第3話 エレナとクイーンオーガ

「おじさん?ありがとう!まさかこんな所にオーガが居るなんて思わなかったよ」

 少女はオジイさんと呼ぶのが気が引けるようで、おじさんと呼んでくれた。

「怪我はないですか?」

「はい!怪我は無いですが、もう少しで連れ去られる所でした」

 そうだった、オークやオーガそれにゴブリンは人間の女を子作りに利用していると聞く、少女が無事だったのは、このオーガ傷付けず子作り用に連れ去るつもりだったため?


「一人でこんな森の中で何してた?」


 少女の名はエレナで病気の弟のため、熱冷ましの薬草を採取しに来ていたそうだ。

「おじさん?こそ、こんな辺鄙な所で何してるの?」

「無理しないで爺さんで良いよ、私はヒナビ村の村長に合いに来た」

「ヒナビ村?私の村だよ!案内させて」

 

(安心した!迷っては居なかった)

 この森は全く方向が違う場所、エレナに出会わないといつまでもさ迷っていただろう、賢者は完全な方向音痴だ。

 一芸に秀でた勇者パーティーの4人は、全員どこか大きな欠点が有った。

「急いではいない、薬草採取済ませノンビリ案内で良い」


 薬草採取は終わっているそうで、元気なエレナはスタスタ森の中を進む、私は遅れがちに後を追った。

(しかし、いつまで脱力感が続く?年齢から、このまま動けなくなるほど弱って行くのだろうか?嫌だね、歳は取りたく無いもんだ!)


 後方から声が掛かった。

『オーイ主様、われの拘束を解いてもらえないか?』

 オーガの存在を忘れてた。

「お前を解き放すとまた人に災いをなす、一思に討伐しておく!」

『主様!われはあなた様の配下、死ねとおっしゃるなら喜んで死ぬが、われは役に立つぞ!』

 狂暴なオーガが変な事を言う。

「ん?お前はオーガ?で間違い無いよな?」

『いや、われはオーガの王、この森の支配者クイーンオーガである!配下にして頂ければ、主様のお役に立つぞ』


 このオーガがもし暴れても私なら一瞬で討伐出来る、拘束を解除して様子見だな。

 バインド拘束を解除された、自称クイーンオーガは私の前で平伏して居る。

 巨大な頭が目の前にある、立派な二本角に黒い皮膚、盛り上がった筋肉がたくましく見える。

 ん?クイーン?このたくましいオーガは女か?魔物のオスメスは見分けがつかん。


「それでは、以後人を襲うな」

 関わりたく無いので声を掛け、離れた場所でこちらを見ているエレナの所に向かった。




「じいちゃん、オーガが着いて来てる」

「気付いているが、目的が分からん、害をなすようなら捻り殺す」



「もうすぐ村だよ、まだ着いて来てる」

「おーいクイーンオーガ!なんで着いて来る?せっかく解放されたのだから、仲間の所に帰れ」


 声を掛けられて嬉しかったのか、クイーンオーガは走って寄って来た。

『主様の配下にして頂いたわれは、主様のために働く』

「私も初めて行く村、お前と一緒では村に入れてもらえんぞ!それもだが、私がなぜお前の主だ?」


『主様からは魔王様の気を感じます!従って主様は全ての魔物の主様です』

 クイーンオーガから説明を受けた瞬間、全身の脱力感が消え去った。

「魔王の気?私は人間だぞ」

『充分承知して居る、われも不思議に思っておる、なぜ主様から魔王様の気が出て居るのか』

 あの魔法陣やはり呪いでは無かった?

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