第6話 孤児院再生プロジェクト始動(3)
私は飢えの打開策を探して孤児院の裏手を見た。するとすぐ近くに小川もあり、土地もあった。
「クラウド様、ちょっとよろしいでしょうか?」
今度は私がクラウド様の耳に口を寄せた。
「ああ、なんだ?」
クラウド様もかがんでくれた。
「この裏の土地って買い取れませんか?」
すると、クラウド様が顎に手を当てて「ん~」と唸った。
「買い取れると思う。だが何をする気だ?」
「買い取って、収入を得るようにします!!」
「???」
私は急いで院長の方を見た。
「院長今日は帰ります! そして、また来ますわ!!」
「またですか? ええ。わかりました。お待ちしています」
院長は驚いていたが、私はクラウド様に向かって言った。
「すみません。クラウド様、家に戻ります。よろしいでしょうか?」
するとクラウド様は驚いたあとに頷いた。
「ああ。付き合おう」
◇
私は屋敷に戻ると、すぐに執事長を呼んだ。クラウド様はなぜか帰ることなく私の側に立っていた。
(監視だからかしら? ま、そんなことより……)
私は執事長の姿を見ると急いで口を開いた。
「執事長。孤児院の裏の空いている土地を買い取るわ。私、個人の資金で足りるかしら?」
すると執事長が目を大きく開けた。
「それはもちろんです。あの土地でしたらそんなに高くはありません」
「そう? じゃあ、孤児院の立て直しって私が自由に使える資金で出来る? そこまでは無理?」
「いえ……ですが、さすがにそれですと、お嬢様の使う分が無くなってしまいます」
私は執事長の言葉に小さく笑った。
「いいのよ、もう……。私はもうお茶会も主催しないし、話を合わせるために高額な宝石を買うこともしないわ。そんなことより、私、子供たちの笑顔が見たいわ」
すると執事長の目から涙が流れた。
「ようやくお嬢様の瞳に光が……私は……私は嬉しく思います。孤児院の裏の土地の買い取りと、孤児院の立て直し。私が責任を持って手配致します。他に必要な物はございませんか?」
「じゃあ、買った土地を畑と果樹園にしたいんだけど、その材料もいいかしら?」
「ええ、ええ。もちろんです。すぐに庭師に手配させましょう。」
「それなら私が直接頼みに行くわ」
すると、執事長が目を丸くした。
「お嬢様が?」
「ええ」
そして穏やかに笑った。
「ではお願い致します」
話が終わりクラウド様の方を見ると、驚いた顔をしていた。
「(これが……あの方の望んだ本来のイザベラ嬢の姿か……)」
私はクラウド様に近づくと首を傾けた。
「クラウド様? どうしたのです?」
私の問いかけにとうとうクラウド様は笑い出してしまった。
「あはは。いや、あんな土地買ってどうするのかと思えば、畑と果樹園? どうして、そんなことをする?」
私は「ん~」と言いながら答えた。
「貴族バザーの収益の方はもう根深そうなので、改善はすぐには難しい。ですのでまずは、裏を畑と果樹園にして、せめて子供たちが食事に困らないように材料を自力で確保出来るようにいたいと思いまして」
するとクラウド様が驚いた。
「なるほど! 単発の援助ではなく、自立させるのか。……それはいいかもしれない」
それを聞いた執事長も驚いた。
「自立……なるほど、素晴らしい!!」
2人に褒められ、私は照れくさくなった。
「それで、どの位で出来そう?」
すると執事長が姿勢を正した。
「土地の買い取りは、本日中にでも。立て直しは、院長と相談の上、決めます。」
「そう。じゃあ、畑の方は早速、明日から耕そうかしら?」
私の言葉にクラウド様が目を丸くした。
「まさか、イザベラ嬢が耕すつもりか?」
「ええ。庭師のジンに指導をお願いしてみるつもりですわ」
クラウド様が目を細めた。
「では、明日も私が同行する。畑楽しみだな」
「え?? クラウド様が?? そんな毎日私の監視など申し訳ないです」
「ははは。問題ない」
そう言ってクラウド様は帰っていった。
私はすぐに庭師のジンの元へ向かった。
ジンは畑作りと指導を二つ返事で引き受けてくれた。
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