第8話 孤児院再生プロジェクト始動(5)





 私も子供たちと草を抜いたり、石を運んだりしてお手伝いをしていた。


 ん~~~深い、これ、抜ける気配がないんですけど……!!


 私が草の根を抜くのに苦労していると、少年が声をかけてきた。


「あの、この草の根は横に生えているみたいだ。だからこの上の土をどけたら……」


 少年は手早く土をどけて草を抜いた。


「ほら。抜けた。たぶんこの下に石があるんだ」


 そして、土を掘ると下から大きな石が出てきた。


「凄いわ。それ、知ってたの?」


 すると少年は首を振った。


「今日、草抜きしながら草の生えている場所や種類で、草の生え方も違いがあるって思った」


 私は少年の観察眼に素直に関心した。


 今日? しかもこの短期間でそれに気づいたの?! 私そんなこと全く気づかなかった!! むしろそんなこと考えもしなかった!! それを誰にも教えられず気づいた?! この子、天才じゃない?!


 私は少年の手を取った。


「え? 何?」


 少年は驚いて私を見た。


「ねぇ、あなた名前は?」

「俺? オリバー」

「今日から家に来て、文字と計算を覚えない?」


 するとオリバーは目を丸くした。


「え? 勉強教えてくれるの?」

「ええ。あなたが覚えて、みんなの先生になるのよ! どう? やってみる?」


 私がオリバーを見つめると、オリバーが嬉しそうに笑った。


「やりたい!!」

「ふふ。じゃあ、決まりね」


 頭上からクラウド様の声が聞こえた。


「イザベラ嬢、こんなところで、手なんか握って何をしている?」


 見るとクラウド様とアル様が立っていた。私は二人を見上げて言った。


「この子オリバーっていうんです。とても賢い子なんです。草の特徴をすぐに見つけたし、教え方も上手でした。だからこの子に文字や計算を覚えてもらってみんなに教えて貰おうと思って」


 私の言葉にクラウド様が息を飲んだ。


「なるほど……1人を教育することで、全体を教育していくのか……」


 『カシャカシャカシャカシャ』

 隣で甲冑の音を響かせながらアル様も大きな拍手をしている。


「はい。雨の日などに、年上の子が下の子に文字や計算を教えていけば、みんなが覚えられると思って。院長はとてもお忙しいでしょうから……。新しい孤児院が完成したら、黒板や本なんかも用意したいですわ」


 するとクラウド様もしゃがんで私たちと同じ目線になった。アル様はしゃがめないようで、地団駄を踏んでいる。


「それは素晴らしいな。それなら職の問題も解決する。では、黒板や本は私から孤児院に寄贈しよう」


 クラウド様が微笑んだ。


「え? いいのですか?」

「ああ。私も楽しみになったのだ。ここから巣立つ子供たちの未来が」


 するとアル様がクラウド様の背中を叩きながら、自分を指さしていた。そしてそれを見たクラウド様が苦笑いをした。


「イザベラ嬢。先程の発言を撤回しよう。どうやら、黒板や本はアルが寄贈してくれるらしい」

「え? アル様、よろしいのでしょうか?」


 アル様は自分の胸を叩いた。


「ありがとうございます」


 私は笑顔でお礼を言った。すると、アル様は甲冑の頭部分に手を置くと、甲冑の中からすすり泣く声が聞こえた。私はハンカチをアル様に渡した。すると泣き声は大きくなったようだった。

 オリバーがクラウド様とアル様を見て目を輝かせた。


「ありがとうございます!! 騎士様!!」

「ああ、頑張れよ。」


 クラウド様がオリバーの頭に手を置いて微笑んだ。私はそれを見てまた笑顔になっていた。


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