異世界ローグ〜異世界転移したらローグライクができるらしいので、上振れ理論値を出して気持ちよくなりたい〜
杯 雪乃
ローグライカーの転生
ローグライカー転移する
Q.ローグライクゲームって何?
A.僕の考えた最強のキャラクターを作って気持ちよくなるゲーム。(自論)
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ローグライク(又はローグライト)というゲームジャンルを知っているだろうか?
ローグライクを簡単に言えば、プレイする度にマップやダンジョン、武器装備が新たに作られるゲームのことを指す。
近年においては色々な要素を詰め込みすぎて、どれがどれだか分からなくなりつつもあるが、“プレイする度にランダム要素がある”と認識していれば間違いない。
有名なゲームだと某シレンのゲームなんかは典型的なローグライクゲームだろう。
では、そのゲームの何が人々を引きつけるのか。
それは、毎回違った攻略方法でランダム要素を楽しみながら知識と経験を駆使してゲームをクリアするのが楽しかったり、とんでもない上振れを引いて最強キャラを作って無双するのが楽しかったり。
楽しみ方が無限にあるからだと俺は思っている。
かく言う俺も、そんなローグライクゲームの虜になってしまった人間だ。
高校一年の夏。
新たな友人との遊びや部活動に勤しむ生徒が多い中、俺はエアコンが効いた部屋で今日もPCを起動する。
「ハッハッハァ!!出来たぞ!!通常攻撃特化型ビルド!!バカゲー来たァ!!」
パソコンの画面には、溢れんばかりのよく分からない演出が広がり、俺は自分の考えていた最強キャラが出来上がった事に歓喜する。
毎回ランダムで性能が変わってしまうため、欲しいスキル効果を持ったアイテムを引くのにクソ苦労したが、苦労した分喜びは大きい。
結果、俺は1人で大笑いしながらカチカチとマウスをクリックするヤベー奴へと変貌していた。
「あはは!!ボスが一瞬で溶けたぞ!!このビルド、やってる事やばいな!!」
ゲームにもよるが、ローグライクゲームでとんでもない上振れを引いた時は大抵無双状態に突入する。
結果、ラスボスの体力は一瞬にして消し飛び、あっという間にゲームクリアとなってしまった。
これぞローグライク。
これぞバカゲー。
最初こそ硬派なゲームであっても、上振れを引きまくって強化したらバカゲーになってしまう。
それが俺のローグライクの楽しみ方であった。
バカみたいな装備とバカみたいな上振れを狙って、最強キャラを作って気持ちよくなる。
これがあるからローグライクは辞められない。
「ふぅ。ちょっと休憩」
あまりにも楽しくなってしまった俺は、一旦ゲームを落として適当な動画を流しながらジュースを飲む。
ローグライクは楽しいが、1プレイにかかる時間が長すぎるのが問題だな。大体2~3ゲームやった後は疲れて少し休憩をとる。
「もし、現実世界でローグライクが出来たらどんな感じなんだろうな?いや、死んだらそこで終わりなんだけどさ」
ジュースを飲み終え、今やっているゲームの攻略情報を漁っていた俺はふとそんな事を呟いた。
死んだら終わりの現実。しかし、その死を何度も乗り越えられる世界でローグライクが出来たらどんなに楽しいのだろうか。
ローグライクを愛するローグライカーにとって、自分の身を持って体験するローグライクは絶対に楽しいだろう。
いや、死ぬのが前提みたいなゲームだから、死の恐怖に負けるかもしれんな。
「よくあるVRMMOみたいな没入型のゲームでも出てくれたらいいのに。そしたら、一生その世界から出てこない自信があるぞ」
しかし、残念ながら小説でよく読むような完全没入型のVRは現時点では存在しない。
多分、後200年ぐらいは出ないんじゃないか?
そんなことを思いながら、俺は飲み終えたジュースのコップを持って自分の部屋を出ようと席を立つ。
ジュースのお代わりでもしよう。今日は親もいないし、好きなだけゲームができるぞー!!
「次はどんなビルドを試そうかなー」
そんなことを呟きながら、扉を開けて部屋の外に出た瞬間。
俺の人生は大きく変わる。
「........っ!!」
部屋から一歩踏み出したその時、視界が真っ白に覆われ────
「........へ?」
───気がついた時には、どこかも分からない知らない場所に俺は居たのだ。
『貴方の才能は“ローグライク”です。塔を登り、天へと至ることをお祈りします』
【ローグライク】
『ローグ』と同様の特徴を持っているコンピュータRPGの総称。プレイするたびにマップやダンジョンが新たに作られる等の特徴を持つ。
ランダム仕様についてローグの作者は、総ての内容を知っている自分自身も楽しめる様にするために考えたと語っている。
困惑。俺氏、部屋から出たら知らない場所にいた件について。
いや、本当にどこだよここ。俺はついさっきまで、自室にいたはずだが?
急に視界が真っ白に覆われたかと思えば、何も無い草原のど真ん中に立っている。
真っ青な空と、のんびりと浮かぶ雲。周囲には所々木々が存在しており、明らかに外であった。
家の中にいたはずなのに、外に出ているとはこれ如何に。
ふと、後ろを振り返るが、そこには先程俺が出た扉もない。
何が何だかさっぱりだ。
「どこだよここ」
思わず、そんな声が漏れてしまう。
意味がわからないと思いつつも、ここでぼうっと立っていても始まらない。
俺はとりあえず、自分の体に何か異変がないのかを確認した。
普段通りの服........じゃないな。なんだこれ。
「いつの間に着替えさせられたんだ?俺の部屋着はどこに行ったんだよ」
俺の服は、明らかに部屋着とは異なっていた。
みんな大好きジャージではなく、ファンタジーに出てきそうな冒険者が着ている服だ。
皮の胸当てに、ちょっと素材は分からないが、動きやすいズボン。そして靴も現代のものとは随分と違う。
「なんなんだよこれ........」
先程から、非現実的すぎることばかりが起きすぎて頭が回っていない。
俺は一旦状況を整理しようと言うことで、その場に座り込んだ。
「えーと、俺は家にいて、ジュースを取りに自室を出た。そしたら、目の前が真っ白になって気がついたらここにいた。しかも、ご丁寧に着替えまでさせられて........うん。意味わかんねぇなこれ」
しかし、一度座って落ち着いたからか、このような状況にぴったりな言葉があることを思い出した。
急に景色が変わり、別の世界に飛ばされるジャンルと言えばアレしかない。
「........もしかして、異世界転移した?トラックに引かれてもないのに?」
そう。異世界転移。
アニメ、漫画好きならば一度は聞いたことがあるであろう、その言葉。
非現実的ながらも、冒険と感動を与える(諸説あり)その物語は未だに多くのファンがいる。
それと同じ状況になったと仮定すれば、確かに辻褄が合う。
先程から頬を抓っているが、痛いから夢じゃないだろうし。
「よし。とりあえず異世界転移したという想定で動いてみよう。アレだ、先ずは人を探して情報収集だな」
何となく自分の置かれた状況を察した俺は、次の行動に移る。
ここがどんな世界なのか、俺が今どこにいるのか。それを知らなくてはならない。
現代社会だって情報収集は絶対だ。これはどこの世界に行っても同じだろう。
「そうと決まれば、人探し。レッツ異世界(仮定)と行きますか!!」
そう言って、異世界の1歩目を踏み出そうとしたその瞬間、俺は見えない壁に阻まれた。
ゴン!!と頭を打ち付け、不意の一撃に思わずひっくり返る。
「いってぇ!!なんだよもぉー!!」
『武器の選択がされていません。武器を選択してください』
涙目ながらに頭を抑えながらそう叫ぶと、俺の目の前に青い半透明な画面が浮かぶのであった。
後書き。
お昼頃にもう一つ更新します。
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