心者に優しくないゲームなんだ。
「んで、これが片手剣のスキルか........うわぁ、優しくねぇ表記してんなぁ」
片手剣に関する説明を読んでいると、スキル説明の欄を見つける。
書いてあることはこんな感じ。
ーーーーーー
片手剣
スタンダード。隙も少なく使いやすい。
スキル1 シールドバッシュ
魔力消費 極小
クールタイム 極小
盾を構えて突っ込む
スキル2 振り下ろし
魔力消費極小
クールタイム極小
片手剣を振り下ろす
スキル3 なぎ払い
魔力消費小
クールタイム小
横に剣を薙ぎ払う
スキル4 大回転
魔力消費中
クールタイム中
一回転して周囲の敵に大ダメージ
ーーーーー
ね?優しくないでしょ?
極小とか大とか書かれても分かんねぇよ。せめて、クールタイムは秒数で表記して欲しいんだが?
「なんて初心者に優しくないゲーム........ローグライクとかこんな感じなものが多いから慣れてるけどさ」
ローグライクの悪い所。それは、大体システムが複雑すぎで初心者が全部覚えるには難しすぎる事。
ローグライクゲームを始めるにあたって、そのゲームの事前知識がある程度必要になってしまうのだ。
チュートリアルでやってくれるのは、基本的なキャラの動かし方やゲームのルールのみ。それだけでもゲームは出来なくもないが、正直何も分からないと言うのが本音である。
もっと初心者に優しくしろ。
「とりあえず、これで行ってみるか。何が何だかさっぱりすぎて、とりあえず先に進まないと何も始まらないしな」
という訳で、片手剣を携えて装備完了。
これで、あの見えない壁に阻まれることは無いはずである。
「それじゃ、今度こそレッツ異世界!!」
まずは情報収集をして、自分のいる世界のことを知ろう。それが出来ないと普通に死んでしまうだろうしな。
ここに来てようやく異世界の1歩目を踏み出せる。俺は既に、不安よりも未知の世界へのワクワクの方が大きかった。
どんな世界が待ち受けているのか、俺が想像しているような異世界なのか。
ゲームらしい物が出てきた時点で大分違う気がするけど、まだ希望はある。もしかしたら、最初だけこう言うシステムなのかもしれない。
ジャリ。
今度は見えない壁に阻まれることも無く、1歩目を踏み出した。
やったぜ。これから俺の異世界生活が始まるんや!!
そんなことを思った矢先、またしても青い半透明のウィンドウが目の前に現れる。
『第一階層第一ステージ“ゴブリン平野”。クリア条件、全ての敵の殲滅』
?????
第一階層?第一ステージ?全ての敵の殲滅?
もう訳が変わらないよ。俺の知ってる異世界転移とかけ離れすぎてて頭がおかしくなりそうだ。
異世界のテンプレが通じないこの世界に困惑していると、少し離れた場所にゴブリンと思わしき姿の者が急に現れる。
初めからそこにいたと言うよりは、今この場に現れたと言った方が正しい。
異世界のファーストコンタクトはゴブリンかぁ........ここはテンプレを守らなくてもいいんだよチクショウ。
「あれが敵って事だよな?え、今からあのゴブリン達と殺し合いをしないといけないってこと?」
異世界に来て即戦闘開始はよくあるテンプレ。しかし、実際に自分がその立場になると心の準備が必要になる。
自分が食っている肉が、どのように出来ているのかすらも見たことがないペーペーだ。
あの緑色の肌をした小人のような気持ち悪い顔面のゴブリンを、俺の手で殺せるのだろうか?
「いや、やるしかない。なんか思ってたんとちゃう世界だけど、死んだらそこで終わりなんだ」
俺は自分に言い聞かせるように、剣を抜いて構えると来て早々に始まった命のやり取りに身を投じるのであった。
ところで、“第一階層”とか言ってたよな?もしかしてダンジョンとかそういう感じの場所なのか?ここは。
後書き。
今日の夜頃にもう一話上げます。
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