第4話 孤児院再生プロジェクト始動(1)
孤児院訪問の日。
え? …………クラウド様?
私は玄関に立っていた人物に度肝を抜かれた。
どうしてクラウド様がいるの??
「おはようございます。クラウド様、本日はいかがされたのでしょうか?」
私が意外すぎる人物の登場に戸惑いながらあいさつをすると、クラウド様が美しく笑った。
「本日の視察は私が同行する」
私は恐る恐る尋ねた。
「もしかして……また頼まれたのですか?」
すると、クラウド様が首を横に振った。
「いや。殿下はきっとイザベラ嬢が今日孤児院に行くことは知らないはずだ」
「ではなぜ?」
「まずは馬車に乗ってくれ」
「はい」
私たちは馬車に乗り込んだ。
馬車が動き始めると、クラウド様は、はっきりと言った。
「私がここにいるのは、イザベラ嬢を監視するためだ」
「監視?! なぜです?」
するとクラウド様が溜息をついた。
「1人重症な心の病になりそうな方がいてな。もし君に何かあったら今度こそ、その方の命が危ない。だから私は、その方を守るためにも君の監視をする必要がある」
私はチラリとクラウド様を見た。
「私、命を粗末になんてしませんよ?」
すると、クラウド様が嬉しそうに笑った。
「そうか。そうしてくれ」
「……はい」
きっとクラウド様は私が自ら命を終わらせるのではないかと危惧しているのだろう。だがどうやらそう思っているのはクラウド様だけではないようだった。
私の部屋からはいつの間にか、ナイフや手紙を開ける時のペーパーナイフも消え、ガラス製品も消えていた。しかも、通常部屋の中には侍女は2人しか待機していない。だが今は侍女3人に執事まで待機している。
(まぁ、それだけイザベラを心配してるってことだよね)
――それにきっと私に何かあったら。
私は馬車の中で、斜め前に座っているクラウド様を見た。
「なんだ?」
急に見つめられて、クラウド様が眉を寄せた。
「いえ……私が無事でいることで、あの方の心が休まるのでしたら、私は自分を大切に致します」
するとクラウド様が切なそうに呟いた。
「あの方が真に心を休めることが出来るのは君の隣だと思うがな」
「…………」
私はそれには何も答えることはできなかった。
◇
何も考えることが出来ずにぼんやりと景色を眺めていると、いつの間にか馬車は王都の外れの孤児院にやってきた。
「ここだ」
「…………え?」
私は孤児院を見て思わず眉を寄せた。
ここ……ボロボロじゃない……。
孤児院は酷い有様だった。
整理整頓もされ、掃除も行き届いているようなのに、建物が古すぎて、どうしようもなかった。
「こんにちは、貴族様」
私たちが訪ねて行くと、やせ細った男の子が青い顔であいさつをしてくれた。私はしゃがむと男の子と視線を合わせた。
「こんにちは、ねぇ君……ごはん食べてる?」
不躾だとは思ったが、聞かずにはいられなかった。
「ごはん? うん。ちゃんと毎日食べてるよ。」
毎日?? じゃあもしかして……。
「ごはんは一日に何回あるのかな……?」
「……? ごはんは一日一回だよ?」
一日一回か……殿下の婚約者だった時の私と同じだ。ただ私の場合は食べることができたのに断っていたので贅沢だが……。
私は周りの子供たちを見回した。
子供たちもやつれているし、着ている服もボロボロだった。
成長期の子供たちに一日一回の食事は明らかに足りていなさそうだった。
もっと食べないと倒れちゃうよ。
子供たちの様子に心配せずにはいられなかった。
そう思ってハッとした。
私もずっと周りの人にこんな思いをさせていたんだ……。
そう思うと、私は胸が潰れそうになったのだった。
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